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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その250

b0083728_22421538.jpg個人的経験:
前回聴いた、
プルトニョフらによる、
グリンカの室内楽、
今回は、残りの、
いささか奇妙な2曲について、
耳を澄ませてみよう。
先のCDにも収録されていたが、
このポリムニア・アンサンブルの
CDにも入っているので、
聞き比べも出来る。


「ロシアの室内楽の贈り物」と題された、
ポリムニア・アンサンブルのCDは、
このイタリアのアンサンブルが、
1999年1月13日、ロシア新年を祝う形で、
ロシア大使の邸宅にて演奏した、
ロシアの作曲家による室内楽のアンソロジーの
ライブ録音である。

つまり、イタリアに渡って、
美しい室内楽を残したグリンカへの、
イタリア側からの心温まる返礼を思わせる録音だ。

ここに収められた曲目は、
グリンカのベッリーニ奇想曲15分、
チャイコフスキーのハープ五重奏曲3分半
グリンカのドニゼッティ・セレナード21分半
グラズノフの「東洋の夢想」8分
バラキレフの八重奏曲11分、
ボロディンの「スペインのセレナード」2分半
というもので、グリンカだけを取り上げたものではない。

ただし、多くは小品で、
グリンカの2作品だけが際だって長い。

沢山の演奏家が並んだ写真を見ながら考えた。

これらの曲目を演奏するには、
ピアノ1、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、
チェロ1、コントラバス1、ハープ1、
フルート1、オーボエ1、
ファゴット1、ホルン1、クラリネット1と、
全員で12人必要。
管楽器では持ち替える人もいるのだろう。

ロシア大使が退屈しないように、
様々な編成が取られている。

そうした環境のせいか、何だか豪勢な室内であり、
いささか緊張した面持ちのメンバーは、
かしこまっているようにも見える。

中央には、紅一点で楽器なしの人がいるが、
その横の男性も手持ちぶさたの感じで、
横を向いてしまっている。

彼等は、手に持ちきれない、
ピアノ、ハープ、コントラバス等を担当したのであろう。
などと無責任な事を書くのも、
メンバー表もなく、解説もなく、
ブックレットには、ロシア大使による、
「素晴らしいイタリアのアンサンブルが、
ロシアの音楽を演奏した」みたいな挨拶が、
ちょこっと書かれているだけなのだ。
イタリア語なので、よく分からないが、
ECA(Enrico Castiglione Arts)というレーベルは、
聴いたことがないが、いったい、何を考えて、
このCDを発売したのだろう。

この写真に出ているメンバーは、10人しかいない。
弦楽四重奏分、管楽器もフルート、オーボエ、
クラリネット、ホルンは見える。
ファゴットは不明。

ポリムニア・アンサンブルのホームページを見ると、

「1992年のナポリでデビュー。
定期的に音楽イベント、国際的音楽祭に参加。
1985年以来、
モスクワ音楽院やサンクトペテルブクなど、
定期的にロシアを訪問。
Musikstrasseレーベルのためのロッシーニ、
ドニゼッティ、およびメルカダンテの室内楽。
ブソッティや、クレマンティなどの作曲家が、
その演奏に触発されて作曲している。
2003年以来、子供用音楽祭を運営。
重要なスポンサーのIBMがある。」

ロシアとの繋がりやアメリカの名門企業との繋がりが、
我々を混乱させる。いったい、何者たち?

メンバー表には、
ヴァイオリン:Marco Fiorentini 、Antonio De Secondi
Manfred Croci
ヴィオラ:Gabriele Croci
チェロ:Michelangelo Galeati
コントラバス:Antonio Sciancalepore
オーボエ:Luca Vignali
フルート:Carlo Tamponi
クラリネット:Ugo Gennarini
バスーン:Francesco Bossone
ホルン:Luciano Giuliani
ピアノ:Angela Chiofalo
とある。

ここでもファゴットはいない。
これがないと、グリンカのドニゼッティ・セレナードは、
演奏できないはずなんだが。

表紙中央の女性は、
ピアノのチオファロさんではないかと思われる。
しかし、この表にはハープがなく、
女性の横のそっぽを向いた男性は、
コントラバスのシャンカレポーレ氏であろうか。

さて、この編成なら、シューベルトの「ます」の五重奏曲を
演奏することも可能そうだが、
彼等のホームページのレパートリーには出ていない。

下記のように、ベートーヴェン、モーツァルト、
シュポアの管とのピアノ五重奏や、
モーツァルト、ブラームス、ウェーバーの
クラリネット五重奏のような名品、
シューマンのピアノ五重奏をやっているのに、
シューベルト、ブラームス、フランク、ドヴォルザーク、
ショスタコーヴィチらのピアノ五重奏はやっていない模様。

しかし、さすがイタリア、ドニゼッティやケルビーニ、
レスピーギやカゼッラは、しっかりと押さえている。

彼等のレパートリーの「五重奏曲」の表:
Baerman :Adagio clarinet, 2 violins, viola and cello
Beethoven :Quintet in E flat maj. op. 16
Brahms Quintet in B minor op. 115
Casella Serenade violin, cello, clarinet, bassoon and trumpet
Ciajkovskij Quintet harp and string quartet
Cherubini Quintet 2 violins, viola and 2 cellos
Donizetti Quintet 2 violins, viola, cello and guitar
Dussek Quintet violin, viola, cello, double bass and piano
Glazunov Reverie orientale clarinet and string quartet
Jolivet Chant du Linos flute, violin, viola, cello and harp
Mozart Quintet in A maj.K 581
Mozart Quintet in E flat maj. 452
Respighi Quintet strings quartet and piano
Roussel Serenade flute, violin, viola, cello and harp
Roussel Elpenor flute and string quartet
Schumann Quintet op. 44
Spohr Great Quintet op. 52
Spohr Fantasy and Variations on a Theme by Danzi op. 81
Prokofiev Quintet in G min.
Weber Quintet clarinet and string quartet
Weber Introduction, Theme and Variations

こんな表を眺めているだけで、
様々な想像が去来するので、丸写しにしてしまった。

例えば、チャイコフスキーのハープ五重奏曲は、
このCDでも聴けるが、
いったい、何時、どんな機会に書かれたものなのだろう。
伝記には、ハープと弦楽四重奏の習作が1863年頃にあるが、
これであろうか。
音楽院に入学した将来の大作曲家が、
様々な編成の作品を書いて実験していた時の一つ。

ゆったりした弦楽による序奏から、
後年のチャイコフスキーを彷彿させる、
懐かしい響きが聞き取れ、
ハープの登場は、妖精が現れるかのように美しい。
それにしても、いったい、誰がハープを弾いたのだろう。
が、やはり習作だけあって、特に何も起こらぬ前に消えてしまう。

また、五重奏からは離れるが、
最後に収められたボロディンの弦楽四重奏、
「スペイン風セレナード」が、
これより短い2分半の作品。

だが、これは、習作ではない。
有名な第2番の5年後に書かれている。
機会音楽で、ある音楽会のために書かれたらしく、
単純ながら、何だか、不思議な情緒を湛えた作品。
スペイン風かどうか分からないが、
妙にほの暗い情感が悩ましい。

あと、7分47秒で後半の始めを飾る、
グラズノフの「東洋的夢想」は、
クラリネットのエキゾチックな音色を活かした、
聴き応えのある小品。
弱音で弦楽四重奏がまさに夢のような儚さを奏でる中、
光が射すようにクラリネットが、
魅惑的な音色を聴かせる。
が、終始、弱音なので、これまた、
何だか分からないまま、終わってしまう。

習作と言えば、バラキレフのピアノ八重奏曲は、
1855年の作品とされるので、10分48秒。
1837年生まれの作曲家にしては若書きと言えるだろう。
これは、しかし、なかなか興味深い作品で、
シュポア風のピアノの名技が目を眩ませるし、
中間で出てくる主題は、懐かしさいっぱいで、
いかにもロシア的なオリエンタリズムを感じさせるものである。

バラキレフというと、チャイコフスキーに、
交響曲を書け書け、とせかしていた人、
という感じばかりがあるが、
自身、すぐれた音楽を書いていたのである。

バラキレフでは室内楽というのは珍しく、
この曲もピアノ協奏曲風である。
そうした珍しいレパートリーが、このCDでは聴ける。
このアルバムでは最大編成で、ロシア大使の家に、
音があふれ出したことであろう。

一応、このポリムニア・アンサンブル、
こうした弦、管の混成を得意としていて、
管楽を駆使したシューベルトの「八重奏曲」は、
彼等のレパートリーに入っている。
シューベルトが嫌いというわけではなさそうだ。

彼等のCDは、アゴラレーベルから主に出ていて、
このECAのものは一つしかない。

以上、書いて来たように、このCDでは、
グリンカは全体の6、7割を占める重要度ながら、
解説が皆無なので、前回の解説を流用して、
グリンカ作品を聴いてみよう。

ここには、グリンカのイタリアでの、
様々なアバンチュールに関する逸話が書かれていて、
非常に興味をそそられる。

「イタリアにいた間、
彼は1832年にはミラノ滞在した。
二年前に、この地に来た時は、
フランチェスコ・バジーリに学んだ対位法は、
彼には無味乾燥に思われ、場所を移したのだった。
彼のミラノへの帰還は、
『女を捜せ(事件の影に女あり)』によるものか、
あるいは、この際、女を捜したのか、
二人の愉快なレディーたちが、彼をそこに引き寄せた。
彼女たちは非常に音楽的で、
それゆえに彼の音楽能力を刺激した。」

しかも、この女性(たち)の影が、
これらの音楽に投影されているとすれば、
これらの作品を聴く時にも覚悟がいる。
はたして、どんな影が見えて来るのだろうか。

「彼の音楽、特に、室内楽シリーズは、
この年を通じて、絶え間ない流れとなった。
特に、興味深いのは、通常とは異なる編成、
ピアノ、ハープ、バスーン、ホルン、ヴィオラ、
チェロとダブルベースのために書かれた、
ドニゼッティのオペラ、
『アンナ・ボレーナ』の主題によるセレナーデと、
ピアノと弦楽五重奏曲のために書かれた、
ベッリーニのオペラ『夢遊病の女』の主題による、
華麗なる喜遊曲、そして、
ピアノと弦楽五重奏のための、
大六重奏曲変ホ長調である。」

怪しげに書かれていたので、
何だか、ヤバい筋の女性かと思ってしまったが、
下記を見ると、かなり良いお宅の子女という感じだ。
グリンカ自身、良家の子息であるから、
当然の成り行きなのかもしれないが。

「1832年の春に書かれた、
『アンナ・ボレーナ』セレナーデの作曲について言えば、
どうして、弁護士のブランカ一家、
特に、その娘で、
それぞれピアノとハープの優れた演奏家であった、
シリラとエミーリアと知己を得たか
についてグリンカは説明している。
また、このことが、
この曲の通常と異なる楽器編成となった理由である。
『仕上げのリハーサルで、
この曲は非常にうまく行った。
各楽器は、スカラ座の最高の奏者が受け持った。
有名なローラによって、
ヴィオラソロが演奏されたのを初めて聴いた時、
私は感激して涙した。』」

見えて来たのは、怪しい妖女の影ではなく、
ロシアの貴公子にふさわしいイタリアの令嬢たちの影であった。
しかし、ピアノとハープが掛け合う音楽とは、
何と、上品なイメージであろうか。
グリンカは、いったい、どちらの娘が気に入っていたのだろう。

では、この優美な作品、
ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」の主題による、
セレナードを聴いてみよう。

この曲は、ポリムニア・アンサンブル盤では3曲目に、
ロシア国立交響楽団の独奏者たちの盤では、
2曲目に収録されている。

こう書いて、妙な感慨に耽ってしまった。
つまり、作曲した側の国の演奏も、
作曲された側の国の演奏も聴けるということ。
両国の音楽家たちが、
これらの音楽を大事にしている感じが、
妙に微笑ましいではないか。

私は、ハープの分散和音に続いて響く、
ピアノの音色が金属的に響いて、
芯があるような、ロシア勢の演奏に、
何となく惹かれているが、
音のブレンドや、ムードを重視した、
イタリア勢を悪く言うつもりもない。

グリンカも半分プロで、
半分アマチュアのようなメンバーの演奏を、
想定して書いたに相違ない。

「このセレナーデは、序奏と6つのセクションが、
切れ目なく演奏される。
ほとんどの主題はオペラのタイトルロールの音楽から取られ、
序奏の後、第1幕の『カヴァティーナ』の楽想を、
ピアノとハープが奏で出す。
(カヴァティーナからの他のモチーフは、
モデラートセクションの二つの変奏で使われる。)
ラルゲットは、第2幕の三重唱から主題が取られ、
プレストはエンリコの『Salira d'Inghilterra sul trono』からのもの。
アンダンテ・カンタービレでは、
第2幕のアンナのカヴァティーナが聞こえ、
終曲はオペラの様々な主題を含んでいる。」

この曲のもととなった、
「アンナ・ボレーナ」とは、
イギリスのヘンリー八世の妃で、
不倫の罪を着せられ、
ロンドン塔で斬首された王妃、
アン・ブーリン(エリザベス一世の母)の事で、
上記史実をモデルにしたものである。

上記エンリコは、ヘンリー八世、
つまりアン王妃の夫で、彼女を死に追いやる人である。

第1幕のカヴァティーナとは、
アンナが、自分の地位の儚さを歌うもの、
こういう歌であるから、
おのずから、しっとりしたものである。
が、管楽器の七色に変化する音色や、
曲想のしっとりした微妙な移ろいは、
グリンカならではのものだ。
第2幕の三重唱とは、
王妃アンナ、王エンリコと、
彼女を愛するパーシイによるもので、
このメンバーから分かるとおり、
かなりヤバいシーンである。
アンナは、すでに罪人として扱われている。

エンリコの『Salira d'Inghilterra sul trono』は、
別の者が王妃になると王が歌う部分の歌詞であるが、
アンナを打ちのめすかなり威勢の良い曲想のもの。

第2幕のアンナのカヴァティーナとは、
このオペラでは特に有名なもので、
すでに罪を着せられたアンナが、
「懐かしい故郷のお城」と幼い日を回想するもの。

このように、ほとんどそのまま、
ドニゼッティの主題が利用されているが、
この夢幻の色調を誇る楽器編成で演奏された方が、
私には、ずっと美しく感じられた。

令嬢たちが奏で合ったピアノとハープを支え、
その他の楽器たちが、花道を用意していくような音楽。
ぴちぴちと跳ね回るピアノとハープは、
シューベルトの「ます」の幸福感を放ち、
至福の時を繰り広げていく。
このような音楽を作ってもらって、
それが、作曲家自身を感涙させる程、
効果的に演奏されたとすれば、
人生最高の時になったかもしれない。

しかし、筋書きやモデルとなった史実を見ても、
陰惨を極め、まともなものではない。
これから、令嬢たちの夢を紡ぎ出すとは、
いったいなんたるこっちゃ。

そんな夢も希望もなく、
怪しい陰謀を張り巡らせた悪が勝ち、
誰も彼もが情念をぶつけ合うものから、
こうした、幸福感に溢れた室内楽を書く、
ということはいったいどういった事なのだろうか。
換骨奪胎も良いところだ。

かなり、音楽というものに割り切りが出来ないと、
とても出来ない仕事であろう。

とはいえ、こうした仕事が求められた事も事実で、
ベートーヴェンですら、多くの変奏曲を残している。

シューベルトは、ロッシーニの音楽に心酔しながらも、
それをそのまま、売れる形態にするような事はなかったが、
何故だったのだろうか。

それとは違う切り口で、
グリンカの楽器活用の才能こそが、
それ程、秀でていたと言ってもいいのかもしれないが。

もし、シューベルトが、同様の仕事をしていれば、
下記のように、次々と仕事が舞い込み、
もっと楽な生活が出来たかもしれない、
などと空想する解説が続く。

「オペラをポピュラーにするため、
(今日ならCDに録音されるのだろうが)
当時、こうした楽曲は非常に重宝された。
有名なミラノの楽譜出版者、リコルディは、
このセレナーデを出版することをすぐに決定、
これが同様のジャンルの作品を書くことを、
グリンカに、自然に駆り立てたのかもしれない。
『華麗な喜遊曲』は、同様に1832年の春に書かれ、
もっと通常編成にて楽譜にされた。
ピアノとダブルベースを含む弦楽五重奏である。」

とはいいながら、グリンカ自身、これ以後、
こうした作品を書いていないので、
あるいは、まっとうな、
志高い作曲家の仕事とは考えなかったとも考えられる。

また、グリンカの色男ぶりは、
次の作品が、別の演奏家、
というか女性を想定している点からも見て取れよう。

「グリンカは書いている。
『この作品は、若い学生、ポリーニ嬢に捧げられた。
彼女は、ミラノの芸術家仲間の前で、
この曲を素晴らしく演奏した。』
この曲のピアノパートは非常に困難なもので、
我々は、書かれたとおり、ポリーニ嬢は、
名手だったと信じることが出来る。
この場合もまた、ほとんどの材料は、
タイトルロールと、オペラの最も劇的な場面から来ているが、
前の作品よりラプソディックではない。
序奏を除くと、この作品は4つの部分からなっている。
最も印象的なのは終曲で、
名技的な6/8拍子、
変イ長調のヴィヴァーチェで、
まさにタイトルのとおり華麗なもので、
グリンカの技法の、
長足の進歩を開陳している。」

この作品は、ロシア勢の盤では、
作曲された順なので、
ドニゼッティの主題によるものに続き、
3曲目に入っているが、
イタリア勢はCDの最初に入れている。

もの思いにふけるような序奏から、
当時の上流階級の夢を伝えて止まない。

こちらの曲は、シューベルトの「ます」に、
編成もそっくりで、ヴァイオリンが一つ多いだけである。
コントラバスを含むということで、
独墺圏の大作曲家によって書かれれば、
かなり大騒ぎされるはずのもの。

が、ピアノの名技性が前面にでて、
ピアノ協奏曲的であって、
ピアノ以外が弦だけということもあって、
前の作品ほど、色彩的ではない。

解説が特筆したように、
終曲だけが優れているわけではない。

管楽器の七色の音色がなくなったとはいえ、
途中、内省的とも聞こえる、夢想的、
あるいは焦燥感溢れる部分も登場する。

スケルツォ的に敏捷な部分もあって、
連続して演奏される
かなり変化に富む作品である。

が、原曲が、別の作曲家の作品である点を忘れるところだった。
そう考えると、グリンカ自身も、感涙にむせびながらも、
この美しさが、自分の実力かどうか、自問自答する一瞬が、
あったかもしれない。

その点、他の作品を引用するにせよ、
自作を引用したシューベルトは正解であった。
それにしても、他の作品を引用して、
室内楽を作るということは、
シューベルトの場合では特筆されているが、
こうしたケースではごく普通であったわけだ。

さて、解説の人が書いているように、
最後の部分は、ピアノが縦横に駆け巡って、
めざましい効果を上げるが、
ロシア勢の演奏の方が華麗である。

ポリムニア・アンサンブルのものは、
ライブらしく盛大な拍手こそあるが、
やはり、大使宅での社交の機会という雰囲気があって、
それほどの大演奏とも思えない。
が、こんな感じで、初演のポリーニ嬢も演奏したのではないだろうか。

得られた事:「グリンカの室内楽には、当時の上流階級の才女の影がちらつき、彼女らの夢見た幸福が見え隠れするようである。」
「が、こうした作品を書いて感涙するほどに、原曲が別にあるというジレンマを、グリンカは感じたのではなかろうか。」
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by franz310 | 2010-11-06 22:42 | 音楽
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