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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その294

b0083728_22284513.jpg個人的経験:
ヴィヴァルディのオペラ、
再発見の機運高まる時期に、
この領域に足を踏み入れて、
ラッキーである。
そんな中、たまたま覗いた、
中古レコード屋で、
偶然発見した、
ヴィヴァルディのオペラが、
この奇妙極まりないDVD。
ほとんど全裸の男が、
気味の悪いマントを着て、
舞台の上を歩き回っている。
題名は「ERCOLE」とある。
「TERMODONTE」ともある。
これはいったい、
どのような内容の作品なのであろうか。


よく見ると、このマント、
猫の手のようなものがぶら下がっており、
肩のあたりにはたてがみのようなものが見えている。
後で分かるが、これはライオンの毛皮を想定したものだ。

このオペラは、マルク・パンシェルルの、
「ヴィヴァルディ、生涯と作品」にも、
1723年1月、ローマのカプラニカ劇場で
演奏された作品として、一応、出てはいる。

が、翻訳した人も、
「Ercole sul Termodonte」とそのまま書いているので、
何のことやら分かってなかった可能性がある。

このエルコレは、英語では「ハーキュリーズ」、
フランスでは「エルキュール(Hrrcule)」になる、
ギリシア神話の英雄ヘラクレスである。

英語でもフランス語でも「H」がヒントになるが、
イタリア語は困ったことに、これがなくなっている。
Termodonteは、トルコの方の地名である。
「テルモドンテのヘラクレス」ということになる。
これは、予備知識なしでは面食らう作品だった。

解説書に出ている「プロット」は、
非常にシンプルで、こんなことが書いてあるだけ。

「ミュケーナイの王、エウリュステウスは、
ユーノーにせき立てられ、
ヘラクレスの栄光をねたんで、
古代ギリシア通貨、
12タラントの負債を取り消すために、
アマゾンの女王、アンティオペの武器を、
トロフィーとして持ち帰れと命令する。
テーセウスやテラモンを含む、
優れたギリシアの全貴族が、
ヘラクレスの冒険に同行した。
このようにしてヘラクレスは、
9つの船でカッパドキアに趣き、
アマゾン族を奇襲して、
女王の姉妹、ヒッポリュタとメナリッペを
捕虜とすることに成功した。
テーセウスは、ヒッポリュタと恋に落ち、
彼女を妻とした。
メナリッペは、アンティオペの武装解除と引き替えに、
自由にされた。
オペラの中では、メナリッペは、
マルテジアに変えられ、アンティオペの姉妹ではなく、
娘とされている。」

前回聴いたヴィヴァルディのオペラの主人公も、
怪力で狂気に駆られやすいオルランドであったが、
このヘラクレスもまた、激情の英雄である。
火の中に投げ込んで我が子を殺したという話もあり、
神話の世界では、このヒッポリュタも、
ヘラクレスに、誤解から、
殴り殺されるはずである。

であるから、このDVDでも、
最初に演出家のジョン・パスコーが、
Track1で、いきなり登場し、
ヘラクレスは、子殺しをしたりする、
むしろ怪物だ、と説明している。

「ヴィヴァルディの『ヘラクレス』は、
戦争に対する愛と平和の勝利の物語です。
大部分の物語がヒッポリュタとテーセウスの、
高貴なカップルと、
もっと普通でへんてこなカップル、
マルテジアとアルチェステの、
ラブストーリーが語られています。
ヘラクレスの怒りがあろうとも、
愛が勝利します。
ライオンの皮を被った、
専制的なヘラクレスの激怒も、
敵であるアマゾンの一人と、
親友のテーセウスが親しくなるうちに、
ライオンの皮を落とし、
裸の純粋な男になるのです。
私にとっては、愛が正義を作り出すことが出来る、
という、物語に思えます。」
といった事を言っている。

序曲は、指揮者のアラン・カーティスの登場から始まり、
イル・コンプレッソ・バロッコが、
精妙で豊かな音楽を奏で始める。
カーティスは後ろ頭がはげた、
何となく威厳のないおっさんであるが、
この人が、今回のオペラの改訂や監督まで行っている。
49°Spoleto Festivalとある。
2006年7月の録音。

一説によると、現在、唯一入手可能な、
ヴィヴァルディのオペラのDVDだという。

この序曲の間、舞台の闇の中では、
アマゾンの美女戦士たちが、
飛んだり跳ねたりしている。
剣を振ったりして戦闘訓練に絶え間ない。
音楽が、物憂くロマンティックなものになると、
そこに女王があらわれ、姉妹愛だか親子愛の情景となる。

青白く幻想的だが、エロティックでもある。
このような平和な国に、
表紙写真にあるような、
粗暴なヘラクレスがやってくるなんて、
考えただけで恐ろしい。

再び音楽が活気付くと、今度は弓矢の訓練となる。

女王アンティオペのレチタティーボとアリア。
森へ行って、敵を駆逐しろ、というものだが、
女戦士たちの胸は、丸出しだし、
女王もすけすけルックなので、
字幕を見ている暇がない。

途中、二重唱するのは、
マルテジア(メナリッペ)である。
「あなたの胸は、甲冑を付けるには、
まだ優しすぎる、
ヘルメットはあなたの眉には重すぎるわ」
とか言っている。

アンティオペは、すらりと背の高い、
メゾのマリー=エレン・ネージが、
マルテジアは、ソプラノの
ラウラ・ケリーチが歌っているが、
ケリーチは、ぽっちゃり豊かなブロンドで、
ぴちぴちギャルであることの方が、
戦士になるには問題であろう。

「男というものは、獣より凶暴なのですか」
「それは、クマやイノシシより恐ろしい形相ですか」
などとうぶな質問もそれらしい。

女王は女王で、それは、むしろ見て心地よいが、
怒りや毒で我々を憎しんでいると、
何となくごもっともな事を教え諭す。

王女は、それは吠えたり、いなないたりするかと、
舞台を跳ね回って好奇心を露わにする。

「あなたは、まだ分かりもしないのに、知りたがりすぎる」
と女王がたしなめても、
「その獣を見たくてたまらないわ」と、
嬉しそうにしている娘に、
女王は警告のアリアを歌う。

「お世辞をいいながら、彼等は迫ります。
彼等が笑い、冗談を言う時、彼等は最もどう猛です。
彼等は誘惑して、それから殺します。」

アンティオペの出で立ちは、劇画風戦士として格好良い。
アキバ向けである。

次に王女のレチタティーボ。
「そんな誘惑があっても、私は上手に騙す」と、
自信満々である。
「私の頭の中に考えがある」というアリア。
腰を振ったり、床にくねくねしたり、
へんてこな振り付けである。
「恐れと喜びをくれる何かが来ても私は逃げる」
と言っているが、身のこなしは反対である。

女王はどこかに行ってしまったので、
夜中に一人で叫んでいるような状況である。

Track5は、「ヘラクレスの入場」で、
ヤバい石像が建ち並ぶ中、
甲冑をつけた勇ましい若者が整列すると、
ライオンの毛皮の下に、
実物をぶらぶらさせたヘラクレスが登場。

「諸君、ついに、この野蛮国の浜辺に来た、
ここでは、女たちが自然に逆らい、
男を遠ざけ、女だけで生きている。
母親は男の子が生まれると殺す。
私は、この男に敵対する女たちを滅ぼしに来た。」
と、友人、テーセウスに言っている。

どちらかと言えば、この男の方が、
自然に逆らっているようにも見える。
が、ザカリー・ステインズというテノール、
あっぱれという体当たりの熱演である。

テーセウスは、ランダール・スコッティングという、
カウンターテナーで、格好良く、
「単にアンティオペの武装解除を、
トロフィーとして持ち替えれば良いのです」
と反論するが、
「ヘラクレスはそれだけでは満足できない」と、
いきなり興奮して怒り狂っている。

「戦場を女の血で染めるのだ」と、
かなりの異常性格、サディストだ。
テーセウスは、「慈悲の心は愛の母」とか、
「戦士の心の中で、愛は臆病ではありません」とか、
友人と共に訴えるが、
ヘラクレスは、「勇敢さの前に障害となる」と受け付けない。

テラモンは、アマゾンの女王は森に狩りに出ている、
と調査結果を報告すると、ヘラクレスは、
「傲慢な女の武具を奪い、同時に森を取り囲め」
という指示を出す。
ヘラクレスのアリアは、
「どんな誇り高い心も、この強靱な腕が地に落とす」
という傲岸不遜で自信満々なもの。
岩を掴んで投げるなど、単なる乱暴者である。
こういう親分は嫌だなあと思うと、
平伏するテーセウスもそう思っているようだ。

今度はテーセウスの歌で、
「愛はむしろ、栄光以上に、勇気の源になる」。
続いて、女性の悲鳴。
ヒッポリュタが、クマに襲われたのである。
クマは、どうやら、テーセウスが仕留めた。

が、いきなり、この勇者は、メロメロになっている。
ソプラノのマリーナ・バルトリが演じる、
ヒッポリュタが美しすぎたのである。
女王の姉妹という設定ゆえ、同様の、
アキバ風すけすけ戦闘服である。
彼女は誇り高く、なかなか戦闘態勢を崩さない。

これに対して、テーセウスは、がっちりした体格ながら、
カウンターテナーでなよなよと言い寄り、
奇妙な風景であるが、ヒッポリュタもまんざらでもないのか、
名前を言って、などと言っている。

「アテネ王の息子、テーセウスです」と答えると、
この地に来た目的や、ヘラクレスが来たから、
刃向かっても無駄だ、などと、
女王の妹をむかつかせそうな事を列挙している。

が、ヒッポリュタは、「何という眼差し、
不思議な愛情が芽生えるわ」などと言いながら、
危機を女王に知らせに行こうとする。

Track6.
手を取ってテーセウスがヒッポリュタの甲にキスをすると、
「これが愛、すでに甘い情熱が私の心を掴む」という、
情熱と焦燥のアリアが続く。
テーセウスは、手を取ってすりすり、
キスをしまくっている。

彼女が去ると、テーセウスは、
「こんな美しい愛は想像もできない」と、
感慨に耽る。
そしてアリア。
「太陽をじっと見ていると、暗くしか見えなくなり、
愚かな間違いを後悔し、嘆いてしまう。
私のきれいな太陽が目に入ってからは、
その後は、曇った暗い一日に見える」
これまた、切々とした、ある種、女々しい音楽である。
伴奏のガンバやちゃらちゃらしたチェンバロが悩ましい。

これがまた、やたら長い。
当時の人気者が受け持ったのであろう。

Track7.
再び、アンティオペ登場。
どうやら、危険の通報で、逃げて来た模様。
マルテジアが捕まったと、ヒッポリュタが来る。
マルテジアは誘惑に勝てなかったのである。
アンティオペは、「何をぐずぐずしている」と自分を鼓舞し、
背景がめらめらと赤くなる。

何と醜くも、次のシーンでは、
ギリシアの兵士たちが、マルテジアを巡って、
これは俺のだ、と取り合いしている。
マルテジアは、「男は誘惑して殺すんでしょ」と、
知識をひけらかして、それなりにやりすごしている。

「恐ろしい憤怒と毒を隠しているんでしょ」
とか言っているうちに、
アルチェステとテラモンは向かい合って剣を抜く。

すると、そこにヘラクレスがやって来る。
争っていた二人は、ヘラクレスに彼女を捧げるという。

Track8はテラモンのアリア。
せっかくの獲物を取り上げられて、
テラモンは虚脱状態で、ため息をついている。
もんもんとしたテラモン。

フィリッポ・ミネッチアという人のカウンターテナー。

Track9は、もう一方のアルチェステのアリア。
こちらは、ルカ・ドルドロというテノール。
どろどろしたドルドロのようなシーンだが、
曲想は生き生きとしている。

「私は喜んで、私の心の声を聴く。
喜びと満足の希望を持って。
甘い恋心がすべての恐れを忘れさせ、
心の中で、苦しみは喜びに変わった。」

「どんな不吉な星が、私の栄光をねたむのか。
アンティオペの逃走で、勝利を取り逃した。」
と、ヘラクレスはご機嫌斜めである。

そこに、テーセウスが現れ、
船が燃えていると告げる。

Track10.
ヘラクレスは興奮し、
「征服か死か」と言って出陣する。
アマゾネス軍とギリシア軍が格闘。

このシーンは残酷なので見てはいけない。

第2幕:
Track1.
ヴィヴァルディの協奏曲の一節のような、
繊細なヴァイオリンの技巧に乗って、
アマゾネスのダンス。夜明けであろうか。
そして、ヒッポリュタが、憧れに満ちた、
ロマンティックな歌唱を聴かせる。

「愛は川に呼応し、愛はキジバト、
愛は滑空するツバメ」などと歌うと、
背後で楽士たちが呼応する。
恋人に来て来てという悩ましい声に変わり、
楽士たちのヴァイオリンに合わせて、
チェンバロが唱和し、弦楽が活気付き、
非常に詩的な情緒を醸し出している。
これは素晴らしい。

拍手がわき起こるが当然であろう。

恐ろしいクマの牙から助けてくれたあなた、
とテーセウスのことを思う。
そこに女王、アンティオペが娘を案じて登場。
ギリシアの戦士を掴まえたと告げる。
ヒッポリュタは、それがテーセウスであると感じ、
彼と引き替えに娘を取り返せと進言、
しかし、女王は、彼を殺してディアナに捧げたいという。

Track2.
「この心を慰めるとは、何という喜ばしい復讐」
と、「目には目を」のアリアをアンティオペが歌う。

真っ赤な装束で剣をかざし、狂気のアリアである。
ヒッポリュタは、びびりまくって、青ざめている。

Track3.
テーセウスが縛られているが、
アンティオペとヒッポリュタが、
別の指示を出しているうちに言い争いになる。

アンティオペのアリア。
「怒りをなだめるなら、
それが苦しみをもたらそうとも、
復讐は私には喜ばしい。」

テーセウスの運命はいかに。
ひたすら、アマゾネスがいたぶっているが。
この間、アンティオペはコロラトゥーラ的な装飾を見せる。
そして去る。

テーセウスは、「君から離れているなら、
自分から束縛されても良い」などと言うと、
ヒッポリュタは、
「そんな不吉な考えがあなたの考えなの」と詰め寄る。
「自分の心を救うために二つを失うの」と、
ほとんど愛の告白状態。

「あなたの命を助けることが、良い運命。私にとっても」
と、ヒッポリュタは情熱的で、見ている方もしびれる。
そして、彼女はテーセウスを解放するが、
彼は、苦しみが長引くだけと、
素直に喜ばず、二人はほとんど抱き抱き状態。
さらに、彼は、彼女の愛を疑う。

Track4.
「私はあなたが好きよ、
きれいな瞳ね、あなたのために死ぬわ、
離れないわ」と歌いながら、
ヒッポリュタが、テーセウスの顔中にちゅっちゅするアリア。
くすぐったい、コケティッシュな小唄である。
しゃがんでいる彼を後ろから抱きかかえ、
アマゾネスとは思えない優しい感情表現。

ついにテーセウスは彼女を抱きかかえて、
くるくるしたりする。バレエのように、立体的な映像表現。
が、その間、回りは暗くなって不穏な空気がみなぎっていく。

ついに、アンティオペと女兵士たちが現れ、
彼等は引き裂かれてしまう。
最初に聞き始めた時の印象と打って変わって、
妙に切ない話になって来た。

まるでロミオとジュリエットのような悲恋が、
前面に押し出されて来たではないか。

Track5.
何と、逃げて来たのは、
王女のマルテジアとアルチェステである。
「スパルタの王妃になるということは、
あなたの奴隷になることでしょ」
とマルテジアは言っている。

アルチェステは、愛を交換しようというが、
「そして、あなた以外は愛せないの」と、
結婚を理解しない。
「魂を死ぬまで結びつけるものだ」と彼は力説。
「それは悪くないわね」と彼女が言うと、
アルチェステは、キューピッドに感謝している。

Track6はアルチェステのアリア。
これまた、ひっしと抱き合うようにしての情景。
「それは鳥のようなもので、
網から最後は逃げて行く。
枝に隠れ、どこにもいけず一人になると、
逃げて来た危険が分からなくなる。」

剣を置き、甲冑を置き、だんだん、
彼女を抱きすくめる力が強くなっていく。

何と、そこにテラモンが来る。
「ライヴァルに微笑んだ運命とは違って、
私もマルテジアを妻として抱きしめたい」
と、アルチェステに代わって、
彼女に言い寄る。

マルテジアは、じゃあ、心を二つに分けないと、
などと、なかなかのあしらいを見せる。
「イターキの王冠はどうかな」などと、
テラモンも必死である。
「二人の配偶者の時はどうすればいいの」
と、さすがアマゾンの王女ならではの質問。
「どっちかを選ばないといけない」と言われ、
「どっちも同じ条件だから」と渋りながらも、
「私を楽しませるのは、アルチェステ」と言ってしまう。

Track7はマルテジアのアリア。
「彼には何かがあって、あなたより楽しませる」
という、傷口に塩をすり込む、
悪戯っぽい歌である。
戦闘が行われている最中のはずだが、
呑気なものである。
「彼が見つめると私は嬉しい」。

Track8は、テーセウスのシーン。
彼は、再び、取り押さえられ、
アンティオペに睨まれている。

今回は、不気味な神像の前で、まさしくヤバい感じである。

「太陽の姉妹に捧げるべく、私は自らの手で殺そう。
このような高貴な血でなら、いくらかはそれに値しよう」
などと女王が言うのに対し、
「アテネ王族の私の血なら、あなたの涙に値しようか」
とテーセウスが名乗る。
すると、女王は、これ以上の犠牲はないと言って、
「ディアナにふさわしく、私の激しい復讐への渇望にふさわしい」
と叫ぶ。

神に捧げる祈りの言葉に続き、
何と、これまた、くのいちのような者が現れ、
彼女の剣を取り上げてしまう。
ヒッポリュタの反逆である。
「この王子を、ギリシア人の傲慢な軽蔑を受けて、
捉えられている、マルテジアと交換します」
という彼女の言葉には肯けるものがある。

「ああ、誓いよ、復讐よ、
ディアナよ、可愛そうな娘よ」
と、王女は、いきなり娘への愛情で、
心が張り裂けそうになっている。

「テーセウス、あなたは自由です」と、
女王が叫ぶと、
テーセウスは女々しくも、まだ、
「何と残酷な自由、あなたは、
この恋する心を不毛の地に追放する宣告をした。
それはただ、愛するものから遠ざけられるだけなのだ」
などとほざいて、倒れている。

Track9は、この弱いテーセウスのアリア。
「ごうごうと川が流れ、
並みって岩に砕けるが、
その川岸にはキスをして、
海に向かって幸せそうに流れて行く。
私の心はその苦しみをも楽しみ、
私の命と自由にふさわしい、
愛らしい顔を見つめるために、
危険の中でも喜びの中に飛んでいく。」

激流が海に向かうように、苦難の中を、
恋人に向かって突き進むとは、
なかなか素晴らしい心構えで、泣かせるではないか。
後半は剣を抜いて、さらに興奮して歌っている。

こんな感じの川の歌は、
シューベルトの歌曲にもあった。

作者不詳で、シューベルト自身の作ともされる、
「川」D565がそれだが、
「しかし求めるものは決して見いだせず、
いつも憧れを抱いて猛り下り、
不機嫌に絶え間なく流れていく」
という歌詞は、このテーセウスの歌のように、
激情を激しく流れる川にたとえたものである。

が、シューベルトの川は、海に続く実感がない。
一方で、港湾都市、ヴェネチアのヴィヴァルディは、
川の流れの激しさの実感がない。

得られた事:「ヴィヴァルディ作曲のオペラ『ヘラクレス』は、むしろ、テーセウスとヒッポリュタのやるせない愛の物語であった。」
by franz310 | 2011-09-18 22:34 | 古典
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