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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その339

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その339_b0083728_110278.jpg個人的経験:
ハイドンの作品鑑賞と言えば、
ベートーヴェンの場合と同様、
交響曲や弦楽四重奏曲、
そしてピアノ・ソナタなどが
取り上げられることが多い。
その他、オラトリオやミサ曲も
聴かれる機会が多いようだが、
例外はあるものの、
どのジャンルをとっても、
渡英(1790年)前後以降の
作品の人気が高い。
従って、それより遙かに前に
作曲されたオペラなどには、
興味の範囲を広げるのは難しい。


が、今回、聴いたDVDなどの表紙写真などを見ると、
オペラも聴いてみようかな、と思うような、
ヤバさがにじみ出ていて良い。

長髪の白髪の物乞いのような老人が、
画面の端に写っていて、
画面中央には、謎の人物の影が浮かび上がっている。
シンプルな舞台で、手前の棺のようなものしか、
何の手がかりもない。

このように、このDVDの表紙から紹介していくと、
やはり、へんてこなだけで、これゆえに、
ハイドンのオペラに興味が出るような代物ではない。
前言撤回である。

オペラと言えば、社交界の名士が集まり、
舞台上の美男、美女に我を忘れるもの。
このハイドンのDVDには、
そうした意味でのわくわく感はまるでない。

シェークスピアのリア王みたいに、
人間性をえぐり出す作品だとすれば、
華やかな世界を夢見て劇場に足を運ぶ人が、
うんざりするかもしれない。

やはり、ロンドン時代以前に書かれた作品は、
ハンガリーの片田舎で書かれたもので、
そうした華やかさに乏しく、
ちょっと格下扱いされてもやむを得ないのであろうか。

交響曲が良い例で、
ロンドンのための12曲は、
特別扱いされているし、
弦楽四重奏曲なども、
1790年の作品64などが頂点であろう。

実際、これらの作品より前の作品では、
色彩とか立体感、規模などで、
明らかに一線が画されたような感じがある。

あるいは、モーツァルトとの交流が、
ハイドンの創作に対する態度に、
変化をもたらしたのかもしれない。

モーツァルトが、ハイドンの四重奏を規範とした、
「ハイドン・セット」を完成し、
ハイドンに聴かせたのが、1785年ではなかったか。

このハイドンのオペラは、それに先立つ作品で、
ハイドンが自分より24歳も若い
モーツァルトから影響を受ける前夜、
1782年の作品である。

したがって、ハイドンの後年の作品を彩る、
豊かな情緒性を期待してはいけないような気がする。
事実、この表紙写真は、
幻想的な色調に期待させられる面もあるが、
あまりにも華がない。

ハイドンが弦楽四重奏曲作品33で、
かなり実験的な技法を確立したのが1781年で、
それに近い時期の作品となれば、
かなり、強引で緊密な音楽を、
連想してもおかしくはないだろう。

と、かなり前振りが長くなってしまった。

ところが、これがかなり、予想と違うのである。
音楽には広がりや変化があり、
感情の起伏も大きい。
しかも、抱腹絶倒のばかげた作品で、
「リア王」を連想されるところなど皆無である。

ハイドンが、モーツァルトから、
学んだことがあったとすれば、
あるいは、こうした劇音楽の情緒性を、
器楽曲に入れ込む工夫だったのではないか、
などと考えてしまった次第である。

今回、聴くDVDは、このオペラ、
「騎士オルランド」のぴちぴち感を、
より前面に押し出したもので、
ハイドン没後200年の2009年に、
ベルリン国立歌劇場で上演されたライブであり、
ルネ・ヤーコプスが、先鋭かつスタイリッシュな、
フライブルク・バロックオーケストラを指揮している。

演出は、ローリーとホセインプールのコンビで、
人気のある人たちだという。
そういう偏見に満ちた目で、
このへんてこな老人が彷徨っている表紙写真を見直すと、
この、いあにもの出で立ちからも、
そのへんてこさが伝わってくるようである。
この老人が恋に焦がれる、
勇猛な騎士、オルランドそのひとの姿であろうとは、
誰が考えるであろうか。

中の映像を見ていっても、
絶世の美女とされる、アンジェリカ役に、
マリス・ペーターゼンという
1968年生まれのドイツ出身の
美人ソプラノを持って来ているところが嬉しい。

このDVD、Euroartsという、
レーベルが出している2枚組DVDである。
買ってから気づいたが、
この映像は一部、YouTubeでも流れていた。
お持ちでない方は、適宜それを見て、
DVD購入に踏み切っていただければ良い。

いくら万能のネットでも、
「英雄喜劇の傑作」と題された、
Guido Johannes Joergの解説までは、
出ていないようだ。

まず、これを読んで、聴きたい感を高揚させよう。

「『英雄喜劇』という一般用語は、
オペラ文献では、極めて稀なものである。
騎士道が、遠い過去になって、嘲笑のまとになった頃、
特に17世紀、ヴェネチア・オペラにおいて
『お祭り騒ぎ(カーナヴァライズド)のようなもの』になった。
その文学的典型は、これまで最も影響力のあった、
イタリアのみならず広く読まれた英雄喜劇の一つ、
『オルランド・フリオーソ』からの物語である。」

ということで、冒頭から、この作品が、
お祭り騒ぎの要素を持っていることを予告している。
たぶん、このような見方が、今回の演出の背景にあるのだろう。

「自身、貴族で騎士でもあった、
イタリア・ルネサンス期の詩人、
ルドヴィコ・アリオストの叙事詩で、
マッテオ・マリア・ボイアルドの、
未完成の『恋するオルランド』の続編として書かれた。
これらの詩作の背景は、サラセンに対する、
シャルルマーニュの軍事行動で、
シャルルマーニュ伝説の記録としては、
古いフランスの『ロランの歌』や、
古くからの騎士の物語があった。」

「ロランの歌」は岩波文庫にも出ていたが、
これは、どちらかというと、
友情の物語であったように記憶する。

「主人公はシャルルマーニュ伝説からの、
ドイツの英雄ローラントで、
彼はシャルルマーニュの甥とされた。
イタリア貴族のエステ家の家系は、
もう一つの重要なテーマで、
アリオストはエステ家の外交官、顧問であったので、
伝説の中の重要人物に所縁あるものとして、
家系図を彼等のために描き上げ、
トロイのヘクトール神話にまで遡った。
両方の詩は、ローラントを広く、遠くまで有名にした。」

ここの記述、少し分かりにくい。
アリオストがエステ家に仕えていたことも知らなかったが、
彼は、エステ家の家系をヘクトールまで遡ったことは分かった。
が、シャルルマーニュの甥のローラントとは、
どのような関係になるのであろうか。

エステ家は、リストが「エステ家の噴水」など、
ピアノ曲を作っているが、
ローマ近郊に素晴らしい庭園が今でも観光地になっている。
中世以来のイタリアの名門である。

しかし、ネットでこのあたりを調べると、
「狂えるオルランド」がウィキペディアに出ていて、
オルランドはイスラムとの戦いを無視して、
アンジェリカを探していたので発狂したとか、
女戦士、ブラダマンテが、
敵軍のルッジェーロに恋をして、
エステ家の起源になった、
とか、いろいろ書かれていた。

何と、実は、ルッジェーロの方が重要人物で、
この人は、むしろイスラム方の戦士だったとは。
メドーロといい、ルッジェーロといい、
かっこいい若い英雄たちは、
みんなイスラムの兵士であった。

エステ家にとっては、
オルランドのような狂人よりも、
むしろルッジェーロやブラダマンテの方が重要だったようだ。

そう言えば、ヘンデルやハイドンの「オルランド」では、
この二人はすっかり消えてしまって、
オルランド、メドーロ、アンジェリカの三角関係の物語に、
すっきりさせられている。

エステ家と関係のない、ロンドンの王族や、
エステルハーツィの宮殿では、
よりアクティブで怪しいオルランドだけで良く、
アルチーナの魔法でへべれけになっている、
単なる優男のルッジェーロなどはお呼びでなかったわけだ。

そう考えると、ブラダマンテとルッジェーロは、
ヴィヴァルディのオペラでも、
どうも話を複雑にするためにしか出て来ない感じ。
さすが、お膝元のイタリアでは、
この二人を外すわけには行かなかったのかもしれない。

このように、
ハイドンの英雄喜劇の話を読んでいたつもりが、
エステ家の家系図や、ホメロスの叙事詩にまで遡り、
トロイのヘクトールにまで連なる話として紹介された。

このヘクトールが、どのようにエステ家と繋がるかが問題だが、
ルッジェーロが、実は、ヘクトールの子孫という伝説があるようだ。

ということで、オルランドやローラントは、
エステ家にとっては、
単なる、余所の家の馬鹿兄ちゃんという設定でも、
まったく差し支えなかったのであろう。

ただし、シューベルトのオペラでも、
このローラントは出て来るように、
ロランの方は、どんどん有名になって、
ヨーロッパの代表的な英雄になる。

「ヨーゼフ・ハイドンも、この主題に関しては、
よく通じた人であった。
彼がアリオストを読んでいなかったとしても、
エステルターツィの居城で、
17世紀の最後の四半世紀に大流行した、
数知れないアリオストの伝説、
神話中の人物に関する音楽劇に親しんでいたに相違ない。
彼は全ヨーロッパで100曲もの劇場作品が上演されていた、
当時の大オペラ作曲家、イタリア人の、
ピエトロ・アレッサンドロ・グリエルミによる、
『ドラマジョコーソ、狂気のオルランド』を、
上演しようとしていたと考えられている。
グリエルミの『オルランド』は、
1771年、ロンドンのキングス・シアターで初演され、
ある時は『騎士オルランド』、
ある時は、『オルランド・フリオーソ』として、
何度も再演されていた。
それはどんなものかと言うと、
美しい王女のアンジェリカが、
サラセンの戦士メドーロと恋に落ち、
気違い沙汰の嫉妬によって、
騎士オルランドが二人を殺そうと追いかけるもの。
妖精アルチーナの魔法があって初めて、
オルランドは、回復して、恋人たちは救われる。」

ハイドンは、このように、「狂気のオルランド」について、
とても良く知っていたと思われる。
が、それは「英雄喜劇」ではなく、
「ドラマ・ジョコーソ」(音楽のためのおどけ劇)であったようだ。
このように読むと、グリエルミが、
オルランドをどう扱っていたかが気になって来るが、
先に進むしかあるまい。

「貴賓の訪問がアナウンスされ、
エステルハーツィにおける、
この作品の新上演は明らかに行われなかった。
そして、宮廷詩人と宮廷楽長による新作初演で、
それは飾られることになった。
結局の所、エステルハーツィの王子は、
壮大に、『エステルハーツィの妖精王国』を、
こうした機会に開陳したかった。
驚く無かれ、ハイドンの雇い主は、
贅沢な宮廷ゆえに、『奢侈愛好家』とあだ名をつけられていた。
当時のヨーロッパの名士だったハイドンもまた、
この来賓、1780年代の初頭、
ヨーロッパ中を旅していた
ロシアの大公パーヴェル・ペトロヴィッチと、
彼の妻、マリア・フェードロヴナには、
すでにヴィーンで会ったことがあって、
さらによく知られていた。
彼は、ヴュッテンブルクの皇女として生まれた大公妃に、
『彼の作品の一つをレクチャーし』、
それゆえに『ロシア四重奏曲』と呼ばれる
作品33の弦楽四重奏曲の印刷したものを彼女に捧げた。
1782年の8月、大公夫妻はヴィーン再訪を望み、
さらにエステルハーツィにも足を運ぼうとした。」

今は2012年の7月の終わりであるから、
230年前のエピソードということになる。

このようにして、ハイドンは、
新しいオペラを書く事にしたのである。

解説はまだ半分あるが、これは、
次回、読み進めることにする。

では、このDVDの1枚目(第1幕)を聴いて行くことにしよう。

Track1.オープニングであるが、
シュターツオパー・ウンター・フォン・リンデンの外観から拍手。

Track2.
序曲は、弦楽器奏者がひしめいて、
かなり大編成に見えるオーケストラを、
ヤーコブズが柔軟に指揮し、
アーノンクールで聴いた時より、
情感に満ちた演奏に聞こえた。

時折写る管楽器やチェンバロの古風な感じも良い。

Track3.
ミニスカートに変な帽子をかぶって、
眼鏡をかけて鉄砲を振り回す、
めちゃくちゃなエウリッラに、
山賊風のリコーネの前に、
海賊風のロドモンテが現れる。

まったく羊飼いの親子と中世の戦士の
遭遇には思えない。
最初こそ、山間の村みたいな背景が見えているが、
途中から、真っ暗な森の中になる。

Track4.
かなり乱暴者のロドモンテが、
フランスの騎士を見たかという問いかけに、
エウリッラはアンジェリカとメドーロの事を教える。

Track5.
彼等がいかにいちゃついていたかを、
アリアで報告するエウリッラ。

Track6、7.
ロドモンテは、オルランドを探しに行くという。
自分が実はバルバリアの王で、
いかに強いかを語るロドモンテは、
剣を振り回して武勇団を歌う。
その間、リコーネの腕を切りつけてみたり、
懐から取り出したデジカメをエウリッラに渡し、
ポーズを取っているのを撮影させたりしている。

Track8.
塔の中にいる設定であるが、
どこであろうか、宿屋のような広い室内で、
アンジェリカが、
「この恋する魂はどうなってしまうの」
などと、歌っている。
この曲の豊かな情感など、
完全にモーツァルトやシューベルトに直結しそうである。
何だか、宿屋の女将みたいなのが一緒にいる。

Track9.
アンジェリカが、メドーロの事を思い、
魔術を使ってでも、苦痛を和らげたいと、
レチタティーボ。

Track10.
すると、いきなり、電灯が明滅し、
二人の女たちは、金縛りに会ったみたいに、
痙攣を始める。
オーケストラは、激しく雄渾な音楽を奏でる。
このTrack8、10などは、
この路線でハイドンが交響曲を書いていたら、
ロマン派はもっと早く来たのではないか、
などと思わせる程の色彩感と情緒性を持っている。

女将みたいな女性はいきなり表情がヤバい感じになって、
「魔女に何を求めるか」とか言って、
オルランドを恐れるアンジェリカを慰める。
何と、これがアルチーナだったのである。

Track11.
アルチーナはいきなり服を着替えて、
地味なものから白いドレスになって、
自分の力を誇示し始める。
この部分の音楽も、打楽器が炸裂し、
サーベルのようなものがガチャガチャ言って、
ものすごい迫力のものである。
怪しい魔物たちが現れるが、
みんなやっつけてしまう。

Track12.
メドーロ登場。
なかなかのイケメンで、アンジェリカと、
美男美女で、かなり説得力のある配役だ。
オルランドがどんなだかは分からないが、
このカップルには勝てない。
メドーロは、オルランドの従者に会った事を、
アンジェリカに告げる。

Track13.
メドーロがくよくよ悩むアリア。
ここにいれば、狂ったオルランドがやって来て、
アンジェリカに迷惑がかかると考えているのである。
このアリアも控えめなものながら、
情感としては深い広がりがあり、
弾奏されるハープの音色も美しい。

また、音楽が激しく高まるところも、
かなり、聴き応えがある。

ハイドンは、宮廷の音楽監督として、
数多くのイタリア・オペラを上演してきたから、
オペラに慣れていたそうだが、
実に、うまい曲作りである。

メドーロは鞄を持って行ってしまう。

Track14.
オルランドの従者、パスクワーレ登場。
色恋のことを妄想したアリア。
猟師だろうか、分厚いコートに、
でかい荷物を背負い、そこにはシカ一頭の姿もある。
口笛も使って、非常に効果的な演出。

Track15.
いきなりロドモンテが剣を抜いて襲いかかって来る。
非常に危ないキャラである。
そこに、エウリッラが、
オルランドがいた、などと報告したので、
パスクワーレは救われる。
すかさず、彼はエウリッラに言い寄る。

Track16.
早口によるパスクワーレのアリア。
面白い遍歴の日々が語られ、
日本にも行ったことになっている。
エウリッラはダンスなどに付き合いながら、
結構、喜んで聴いている。

背後の森の中では、
かなりヤバい恰好の乞食風の男が、
何か苦しんでいる。

Track17.
チェンバロの素敵な音色の序奏に続き、
森の中に、メドーロとアンジェリカが迷い込んで、
あいかわらず、付いて行く、それは望まない、
などとやっている。

「あなたは、もう私を愛していないのね」、
とアンジェリカが言い放つと、
Track18.の祈りのような後悔のような、
敬虔な情感に満ちた序奏が始まって、
「行かないで、愛する人」と、
アンジェリカは一転して、すがるような声を出す。
途中、「正義の神様、なんとひどい日なのでしょう」と、
技巧的な楽句を縦横自在に操る。
オーケストラの活躍もめざましく、
すごい拍手がわき起こっている。

Track19.
メドーロはアンジェリカを置いてくるが、
反対に、「嫌われたら生きていけない」などと言っている。

Track20.
何と、背後で苦しんでいた乞食風の白髪男が、
オルランドだったのである。

頭を抱えて森の中で苦しんでいる。
メロドラマ風に活発な管弦楽を背景に、
レチタティーボで呻き、
木々に刻まれたアンジェリカとメドーロの名前を見て、
遂には木を放り投げ、抱きしめて、
Track21.のアリアとなる。

木々が、クリスマス・ツリーの、
大きい版みたいなので出来る。
「幸せなメドーロとある、これは何事か」と大騒ぎし、
「アンジェリカ」の名前を連呼する。

このアリアはメロディ的な要素に乏しく、
とにかく、勢いで推進するもの。
途中、乱入して来る闘牛士みたいなのは、
リコーネだろうか。
オルランドはそれに突進を繰り返し、
遂には、再び、森の中に消えてしまう。

Track22.で再び、
パスクワーレとロドモンテが邂逅するシーン。
ロドモンテは、「どこにオルランドを隠した」と叫び、
行ってしまう。
すると、今度は、オルランドが現れ、
一緒に戦え、とパスクワーレに迫る。
すると、エウリッラが来て、
ややこしい状況に突入。

Track23.
「あの残酷な女はメドーロを愛しているのか」
「話さないと殺すぞ」と、オルランドは、
エウリッラに詰め寄る。
パスクワーレも一緒になって、
どたばたの三重唱になるが、
オーケストラは、この状況をあおり立てて迫力がある。

Track24.
舞台は変わって、あの宿屋で、アンジェリカが歌っている。
何故か、アルチーナは暇そうに、床に座り込んでいる。
管弦楽が奏でるのは、非常に劇的な喚起力のある音楽で、
「何てひどい苦しみの日」などと言う歌詞を盛り上げる。

そこに、パスクワーレやエウリッラが突入、
怒り狂った男が迫っております、
と注意するが、何とロドモンテまで入って来て大騒ぎ。

Track25.
何故かメドーロが戻ってきて、
恋人たちは向かい合って見つめ合い、
愛を確認し合う二重唱を歌い上げる。

「誰が僕を保護してくれるの」、
「誰が不幸な者を救ってくれるの」と、
あなたしかいない感が濃厚、お熱い限りである。
二重唱の密度が高まるにつれ、
音楽はどんどん崇高な雰囲気となって行く。
これは、全曲屈指の聴き所であろう。

シューベルトも、こうしたメロディを、
愛好したような気がする。
木管のオブリガード付きで、極めて優しい雰囲気が立ち込める。

このように平明でありながら、
心にしみいるメロディの創出は、
古典派から初期ロマン派において、
究極とも思える命題であったが、
ハイドンは、ここでは、素晴らしい高みに達している。

この演出では、ついついつられて、
パスクワーレまでが口ずさんでいる。

すると、魔女アルチーナが立ち上がって張り切って、
「愛と運命のご加護があれば、
ユピテルの雷にも打たれはしません」などと、
唐突に威勢の良い歌を歌い出す。

このような不自然な感じが、
このキャラクターの信用できない部分を表している。

さらにロドモンテが乱入して、
「守ってしんぜよう」と騒ぎ出す。
早口の大騒ぎが始まり、
躍動感のある音楽が、
終曲の盛り上がりを用意する。

パスクワーレなどは、
「主人がオルランドが大きな剣を手にしてやって来る。
ああ、恐ろしい」などと言っているのが面白い。

何と、オルランドが外から宿の壁を壊し始め、
銅鑼の大音響と共に、顔を突っ込んで騒ぎ出し、
斧を持って突入してくる。

原作では、オルランドは鉄の檻に閉じ込められるが、
ここでは、アルチーナの服でぐるぐる巻きにされている。

アルチーナは大騒ぎを扇動し、
魑魅魍魎が現れて一緒になって大騒ぎして幕となる。
音楽には再び雄渾なメロディが流れ始め、
爽やかに第1幕を閉じている。

第2幕以降は、2枚目のDVDに入っているようなので、
今回は、このくらいにいて次回、
第2幕以降を聴いて行こう。

得られた事:「『オルランド』や『アルチーナ』のような、ヘンデルのような名作の後で、ハイドンの作品は、第1幕のフィナーレのような大きな構成を生かした曲作りで、ヘンデルにない世界を獲得している。」
「『オルランド・フリオーソ』の隠れた重要人物は、エステ家の祖となるルッジェーロとブラダマンテであった。」
by franz310 | 2012-07-29 11:01 | 古典
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