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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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クロメダカちゃん、亡霊の声を聴く

b0083728_06281.jpgその時、まるで、地底の底から、
水槽全体に響き渡るが如き声が、
どこからともなく聞こえてきた。

「我らに、平安を与えたまえ。」

次に、何だか、のんびりとした声が続いた。

「ああ、やっぱり、そうだったんだな。
悪いことが、行われていたんだな。」

いったい、何事かと、僕が振り返ってみると、
あの、恐ろしい、人喰いのぬめぬめが、
不気味な渦巻きの甲羅を背負って、
にゅるにゅると、水槽を這い上がって来るところだった。

ゆっくりとした動作ではあったが、
僕は、あのメダカの仲間たちのように、
その恐ろしい管の口先で溶かされて、
骨の髄まで、しゃぶりつくされてしまうのではないかと身構えていた。

「検死官が来たようですね。」
「そうなんだな。解ったんだな。」
驚いたことに、ベアトリーチェは、
そのぬめぬめにゅるにゅると、
当たり前のように、会話しているではないか。

「あとは、この亡霊に語らせるんだな。」
すると、検死官と呼ばれたぬめぬめの、その甲羅が光り始め、
ああ、なんと言うことだろう、その中から、さきほど平らげられてしまった、
オスヒメダカの姿が、浮かび上がって来たではないか。

ベアトリーチェは、それを指差して、こう告げた。
「彼の肉体は滅びましたが、
あの検死官の貝殻の中に、霊がしばし宿り、
最後の言葉を聴くことが出来ます。
クロメダカちゃんも、心して聞いてください。」

私は、耳を澄ませた。
やがて、先ほどの地底からの声が、
厳かに響き渡った。

「北極星が北の空に光る頃、
南半球では、サザンクロスが、
大海原の上に浮かぶであろう。」

僕は、霊界を越え行く者の、
自由になった霊魂が、空を飛翔し、
この世の全ての苦しみから解放された様子を思い描いた。
そして、彼の善良なる魂が、天上において、祝福されることを心から願った。

「冬の天上を大きく彩るオリオンのごとく、
また、夏の夜空に輝く白鳥座のごとく。」

いよいよ、モバイル・メダカ計画という、
メダカ史上最悪のスキャンダルの実態が、
今、ここに明らかにされるのである。
果たして、メダカの運命に未来はあるのか、
その審判が、今、下されようとしていた。

「夏の大三角には、アルタイルあり、
冬の大三角にはおおいぬ座に、シリウスが光るが如く。」

如く、何なのだ、と思ったのだが、
死してなお、使命をまっとうしようとする英雄の言葉に、
何ら口を差し挟めるものではない。
ひたすらに、その荘厳なパイプオルガンの響きに、耳を傾けるばかりである。
余計な事を思案していて、肝心なところを見逃してしまうのが、
サッカーの試合の嫌なところだ。

「夕暮れの渚にあっては、夜光虫の如く、
初夏の清流にあっては、舞い踊る蛍の如く。」

だんだん、集中力も限界になりそうだった。
一度、肉体を失ったものは、すっかり、この世の時間感覚から貝抱、
いや、解放されてしまうのかもしれない。

「かくのごとく、明らかであったああああああああ。」
おお、「その時、宇宙の天体が鳴り響くのです」と、マーラーが語ったように、
オスヒメダカの声には、大きなクレッシェンドの記号がついていた。

僕はその音響の渦に、思わず、耳をふさぎたくなったほどだ。
でも、耳がどこにあるかも分からないし、
ふさぐにも、ヒレでは、ちょっと役不足ではなかろうか。
ひときわ高く、その声が響き渡ったかと思うと、長い長い余韻を残して沈黙が訪れた。
ただ、水槽の中には、ぶくぶくポンプの音が鳴り響くだけである。

「オスヒメダカは、やむなく、敵の凶刃に倒れましたが、
やつらの耐震偽装については、突き止めることが出来たようです。
捜査官として、本当によくやりました。」
ベアトリーチェの長い睫毛の間から、止め処もなく、涙が流れ出していた。
「耐震偽装・・。」
僕も、よくわからなかったが、
どう考えても、偽装はまずいだろうと思って、一緒になって泣いた。

見ると、貝ちゃん検死官の貝殻は元に戻り、
そこに、ヒメダカの姿はすでになかった。
彼の魂が祝福されようがされまいが、どうでもいいような気持ちだった。
シリウスの輝きの前では、そんな事は、小さなことのようにも思えてきたのである。

ずずずっ、ずずずっと、検死官は、水槽に付着した汚れの掃除に余念がなかった。
「この辺が、ちょっと汚れているんだな。」
by franz310 | 2006-06-07 00:23 | どじょうちゃん
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