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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その75

b0083728_2235223.jpg個人的体験:
先日、NAXOSの
グレート・コンダクター・
シリーズに収められた、
ベートーヴェンの
「交響曲第二番」
(E・クライバー指揮)
のCDを、
この前、紹介したが、
ここには、以下のような
興味深い一節があった。

このCDのプロデューサーは、
David Lennickという人だそうだが、
Producer’s noteと題して、
ベートーヴェンの死後100年と、
録音技術の発展について書いているのである。

「ベートーヴェンの没後100年、
偶然、時を同じくして、電気処理によって、
録音技術に飛躍的な改良がなされた。
英国コロンビアによって、全交響曲を含む、
大規模なベートーヴェン作品の企画が立ち上がった。
同時に独グラモフォンレーベル(輸出時はポリドール)は、
自主的なベートーヴェン交響曲全集を発表した。」

ちなみに、ベートーヴェンの死後100年というのは、1927年である。
以前の機械式吹き込みから電気式吹き込みになって、
大幅に音がよくなったというのは、よく聴く話であるが、
これが、ちょうど、ベートーヴェンの記念の年のあたりの出来事だった、
というのは、これを読んで初めて認識した。

「ベルリン・フィルと、ベルリン歌劇場のオーケストラが、
録音をシェアし、フィッツナー、R・シュトラウス、O・フリート、
E・クライバーが、指揮を受け持った。
しかし、このシリーズは、100周年には完成されず、
1933年、第八が録音されるまで完成されなかった。
ナクソスは、この全集を再発売する。」

確かに、私もR・シュトラウスの「第五」や「第七」などを、
店で見かけたが、カットも多い演奏と聞いているので、
購入には到っていない。

が、英国が先に出そうとしたのを、
ドイツが威信をかけて、最高の団体と指揮者で対抗したような感じである。
完成が遅れたのは、1929年の大恐慌の影響もあったのであろうか。

「グラモフォン/ポリドールの記録は、とても信用できず、
正確な録音日時は不明である。
マトリクスナンバーも正確な情報ではなく、
同じ録音を複数のバージョンで出すので、
グラモフォンは知られていた。」

このグラモフォンの話、
カラヤンを擁しての、戦後の急成長からすると、
ちょっと、嘘みたいな話であるが、
何となく2流レーベルという感じがする。

「著作権のデータは、オリジナルの78回転盤に示されているが、
これは発売の年であり、また、マトリクスナンバーが更新されるごとに、
変えられていることが知られている。
ということで、ここではむしろ録音年より、発売年を採用した。」

だから、例のクライバーの「第二」にも、
「First issued in 1929 on Polydor 66905/8」とある。
ベートーヴェンの100年祭の2年後であり、
ひょっとすると、大恐慌の影響を受けて、
まったく売れなかったというようなこともあったかもしれない。

クライバーのドヴォルザークのCDのリマスタリングエンジニアは、
復刻の考え方を書いていたが、この人には、そうした記述がなく、
原盤の記録の不備を嘆いて終わっている。
同じヒストリカルシリーズなのに、このあたりは統一性はないようだ。
一方、ドヴォルザークのCDでは、「新世界」が1929年ベルリン、
「モルダウ」が1928年と明記されている。
これもポリドール盤のはず。
いろいろプロデューサーに任されているようだ。

さて、ベートーヴェンが亡くなった翌年に、
シューベルトも亡くなっている。
だから、この録音革新は、シューベルトの没後100年にも、
連動したような形となる。

今回取り上げる、20世紀ドイツを代表する大ピアニスト、
バックハウスによるシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」は、
先の「モルダウ」と同じ1928年の録音で、70年後の1998年に、
「バックハウスの遺産」として再発売されたCDである。

解説にも、
「シューベルト没後100年を記念して、
1928年、バックハウスは各地でこのシューベルトの『ます』を
演奏する機会に恵まれた。そこでHMVはこの機会にこの曲の録音を
バックハウスを起用してロンドンで行うことになった。」
とある。

私は、このCDが出るまで、
こんな録音があったことをまったく知らなかったが、
それは、バックハウスといえば、
何と言っても、ステレオになってからの、
デッカへのベートーヴェンのソナタや協奏曲の全集、
あるいは、モーツァルトやブラームスの協奏曲などが有名で、
SP(78回転盤)時代が省みられることがなかったからであろう。

また、「鍵盤の獅子王」というイメージが強く、
室内楽のピアニストという印象がなかったことも、
あるいは、影響していたかもしれない。
(事実、ブラームスのチェロ・ソナタくらいしか、
すぐに思いつく室内楽演奏はない。)

また、あらえびすの名著「名曲決定盤」にも、
この録音は登場しない。
「当代、まことに得難きピアニスト」、「演奏芸術家として最高最良の天稟」
などと書いて激賞して、
「コルトーとバックハウスだけは、みんなかき集めて、
折々に聴きたいような気がする」とまで書いているのに、である。
あるいは、持っていたのに、たいしたことはないと思ったのだろうか。

この本の推薦レコードには、
やはり、協奏曲やソナタの大曲が並べられ、
晩年まで愛奏したシューベルトについては、
触れられていない。
むしろ、ここでは、リストやショパンなど、
後年の評判とは少し違うところでの評価が高い。

さて、この「ます」であるが、1928年といえば、
1930年代に録音された、シュナーベルの名盤や、
1938年録音とされるナイらの演奏より古い。

したがって、電気吹き込みとはいえ、ノイズは盛大であるが、
復刻の影響もあってか、それらのものより音に芯があるように思える。
あるいは、この明晰さが、バックハウスの面目躍如とするところかもしれない。

とはいえ、この新星堂のCD、イギリスのミドルセックス州の工場の、
原盤台帳まで参照できたらしく、「ます」は、4月7日の録音とあり、
2面不合格で6月18日に再録音というデータまで書かれている。
当時の苦労が手に取るような記載。
さっきのNAXOSの苦肉の策とは好一対になっている。

競演はインターナショナル弦楽四重奏団ということだが、
第一ヴァイオリンのマンジョー(1883-1970)以外は、
メンバー不明というのが、少々心もとない。
録音の日付より、こっちの方が重要なような気がする。
演奏が決して、単なる伴奏に陥ってはいないところからして、
奏者は、それなりの経歴の人たちに違いない。

このように、画竜点睛を欠くものの、
解説は、懇切丁寧、曲の解説も要点を押さえている。
ただし、定常的なノイズからして、一般に薦められるものとは言いがたい。
不快な歪などはないので、聴きやすいのだが。

同じ年に録音された、シューベルトの小品3曲が併録されているのも、
私には、何となく嬉しい。

この録音から約40年後、85歳のバックハウスは、
「最後の演奏会」で、「楽興の時」を取り上げたが、
この曲集の中でも有名な「第三番」が聞き比べられる。
録音のハンディを超えて飛び込んでくる、
43歳の彼の溌溂とした感性、輝かしい音色に圧倒される。

最後の演奏会のものは、滋味豊かかもしれないが、
やはり、年には勝てないという感じがあり、
バックハウスがどんなピアニストであったかを知るには、
あるいは、この戦前の録音の方が相応しいとも言えよう。

一緒に入っている「即興曲作品142-3」もまた、
自在なルバートを聞かせながら、端正なたたずまいを保ち、
すばらしいピアニズムが堪能できる。

あらえびすが書いた、
「彼の技巧は古い形容詞を使っていえば、颯爽たるもので、
水もたまらぬ切れ味である」という表現も肯けるものである。

そう考えると、この世紀の大ピアニストの、まさしく全盛期に、
「ます」の録音が残されたというのは、非常にありがたいことと、
言わざるを得ない。

このCD、表紙デザインも、
単なるおっさんの顔になりがちな歴史的録音にあって、
かなり工夫を凝らして、ハイセンスに仕上げてあることも、
特筆すべきかもしれない。
(ただし、写真は、もっと若い頃のものであろう。)

これは、このところ取り上げて来た、クライバーのCDで、
かなり、我慢してきたポイントで、一息付いた感じすらある。
日本製は、こうあって欲しいものだ。

演奏は、リズム感が良く、クライバーの演奏と同様、
全体的に一筆書きの推進力を感じる。
耳につくポルタメントもなく、清新な感じがする。
マンジョーが1883年の生まれ、バックハウスが84年であり、
共に、脂の乗った、同時代のメンバーが集まっての演奏と言える。

1882年生まれのシュナーベルが、
1893年生まれのオンヌーらのプロアルテ四重奏団と組んだ、
1930年代の名盤と比して、
格別古い様式、テクニックというわけではないだろう。

あらえびすは、このシュナーベル盤は、
「比類を絶する情緒」と特筆するが、
私は、バックハウス盤と比べるうちに、
少々、違和感すら覚えるようになった。

シュナーベルのピアノも粒の揃ったものだが、
バックハウスの方に、水しぶきの切れが感じられる。
第二楽章など、シュナーベル盤が深い水底に沈潜するのに対し、
バックハウス盤は、あくまでも高原の空気の感触を失わない。

第四楽章の有名な変奏曲でも、
バックハウス盤も、意外にもすべての楽器がよく歌っており、
その都度、内省的な表情を見せるところが胸を打つ。
繰り返しになるが、各楽器の奏者の名前が伝わっていないというのが、
おかしいくらいである。

バックハウスは、その中に清流の輝きを添えながらも、
決して「獅子王」の独り舞台にしようとはしていない。

この楽章の前半は、何故か、シュナーベル盤は何故か慌ただしく、
当時、ヨーロッパ最高の四重奏団と呼ばれたプロアルテのメンバーが、
名技性に浸っているようにも思われる。

終楽章も、同様に、シュナーベル盤は効果を狙ったような表現が気になる。
それに比べ、バックハウス盤はもう少し、素朴で土の香りがする。

ただ、第三楽章は、あるいは、シュナーベル盤の方が、
中庸のテンポと言えるかもしれず、
バックハウス盤は、スケルツォの繰り返しも省略して、
先を急ぎすぎているような感じもする。
2分42秒という演奏時間からして、異常である。
SPレコードとはいえ、無理すれば片面5分弱入ったはずなので、
ここまで急ぐ必要はないだろう。

このように、全体的に闊達な表現であるが、
丁寧で、弾き飛ばすような所は皆無。
しかし、録音が古いのは確かで、弦の艶も少し劣るようだ。
あるいは、シュナーベル盤は、ノイズを落としすぎて、
全体に丸っこくなっているのかもしれない。

ウィーンの研究家、ローレンツは、著書の中で、バックハウスを、
「素晴らしく大きな音、力強さと表現力のある完成された技巧家」
と書いているが、
「ニュアンスに乏しく、軽音楽的単線性を呈していた」とも評している。

シュナーベルは、
「ヴィルトオーゾとしてよりは音楽家を自覚していた」、
「比類なき様式精神」、「構築の論理は無欠」ということなので、
ローレンツは、バックハウスより高く評価している様子だが、
「ます」のような音楽では、「軽音楽的単線性」の方が重要なのかもしれない。

得られたこと:「第二楽章も、シュナーベル&プロアルテのように沈潜しすぎると、清流の趣きを失わせる。」
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by franz310 | 2007-06-16 22:37 | シューベルト
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