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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その271

b0083728_1804398.jpg個人的経験:
シューベルトの友人たちが、
美学として共有していた
と思われる自己犠牲。
シューベルトの大オペラ2曲のうち、
2曲めのものは、
この自己犠牲を主題にしたものである。
しかし、この力作もまた、
歴史の闇に葬られてしまった。
それは、前の大作の比ではない
忘却の淵に沈んだのである。


この作品が、本格的に上演されたのは、
なんと、シューベルト生誕100年も間近と言える、
1988年である。
これはアバドが指揮をしたもので、
私も、ずっと前に日本盤CDを入手した。

ここで、シャルルマーニュ帝の役を受け持って歌ったのが、
前回、シューベルトの友人たちの歌曲を歌っていた、
オランダ出身のロベルト・ホルであった。
また、イケメンの騎士ローラントは、
シューベルトの大オペラ第1作、
「アルフォンソとエストレッラ」のDVDにも、
アルフォンソの父親役で登場した、
トーマス・ハンプソンである。

ということで、陣容からしても、
当代屈指のシューベルティアンを集めたこの演奏は、
実に、シューベルト史に残るものだと言って良いだろう。

今回取り上げるCDでも、
この事は特筆されていて、
解説の最後は、このように締めくくられている。

「このオペラは、1897年、カールスルーエで初演された。
さらなる舞台の試みは、ブリュッセル、ペルージア、
アーヒェン、フィラデルフィアでなされているが、
これらはすべて短縮版によるものであった。
全曲の完全初演はクラウディオ・アバドの指揮によって、
ヴィーン国立オペラで1988年5月になされている。」

「英雄ロマンオペラ」と題された、
この大歌劇「フィエラブラス」はまた、
シューベルトの友人たちが愛した歌曲「吟遊詩人」と同様、
身分違いの恋をもテーマにしている。

主役級の騎士エギンハルトは、王女エンマに恋をしていて、
「ああ、王の高貴なお嬢様、
あなたは世界を統治することになっておられる。
それに対して、この私は貴族の貧しい息子、
まだまともな騎士にはなっていない」と、
苦しみを打ち明けるように。

さて、今回、取り上げるものは、
1959年という時期に、
ベルンの放送局が録音したものであるから、
当然、短縮版である。
放送録音でモノラルである。

このCD、シューベルトを聴きたい人用というよりも、
この異常な表紙デザインから分かるように、
騎士エギンハルトを歌った、
フリッツ・ヴンダーリヒの歌を聴きたい人用のもの。

それにしても、ヴンダーリヒも気の毒である。
隠し撮りのような、こんなへんてこな表情の写真が、
商品に使われるなどと考えてもいなかっただろう。

ということで、このCD、
この若くして亡くなった不世出の名歌手が歌っていなければ、
当然、お蔵入りになっていたはずの録音である。

ハンス・ミュラー=クレイ指揮、
ベルン州立オーケストラという表記も、
まったく触手が動かない。

中には、この指揮者の写真があって、
これを見る限りは、厳格な学者のような風貌である。

エギンハルトの相手、エンマは、
ジークリンデ・カーマン、
主人公フィエラブラスはルード・ティンパー、
もうひと組のカップル、ローラントとフロリンダは
レイモンド・ウォランスキーとヘティ・プリューマッヒャー、
カール大帝はオットー・フォン・ローアが歌っている。

プリューマッヒャーとローア以外は、
あまり見たこともない名前で、
私は誰一人知らない。
プリューマッヒャーの写真は、
解説のブックレットにもあるが、
なかなか魅力的である。

歴史的な音盤を復刻するので有名な、
アルキペルのもので、MYTO、ヒストリカル・ラインと、
銘打たれているが、何のことやら分からない。

とにかく、このCDは、このオペラをシンプルに、
1枚にまとめてくれていて、大変ありがたい。
廉価盤であるし、それゆえに解説もシンプルだ。

この録音は、シューベルト・ファンには、
昔から知られていたもののようである。

1992年に、ナツメ社から出ていた
「クラシック名曲・名盤辞典」の第二部に、
シューベルトのオペラのCDが、
まとめていくつか紹介されているが、
ここで、アバド盤の紹介ついでに、
「ヴンダーリヒがフィエラブラスを歌っている興味深いCDもある」
と、さらりと紹介されているからだ。

しかし、ヴンダーリヒが、
主人公の役を歌っているわけではない。

なお、これを書いた小林宗生氏は、
この「フィエラブラス」を、
「タイトルロールの音楽的役割が少なく、
そしてアリアらしいアリアがなく、
アンサンブルと合唱に重点が置かれている
オペラらしくない特色を持っている点が新鮮」、
「長大な歌物語として十分楽しめる内容」、
と書いている。

さて、この本でも、「このオペラの魅力を良く生かした演奏」
と書かれ、素晴らしい布陣の点でも決定版であるアバド盤は、
この複雑なオペラを初めて紹介するには、
解説がまずすぎた、と言っても言い過ぎではないかもしれない。

ジークフリート・ネーフという人が書いた、
解説の、「価値の判断は留保して・・」という題名からして、
実に、腰が引けている。
幻の大作の歴史的蘇演に興奮した人であれば、
こういう書き方はしないものだ。

その点、今回のCDは明解だ。
(残念ながら、誰が書いたか不明なのだが。)
「こうした美しい音楽は無視されるには惜しんで余りある」
とはっきり書いてくれている。

では、その解説を読んで見よう。
お決まりの、シューベルトのオペラが、
不遇である現状の説明から入っている。

「運命の女神はシューベルトに対し、
全く優しくなかったばかりか、
彼女のもっとも厳しい石つぶてや矢を、
彼のオペラへの努力に対して放った。
シューベルトは9曲のオペラを完成させたが、
そのうち、2曲のジングシュピール、
『双子の兄弟』、『魔法の竪琴』しか、
生前に舞台にかけられなかった。」

そして、不遇な理由を列挙している。

「ヴィーンの歌劇場が、シューベルトの、
二番目の、最も壮大な英雄的、ロマン的オペラの試みを、
拒絶した理由としては、様々な理由が提出されてきた。
たとえば、ウェーバーの『オイリュアンテ』の失敗による、
ヴィーンにおけるドイツ・オペラの拒絶、
シューベルトの舞台作品に対する経験不足、
そして、何よりも、
多くの批評家が矛先を向けるのは、
シューベルトの親しい仲間、
レオポルド・クーペルウィーザーの兄弟、
台本を書いたヨーザフ・クーペルウィーザーの
ドラマの能力不足であった。
1824年3月31日、
シューベルトはレオポルドに、
『君の兄さんのオペラは、
舞台にかからないと宣言されたので、
僕の音楽は無駄になった。
またも、僕は時間を無駄にしてしまったようだ。』
ドイツの音楽学者、アインシュタインは、
『リブレットはもったいぶったナンセンスだ』と
全面的に賛成している。
しかし、シューベルトの最初の傑作歌曲集、
『美しい水車屋の娘』と同時期に書かれた、
かくも美しい音楽が無視されるのは、
惜しんで余りあるものだ。」

ということで、ここでは、音楽は良いが、
台本が悪いという、これまた良く聞く話に落ち着いた。
が、この台本で良いと考えたのはシューベルト自身である。

余談ながら、私は、この3月31日の日付を見て驚いた。
こうして訳出してみた日が、
それから187年後の3月31日だったからである。

「『フィエラブラス』のテキストは、
中世フランスのロマンスと、
ドイツの伝承『エギンハルトとエンマ』の、
ごった煮であるが、何故かシューベルトは、
初めのうち、これを高く評価していた。
崇拝していたベートーヴェンと同様、
シューベルトもまた、
不名誉と死から囚われ人を解放する
ヒロインを描いたオペラを、
書こうと思った。」

ということで、「エギンハルトとエンマ」の話を、
まず、中心に考えた方が良い。
何故なら、主人公であるはずの、
フィエラブラスは、ほとんど何も活躍しないからである。
そして、この録音でも、名歌手のヴンダーリヒは、
エギンハルトの役を歌っている。

なお、以下、あらすじが出ているが、
第1幕のことばかり書かれている。
第1幕の解説が15行であるのに対し、
第2、第3幕の解説は、6、7行で終わっている。

アバドのCDも一枚目が第1幕で、
CDの二枚目に第2、第3幕が入っていた。

また、ここでは、カール大帝は、
シャルルマーニュということになっている。

あらすじ:
「第1幕:
幕が上がると、シャルルマーニュの城の一室である。
その娘、エンマと、侍女が糸紡ぎの歌を歌っている。
騎士エギンハルトは、エンマに、
その父親のイスラム教徒に対する勝利の報を、
伝えに入って来て、
ついでに彼女への愛を打ち明ける。
シャルルマーニュは、勝利した軍隊を率いて帰還する。
その捕虜の中には、イスラム教徒の、
誇り高き王子、フィエラブラスがいる。
騎士ローラントは、彼を哀れみ、同情し、
その命乞いをする。
エンマを見るや、フィエラブラスは、
たちまち恋心を感じるが、
それは甲斐なきこと。
エンマとエギンハルトは、
フィエラブラスが報われぬ愛を嘆いている間、
こっそり密会をしている。
シャルルマーニュは、
娘が、エギンハルトと、
禁じられている会合を持っている所を発見する。
しかし、彼はうまく、それをフィエラブラスのせいにして、
フィエラブラスは彼女のために、
その罪を被って即刻、地下牢に入れられる。
騎士たちの使節団は、実はフィエラブラスの父である、
イスラム教国の王に和平を申し出るべく出発しようとしている。
エギンハルトは良心がうずき始め、
彼の罪をフィエラブラスの父親に打ち明け、
責任を取ろうとする。」

Track1.序曲がまず演奏される。
さすがに半世紀前の録音であるから、
鮮度は期待できないが、聞き苦しいものではない。

この序曲は、序奏部の緊張感が素晴らしい。
不安に満ちた弦のトレモロも、
ロマンティックなホルンの唱和も神秘的である。
木管のかけあいもシューベルトならではのもの。
主部は、どかーんと力強く単純だが、
これも、楽しい舞台が始まる期待を高めるものだ。
この指揮者の堅実で克明な音楽作りが聞き取れる。

第1幕からは、ここでは、以下の6曲が演奏されている。
この後、各曲の始めに、
放送時の内容解説が入る。

Track2.合唱とエンマ。
動入曲「銀の糸が」
ここでの解説は、
「城中でエンマが糸紡ぎの歌を歌う」みたいな感じ。

女性合唱が侍女たちの糸紡ぎの様子を表す。
エンマは、一人

Track3.エギンハルトとエンマ。
第2曲「ああ、明るい希望に心ははばたく」
エギンハルトが来て愛を語る、みたいな解説。
エギンハルトの、身分違いの恋の悩みに答え、
手柄を立てて父に賞賛されればよいだけだ、と、
エンマが言う。

二人は、改めて愛が確認され、感極まって、
「遠い目標に向かって戦いましょう」と唱和する。

が、爆発するような歓喜ではなく、
いかにも、シューベルトらしい、
初々しい二人の、躊躇うような曲調。
ベッリーニなら、ここで、一発、
不自然なまでの大砲を撃ったはずであるが。

ヴンダーリヒの美声が聴けるが、
エンマのカーマンの声も美しい。

曲は後半、テンポをリズミックにして、
シューベルトが得意とした、
力で押すような雄渾な表情を垣間見せる。

この後、凱旋のシーンがあるが、ここでは、
これは省略されている。

Track4.オギエ、ローラント、カール王、合唱。
第4曲A「王よ戦利品は」
いきなり、オギエとは誰だ、と思うが、
これは、カール王の騎士の一人で、
彼はちょい役にすぎず、
単に戦利品が欲しいと言っているだけ。
問題は準主役のイケメン騎士ローラントが、
捕虜になっているフィエラブラスを自由にして欲しい、
と王に頼むところだが、そこまでは長いので演奏されていない。

合唱が盛り上がって、戦勝を喜んでいる。

Track5.フィエラブラス、ローラント。
第5曲「勇気を持って希望を持とう」
ここでは、タイトルロールとイケメンの二重唱で、
見せ所になりそうだが、録音のせいか、
二人のおっさんが声を張り上げているだけに聞こえる。

実は、この間、いろんな事が起こっている。
ややこしい事に、昔、ローマに、この二人は居合わせ、
フィエラブラスはエンマを見初め、
ローラントは、フィエラブラスの妹のフロリンダを見て、
一目惚れしたと言う。

ラジオ解説もそこまで説明しきれなかったのか、
何も言っていない。
その代わり、次の場面の解説は長く、
エンマとエギンハルトの密会が、
フィエラブラスの冤罪へとつながることが説明されている。

Track6.エギンハルト、エンマ。
第6曲A「夕闇が静かに大地に降りてくる」
ここは、ピチカートに乗って歌われる、
悩ましいセレナードで、エギンハルトの切ない思いが歌われる。
これは、悩ましい夜の雰囲気たっぷりのもので、
メロディもしみじみしていて、
ヒットしても良さそうな要素を持っている。

エンマの希望に満ちた激励に移行する転換も、
素晴らしい効果を上げている。

Track7.フィエラブラス。
第6曲B「どうして僕を苦しめるのだ、不幸な運命よ」

恋人たちの様子を見て、
捕虜となっているフィエラブラスに、
さらなる失恋の打撃が襲う。

絶妙なオーケストラの前奏が、
その心の動きをすべて言い尽くしており、
フィエラブラスのレチタティーボは、
「苦しみは男にはふさわしくない、
心を落ち着けて耐えるのだ」という、
勇気を奮い立たせるアリアに続く。

ここで、すでに自己犠牲の心、
「この幸せを幸せと思ってはならないのか」と、
愛する人の幸せを第1に考えている。
後奏も、闇の中に、この激情を押さえ込む様子が、
オーケストラで素晴らしく表現されている。

この後、フィエラブラスは、
ヤバい場面から逃れようとしていたエンマと、
偶然、突き当たった所を王に見つかってしまい、
牢獄に入れられてしまうが、そのあたりはすべて、
このCDでは省略され、解説でごまかされている。

「第2幕:
イスラム教徒の王の城中。
その娘、フロリンダは、
兄、フィエラブラスのことと同じように、
ローラントの事を案じている。
エギンハルトが、彼の罪を、
彼女の父に告白すると、王は騎士団に怒りを降り注ぎ、
彼等は牢に入れられてしまう。
囚人たちの中に、フロリンダは愛するローラントを見付ける。
フロリンダは、牢のある塔に忍び込み、
彼とその仲間を解放する。
小競り合いがあって、
エギンハルトは何とか逃げることが出来たが、
ローラントは捕まってしまう。」

この幕からは、各幕で一番多い、10曲が選ばれている。

Track8.エギンハルト、ローラント、合唱。
第7曲「すがすがしい朝の光をうけて」

ここでは、国境を越えた騎士たちが、
朝の空気の中を進んで行く様子が歌われるが、
とても、戦時中とは思えない、
平和な合唱である。
エギンハルトの歌も呑気である。
「リートと合唱」と書かれているように、
素朴でナイーブな感じである。

この曲は、次の曲、さらに第21、23番と共に、
1835年に演奏された記録があるらしい。

これは、井形ちづる著「シューベルトのオペラ」に、
詳細な上演史が出ていて分かった。
が、今回のCDの演奏については書かれていない。

いかにもビーダーマイヤー期の合唱曲という感じで、
とても爽やかで楽しい。

Track9.エギンハルト。
第8曲A「決心した、彼の鎖を解くのだ!」

最初は、朗らかに進軍していたエギンハルトも、
だんだん、心が重くなって、
フィエラブラスの父親の顔を見ることが出来ない、
ともんもんと始める。

ついに、振り絞るようなオーケストラに、
「深く傷ついた友を助けるために、
愛を犠牲に、ぼくの命を提供しよう」という、
悲痛なレチタティーボが続く。

歌劇では、この間、エギンハルトは、
イスラム教徒軍に見つかってしまう。

Track10.合唱、エギンハルト、ブルタモンテ。
第8曲Aの続き「あの音は何だ」
ここでは、エギンハルトの吹いた合図のホルンが、
友軍を呼び寄せようとして、
イスラム軍に動揺が走る様が描かれる。
しかし、結局、エギンハルトは敵の手に落ちてしまう。

ホルンで合図するあたり、
「アルフォンソ」と同じ小道具の使い方である。
このあたりの緊張感も絵画的な効果もさすがである。

この第8曲も、先の1835年に演奏されており、
翌36年にも再演されているらしいから、
エギンハルトの悩ましい状況を歌ったこの場面は、
オペラの代表的なシーンと考えられていたのであろう。
管弦楽も多彩な魅力を発揮して、一幅の音画になっている。
声との絡みが自由で、ベルリオーズを思わせるものがある。

Track11.フロリンダ、マラゴンド。
第9曲「地上の栄光や輝きをはるかに越えた」
マラゴンドは、イスラム側の王女、
フロリンダの友人である。
ソプラノとメゾの二重唱であるが、
華やかなものというよりは、
天上的な感じがする。

城の中で、フロリンダはローラントを想い、
マラゴンドは、
「幻想があなたを惑わすことのないように」
と忠告をしている。
敵方の騎士と恋愛関係など妄想だということか。

しかし、「アルフォンソとエストレッラ」も、
和解の物語であった。
それにしても、「アルフォンソ」と比べ、
何と、複雑な筋になっていることであろうか。
こんな侍女が出て来てアドバイスするというのは、
ドニゼッティなどとそっくりである。

この歌劇が、救出劇だとすると、救出するのは、
このフロリンダである。
とすると、かなり重要な役柄。

ようやくプリュマッヒャーの声が聴けるが、
エンマの声よりも、すこし力が弱い感じ。

Track12.ボーラント、エギンハルト、
フロリンダ、マラゴンド、ブルタモンテ。
第10曲「不実なフランクの悪者に」

これは、イスラムの王、
ボーラントの前に突き出されたエギンハルトが、
王の息子、フィエラブラスが、自分のせいで、
捉えられていると打ち明けたがゆえに、
王様が怒り狂うシーンであるが、
王様は、最初、口火を切るだけで、
後は、五重唱になって、立体的なアンサンブルを聴かせる。
管弦楽はオルガンのような響きを再現し、
独特の効果を上げている。

ここで現れるブルタモンテは、イスラムの指揮官で、
「不実な悪者に天罰を」と叫んでいる。

Track13.合唱。
第11曲「偉大な天がこの土地に」

平和の使者として、
フランク王国の騎士たちが現れる行進曲である。
「天からの最高の授かりもの、
それは平和の神聖な絆」と、
喜ばしい合唱が響く。

Track14.ボーラント、合唱、ローラント、フロリンダ。
第12曲「お前たちの死をもって償うのだ」

せっかく平和の歌が歌われたのに、
ローラントは、何故か、余計な事を言って、
台無しにしてしまう。
フィエラブラスは、改宗しようとしている、
などと言えば、父親が怒り狂うのもおかしくはない。

それでも、ローラントは、
「命に執着しないのが勇敢な騎士だ」とか、
偉そうなことを言うので、
フロリンダは、やきもきして、
「ああ、彼を危機からお守り下さい」と歌い、
ボーラントは、
「いけ、恐ろしい牢獄へ」などと叫んでいる。
非常に複雑な楽曲が並び、
シューベルトの筆が冴えている。

Track15.フロリンダ。
第13曲「不安に満ちたこの胸に」

騎士たちが牢獄に連れていかれたので、
ものすごい管弦楽の爆発をバックに、
苦悩したフロリンダが、絶叫したような歌を聴かせる。

言うなれば、狂乱の場みたいなもので、
「苦境に襲われ、
乙女の優しい心は粉々になってしまった」と、
シューベルトらしからぬ表現が聴かれる。

Track16.フロリンダ、ローラント。
第15曲A途中「彼はどこ?死の恐怖にも負けず」

かなりのカットがあるが、
続いて、フロリンダの絶叫。
今度は、ローラント救出に塔の中に入って行くシーン。
オーケストラの多彩な効果は、
素晴らしい効果を発揮する。
ローラントと出会って気絶したり、
気絶から回復したりする。

Track17.フロリンダ、ローラント、合唱。
第15曲B「墓に入る直前に」

これは、死を覚悟した二人の
美しい愛のデュエットである。

「死の苦しみが軽くなった、
愛しい人の口から命が湧き上がった」と歌い、
合唱は「彼等の美しい心の絆に栄えあれ」と祝福する。
管弦楽の楽器が一斉に花開いて、
一緒になって、この状況を祝福している。
これは素晴らしい音楽だ。

この後、第2幕は、敵に包囲されたり戦闘があったりと、
いろいろあるが、ここでは、すべて省略されている。

「第3幕:
シャルルマーニュの城。
エンマはその間、エギンハルトとの経緯を告白する。
エギンハルトが、仲間が危ないことを報告すべく戻って来ると、
彼は、その愛の破綻を贖うように彼等を解放するべく送り出される。
フィエラブラスが同行する。
ちょうど、ローラントが処刑される寸前で、
騎士たちが到着し、イスラムの王はすべてを許し、
祝宴となる。」

このCDでは、ここから、3曲が選ばれている。
エンマの話が解説では出て来るが、
そのあたりはすべて省略されている。

Track18.フロリンダ、合唱。
第21曲A「悲嘆に暮れた激しい苦悩が」

ここは第2幕と同様、塔の中で、フロリンダは、
死を覚悟しながら、「愛しい人の命と共に、
私の命も消えていく」と歌い、
合唱は、「まだ希望がある」と、エギンハルトに期待をかける。

このソプラノ付き男声合唱曲もなかなか聴き応えがある。

この曲は、1835年に初演されて以来、
高く評価されていた部分のようで、
翌年にも再演されている。

Track19.ボーラント、合唱。
第22曲途中「死を与えよ」

恐怖の火刑台が作られ、
ボーラントは、「フランクの傲慢なものらは、
地獄に落ちよ」と歌い、
「すべての罪は血で贖え」と合唱が唱和する。

Track20.全員。
第23曲C「さあ、長く待ち焦がれた幸せを喜ぶがいい」

ここでは、フランクのカール帝が登場し、
戦いに勝利したことを宣言し、
イスラムの王に向かって、
「もはや反目する理由はない」と和平を申し出る。
後は、エギンハルトも許されて、大団円へといたる。

この部分も、1835年に初演されたらしい。

このように、かなり割愛されていて、
このCDだけでは、
「フィエラブラス」の全貌が明らかになるわけではないが、
筋も整理され、音楽がさらに進化していることも分かって、
まずは、入門盤の働きはしていると考えて良い。

得られた事:「シューベルトの『フィエラブラス』は、救済シーンあり、気絶シーンありで、牧歌的な『アルフォンソとエストレッラ』よりも、ずっと時代の聴衆に近づいている。」
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by franz310 | 2011-04-03 18:01 | シューベルト
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