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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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クロメダカちゃんが聞いた国内空洞化の一例

クロメダカちゃんが聞いた国内空洞化の一例_b0083728_22522733.jpg僕が聞いてもいないのに、
ベアトリーチェは、
こんなことも教えてくれた。

日本で、活躍の場を失った、
金魚売りの一団は、夢を求めて、
はるばる海外に雄飛したということ。

ハワイへ、ブラジルへ、金魚売りは、
新天地を求めて旅立ったのだ。


国内の金魚売り産業は、急速に空洞化していった。
政府が支援策として、デパートの屋上に、
屋上総務庁を新設したのも、こうした空洞化対策を兼ねていたのである。

そして、この大きな流れが、こんな出会いをもたらしたことを、
クロメダカちゃんは、初めて知った。

ある金魚売りは、金魚の桶を担いで、
いや、それ以上に大きな夢を抱いて、
アメリカンドリーム渦巻くシリコンバレーで、
大きな声を張り上げた。

「きんぎょーえっつ、金魚っ!」

そこに通りかかった、ある巨漢が、
その声を聞いて振り返り、
きりりと鉢巻を巻いた金魚売りの粋ないでたちと、
エキゾチックなヒノキ作りの桶と天秤棒を見て、
そして、その桶の中に、目の覚めるような色彩で、
数知れぬ、金魚が泳いでいる美しさに、ただただ驚嘆した。

その時、思わず、頬張っていたホットドッグのケチャップを、
白いTシャツの上に滴り落としてしまったほどである。

「ヘイ、ユウ。ジャップ。アナタハナニモノナノデッカ。」
「やいやいやい、誰がジャップだ。」
金魚売りは、相手がお客かもしれないということも忘れて、
振り返りざまにどやしつけた。

「ハイ、ワタシガ、ジャップデス。スティーブン・ジャップトイウネン。」
「どこがジャップだ。どこから見ても、いかれたヤンキーじゃねえか。
そんなでかいコーラの紙コップを持ったおっさんが、
何でジャップであろうものかってんだっ!」

「アナタハ、コノ、チイサナサカナタチデ、ナニヲタクランデオルノデッカ?」
金魚売りは、相手が何も知らないトウシロのおっさんだと見て取るや、
ここで一発、日本の伝統技術を見せびらかせてやろうと考えた。
「ただの魚に見えるだろうが、これはな、フィッシュ・メモリーというものだ。」
「ドコガ、メモリデンネン?」
金魚売りは、にやりと笑みを浮かべると、桶の中の、
一番、容量の大きなものを掬い取ると、おっさんの耳にあててやった。
おっさんは、そのひんやりとした感触に、「クール!」とつぶやくと、
うっとりとして、そのハイテク感あふれる音響に我を忘れていた。
なんと、そこからは、さまざまな町の音が流れ出していたのである。

見ると、金魚のムナビレの横には、「2G」と書いてあった。
おっさんは、しばらく金魚の口がぱくぱくしているのを見つめていたが、
何を思ったか、持っていたCDウォークマンのイヤホンを、
機械から引き抜いて、そのプラグを金魚の口に差し込んでみた。

すると、5,1チャンネルのサラウンド効果で、
彼は異次元の音質に酔いしれたのである。

Tシャツを金魚のように、ケチャップで赤く染めた巨漢が、
陶酔して体を揺らしているのを眺めていた金魚売りに、
その時、ふつふつと、仕事に対する誇りや情熱が蘇ってきていた。
彼の脳裏に、後にした日本で味わった数々の屈辱が蘇ってきた。
それを払いのけるように、声をあらげ、
「いいか、わかったかってんだ。もう、俺の邪魔をするんじゃないぞ。」
と言い放つと、金魚を桶に放り込んで、再び、竿をかついで持ち上げようとした。

「ホンマニ、ヨウ、ワカリマシタワ。デハ、1.5Gノヲ、ヒトツクラハイ。」
「そうかい、じゃあ、特別だあ、金魚鉢もつけておくぜ。」

ヤンキーのおっさんは、それを手で目の高さにかざし、
透き通った丸い金魚鉢の中に、
1.5Gのメモリー搭載の真っ赤な金魚が、
元気良く泳ぎ回るのを見て、その東洋の神秘に打たれた。
自分が、500mlも入るコーラの紙コップを持っているのが恥ずかしくなってしまった。

「ジャップノPOTハ、ワタシノココロヲミリョウシマシタ!
ソシテ、イマ、イイカンガエガ、ヒラメキマシタ。
ジャップノポット、ツマリ、j・potヲ、
ヒトツ、ビジネスニ、クワエテミトーナッテキタワ。」

「きんぎょーえっつ、金魚っ!」
そういって遠ざかっていく、金魚売りのいなせな姿に目を細めつつ、
「キンギョヘ、キンギョデハ、アリマセンネ。
キンギョヘハ、モット、イイモノヲ、メモリーサセントアキマヘン。」

金魚売りは、眩しい日の光の中、蜃気楼のゆらぐビル群の中に消えていった。
まさか、このおっさんが、あのマイ・クロメダカ社と並び称される、
IT企業の雄、Appare社のCEOだったとは、知る由もなかったということだ。
by franz310 | 2006-06-02 00:03 | どじょうちゃん
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