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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その10

b0083728_1056964.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
I君は、わざわざお父さんのコレクションから、
私の好きなシューベルトを発見して、
持ってきてくれたが、
N君の場合は、少し違った。

(I君の場合、発見というか、
どうやら、お父さんがそれを購入する時に、
一緒に居合わせたような話だったかもしれない。)

私が、彼の家に遊びに行った時のことである。
彼のお母さんが、
「影響を受けて、いろいろ集めているから、見てやって」
などと言ってくれたので、是非、見せてくれと言うと、
彼は、ステレオの回りの引き出しなどを開いてくれた。
ようやく、その時のがさ入れによって初めて、
彼もまた、「ます」のミュージックテープを持っていることが発覚した。
「えっ、持ってたの」と私は叫んだが、彼は照れたような、
それがどうした、というな何とも言えぬ表情をしていたのが忘れられない。

しかも、I君の場合と同様、ヘブラーのピアノ、ヴァイオリンはグリュミオーという、
豪華メンバーのものだった。

私は、さっそく聞かせてもらったのだが、
この二人以外の名前しか知らなかったせいだろうか、
どうも、ヴァイオリンの音ばかりが気になって、
この曲の多彩さが失われているような気がして、満足できなかった。

その時のジャケットがどんなデザインだったか忘れてしまったが、
繰り返しLPで再発売もされたし、CD化もされて、このことからも、
やはり、フィリップス・レーベルにとって、
誇るべき名手たちの演奏であることが分かる。
実は、アムステルダム五重奏団も、
フィリップス・レーベルのアーティストであるが、
どのような紹介をされていたかは、前述のとおりである。

私は、グリュミオーのヴァイオリンは好きなので、
ひょっとしたら、中学生の頃の印象は、間違っていたかもしれないと思い、
CD化されたもの(輸入盤)を買ってしまった。

しかし、印象は同じである、ということと同時に、
この曲は、ヴィオラとチェロが重要であることがわかってきた。

やはり、ヴィオラはシューベルトがよくした楽器だし、
チェロは、この曲を依頼したパウムガルトナー氏の演奏する楽器である。
十全に書き込まれていると見て良いだろう。

聞き比べてみると、ここぞと、ヴィオラやチェロが浮かび上がって来て、
コントラバスもしっかりと低音を支えている、という点で、
アムステルダム盤は数等優れている。
ヴァイオリンの音色に落ち着いた渋みがあって、
極めて他の楽器と溶け合っているところが好ましい。

グリュミオーは、興奮して、美しいメロディを、
1人陶酔して追い続けているといった風情で、
その水も滴る美音によって、完全に他の楽器を圧してしまっている。
さあ、出て来いと、私がスピーカーの前で応援してみても、
チェロはすぐに発言をやめてしまう。
まったく、楽器と楽器の掛け合い、対話が成り立っていないではないか。

また、ジャケットのデザインはいかがだろうか。
これなら、初心者でも、おそらく間違ったりせずに、
「これは、まさしく『ます』のレコードに違いない」
と安心できるものだ。
だが、ここから、聴衆がどのようなイマジネーションを膨らませるかは疑問である。

解説を読むと、まず、シューベルトはよく、自作の歌曲のメロディを、
器楽曲に応用した旨が概説されていて、「ます」という名称の由来に触れている。

あと、シューベルトの旅の産物であることは押さえられていて、
コントラバスの使用は、その場所の都合ではないか、と書いている。
きれいな場所だったとも、歓迎されたとも、書かれておらず、
美しい娘たちと会ったことは言及される余地もない。

次に、楽章構成の解説に入るが、
シンメトリーの構成になっているというのが、
目新しい着眼点である。
つまり、外側の楽章は早く、ハンガリー的な色彩を持っていること、
真ん中の楽章をはさんで、第二、第四楽章が、ゆっくりとした音楽になっている、
と指摘している。

こう書かれてみると、グリュミオー盤とアムステルダム盤の違いは明白である。
というのは、どの楽章もグリュミオーは早い。
したがって、彼の流麗なヴァイオリンは、いっそうひき立つテンポが取られているとも言えよう。

アムステルダム盤は、特に第二楽章が、停止寸前のスローテンポで、
思慮深いシューベルトの内面を強調したような切り口を見せている。
これは、特筆すべき事である。
こういったところに、私は共感していた可能性が高い。

最後に、この解説では、
快活な雰囲気で、ピアノと弦楽器たちが対話するところが、
この曲の特徴だと書かれているが、
残念ながら、stringsではなく、a string が1人で興奮して、
ここに書かれている魅力には繋がっていない。
だが、ヴァイオリンの音色に酔いたい方には、
息もつかずに紡ぎ出される、素晴らしい美音が保障されている。

演奏がどうだ、という解説はここには書かれていないし、
演奏者が何者かについても、書かれていないが、作曲家と、
ピアノのヘブラーの肖像があしらわれているのは好感が持てる。

なお、英・仏・独・伊と、多言語対応がなされており、
英語と、ドイツ語では別の事が書いてある。
どうやら、独語の方には、パウムガルトナー氏の事や、
もう少し具体的な事が書かれているようだ。


導かれる事:「レコード会社が大事にしている演奏家が、必ずしも、私たちを大事にしてくれるとは限らない。」
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by franz310 | 2006-04-30 11:09 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その9

b0083728_1119720.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
さて、先の、美しい緑色のジャケット。
ギレリスのピアノ、
アマデウス四重奏団員ほかの演奏による
輸入CDの解説はどうだろうか。




ここでは、まず、シューベルトが幼い頃から、
家庭や学校での内輪なアンサンブルのために、
早くから作曲を始めて、
やがて、教会や劇場のための音楽に手を広げ、
「未完成」、「大ハ長調」といった交響曲のような、
荘厳な音楽を作るに至った点が概説されている。

さらに、友人たちのサークルの延長として、
上部オーストリアのシュタイアーで、
素晴らしい風景、心地よい交友関係、
美しい娘たちに囲まれて、幸福な日々を過ごしたことが、
きちんと書かれている。

パウムガルトナー氏が好きだった、歌曲「ます」の主題を持つ変奏曲。
これを通常の4楽章形式の室内楽の形式に挿入したがために、
計5楽章という珍しい構成になったと解釈されている。
また、コントラバスの追加については、
3つのヴァイオリンとコントラバス+ツィンバロンによる、
ハンガリーの村のバンドの影響を掲げているのが具体的である。

ここでも、パウムガルトナー氏の自宅の一部が音楽愛好家のために、
開放されていたことが、言及されている。
(ただし、音楽家の肖像画が掲げられていたとまでは、書かれていない。)

各楽章の解説はないが、
シューベルトの音楽形成や、この曲が成立した背景について、
詳細に記述してあるのは好ましい。

やはり、この山間の町の素晴らしさを、
シューベルトの言葉どおりに称えるのが常道であろう。
「言語に絶するほどに美しい」と。

ちなみに、パウムガルトナー氏のプライベートにまで立ち入った、
元ネタを提供したのは、シューベルトの友人のシュタドラーである。

彼は作曲家を回想した手紙の中で、
パウムガルトナー氏のところで過ごしたひとときについて記述し、
この人が、自分の父親の友人であったことに加え、
「全く完全な意味において音楽家たちのパトロンでした」
と激賞してもいるのである。
また、そこでは、この人が、財産がありながら結婚せず、
たった一人で3階建?の家に住んでいたことをも報告している。

それによると、
「2階に装飾のみごとな専用の音楽室があった」、
「3階には芸術の寓意画で飾られたサロンがあり、
大人数のコンサートパーティに使われた」
と書かれている。

まさしく、私たちは、パウムガルトナー氏に感謝しなければならないのだ。
彼がいなければ、美しいシュタイアーの町で、
我らが作曲家を歓待しなかったなら、
この名曲が、どうして生まれえたであろうか。

あと、このグラモフォン盤には、演奏者については、ノーコメントである。
シューベルトの肖像画は、なかなか迫力がある。

導かれたこと:「名曲が生み出されるのは、音楽愛好家の存在あってこそである。」
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by franz310 | 2006-04-29 13:20 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その8

b0083728_2133952.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
22歳のシューベルトが、友人と旅に出た。
美しい自然、眩しい夏の日差しの中で、
緑の木陰に憩い、清冽な水の流れに霊感を得た。

こんな雰囲気が伝わってくるデザインといえば、
ギレリスがピアノを弾いたレコードを思い出す。

確か、中学3年の夏休み前のこと。
I君が貸してくれたミュージック・テープがこれだった。
夏の日差しの下、ドイツ・グラモフォンの威光を放つ
イエローレーベルが、燦然と輝いていた。

私は何かといえば、音楽の話をし、
音楽と言えばシューベルトだったので、
彼は、自分の父親のコレクションの中に、
シューベルトを見つけて、すぐにこれを貸してくれたのである。
(ただし、彼はこの曲の曲名までは知らなかった。)

実は、私は、休みの日に彼の家に遊びに行った時、
お父さんのコレクションを見せていただき、
直接、フランクの交響曲(カラヤン盤)をお借りしたこともあった。
それは、とても印象的な音楽で、自分でもほしくなって、
同じものをすぐ購入してしまった、ということも思い出される。

一方、このシューベルトのレコードは出たばかりであった。
私は、こんなに豊かな緑の川辺を見たことがなかった。
私の持っていたアムステルダム五重奏団のテープにあしらわれた風景写真も、
緑の中の光と影、そして水の流れが、無限の憧れを想起せしめたが、
全面緑一色のような、ギレリス盤のイメージは強烈だった。

しかも、一級の名ピアニストが、これまた第一級のアンサンブルたる、
アマデウス四重奏団と競演した最新録音とくれば、
これはもはや垂涎の一品としか言いようがなかった。
さらに言えば、グラモフォン・レーベルといえば、
わずかながらも競合他社品より高価であり、
小僧が手を出すには、それなりの覚悟を必要とするものだった。

だが、今、改めて眺めなおすと、
この水は穏やかすぎて、中でますが闊達に泳いでいるかどうかは、分からない。
この曲の持つ、自然の生命の躍動感を表わすには、
水しぶきや、さざなみなど、動的な要素が欲しいところである。
とはいえ、高校受験を前にした中学生には、
この一面緑のじゅうたんのような、満ち足りた世界が、
素晴らしい楽園の形象とも見えたことは確かなのだ。

しかも、実際、あの日の夏の陽光は輝かしく、
山の中腹にあった学校の回りには、豊かな緑が生い茂り、
その夢の世界は、妙に生々しい現実味すら帯びていたのである。

だが、借りてきたものの演奏の方は、私にそれほどの感銘を与えなかった。
生真面目なロシアの巨匠が、丁寧に愛情を込めて演奏しているのだろうが、
ピアノの残響が豊穣すぎるのか、大気の香りが軽やかに立ち上らない。
どうも吹っ切れない。現実のくびきから解放させてくれない演奏だった。
あの風景が、どこまでも静謐なのと似ているとも言えよう。

私は、もうこの曲に飽きてしまい、
この曲の持つ神通力が切れてしまったのかと思って、
しばらく、アムステルダム盤も聴かない方が良いのではないかと思った程であった。

とはいえ、やはり、このデザインの魅力は抗し難い。
CD化されてすぐ購入したのも、同じデザインだったからである。

私は、これを見ているだけで、いろいろな事を思い出す。
学校の帰り道、彼が坂道を下りながら、
ミュージック・テープを貸してくれたあの日。
あの太陽、あの緑、あのレーベル。
そして、いくつかの出会いをもたらしてくれた、
彼のお父さんが、若くして倒れられたことなども。

導かれた事:「レコード芸術は、聴き手の人生をレコードしてようやく完結する。」
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by franz310 | 2006-04-28 22:09 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その7

b0083728_2363686.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
ここで、演奏者の紹介のみならず、
このLPの解説がどのようなものであったか、
改めて検証してみよう。

LPの裏面一面にわたって、
大体三つの部分からなっているが、
この解説者は、
まず、ピアノ五重奏曲という編成について書き連ねている。


シューマン以降、多く書かれた、ピアノ+弦楽四重奏という形ものと異なり、
コントラバスを含み、「音色の対比と、さまざまな変化という点に、大きな重点が置かれている」
という点、そこから生まれる「清新で、はつらつとした活気」に触れているのは、
この作品に対するイマジネーションを膨らませ、非常に好ましい内容となっている。

次に、彼はこの曲の成立について、
「恐らく多くの皆さんが御承知でしょう。」
などと軽く流すような口調ながら、
シューベルトが友人とひと夏をすごしに出かけた町で出会った、
チェロを演奏する、ある音楽パトロンのために、
この曲を書いたことについては、しっかりと記述している。

ただし、欲を言うなら、この町シュタイアーが、
非常に美しい自然に恵まれた町である、
という点については、特に強調して欲しかった。
そうしないと、この曲の各所に散りばめられた、
新鮮な大気の香りが想起されにくいと思う。

また、この曲を作曲した時のシューベルトが、
まだ22歳の青年であったという点も、
その天真爛漫な魅力、あるいは、
デリケートで移ろいやすい感情の起伏を語る上で有効な情報だと思うのだが。

面白いことに、このパトロン、パウムガルトナー氏については、
鉱山業者で、その地方の顔役であって、楽器をたしなむことから、
「自分の家の二階の中央に音楽の部屋を設け、
音楽家たちの肖像を飾り、楽譜の複写や楽器を集めて、
定期的に音楽のサロンを開いていたのです」
と、その家屋に立ち入ってまで、この解説では詳述している。


そして、最後に再び、この解説者は、
何故コントラバスを使っているかという楽器編成の話に戻っている。
彼の結論は、
前年、ハンガリーで聴いたジプシーバンドに、
シューベルトが影響を受けたのであろう、ということだが、
どうも、楽器の選び方が気になって仕方がないみたいだ。
ここではむしろ、パウムガルトナー氏のチェロを際立たせるために、
低音補強用にコントラバスを入れたと書くのが通常のパターンなのだが。

いずれにせよ、通常、ここまで楽器編成が気になる聞き手はいないのではなかろうか。

また、各楽章に関する解説もいっさいなく、それ以上に、五楽章からなる、
ということすら説明なしというのは、やや奇怪と言わざるをえない。
有名な「ます」のメロディが、どこに出てくるかすら言及していない。

しかし、これはこれで、やや偏執狂的だが、特徴のある見地から語られていて、
なかなか得がたい解説といえるだろう。
私は、改めてパウムガルトナー氏の存在に興味を感じてしまった。
最後に、
「聴くものに、明るく、さわやかな魅力を、
いっぱいにまきちらすのです」
と結んでいるあたりも、
どれどれ、と聴衆の傾聴を促して好感が持てる。

ただし、ただの能天気なお気楽音楽でない点は、
私なら触れてみたいところである。

あと、わざわざ図版として、シューベルトの肖像があるのは親切。
この作曲家は、いったいどんな人だったのだろう、
と空想を膨らませることができるから。


導かれた事:「解説もまた、レコード芸術を味わう上での重要な一要素として評価されるべきである。」
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by franz310 | 2006-04-26 23:07 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その6

b0083728_21594614.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
実は、CD時代になってからも、
中学時代の友人たちが持っていたレコードを見つけては、
当時の判断が正しかったかどうか、
責任感の人一倍強い私は、こっそりと確かめている。
だからこそ、ようやく自信を持って、
「この演奏は良い」、と言えるようになったとも言える。

しかし、みんないいなあ、ちゃんとCDに復刻されるような、
名演奏家たちのレコードだったのだからなあ。

アムステルダム五重奏団なんて、
いまだに正体不明だし、CDなんてないだろうからなあ。

だが、あくなき探究心の勝利か、
最近になって、中古LPで同じ演奏が出ているのを発見した。

おっ、演奏家の解説も出ているぞ。
「演奏をしているアムステルダム五重奏団(これだっ!)は、
ロマン派解釈に定評のあるオランダの最高のピアニストのひとり
(おっ、いいじゃん、いいじゃん)ゲオルゲ・ヴァン・レネッセと、
有名なオランダ弦楽四重奏団(聴いたことないぞ)
の3人のメンバー~ナップ・デ・クリン(ヴァイオリン)
パウル・グッドマン(ヴィオラ)(グッドウィンじゃないのか?)
カレル・ヴァン・レウヴェン・ボームカンプ(チェロ)に、
コントラバスのライオン・グロエンが加わったアンサンブルで、
それぞれ音楽院の教授やオーケストラの楽員としても
ながいキャリアーを持つ人たちです。(えっ、これだけ?)」

この後も続くが、ちょっとねえ。
「アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(確かに)や
ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団(こりゃ、マイナーだぞ)
によっても知られるように、
オランダの演奏水準は非常に高度です。」(終わり?)
これでは、いかにも、
「本場ものじゃないけど、買って損したと思わないでね」、
と言われているような気がするではないか。

あと、ジャケット写真は、
露出のせいか、水の清らかさが感じられないのが気になるぞ。
よく見ると、車が河川敷に停まっているのも興ざめだ。
やはり、運命の出会い!あのフランス製のカバー写真は最高だった!

なんだかんだと言っても、愛着のあるものがよく見えるのであろう。

導かれた事:「名盤は演奏の内容以上に個人的な歴史背景や愛着に影響される。」
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by franz310 | 2006-04-26 22:04 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その5

b0083728_2148690.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
私が初めて入手したシューベルト。
ピアノ五重奏曲イ長調「ます」
の演奏は、本当に素晴らしかった。

唯一の頼りは、あの百科事典。


ここにも、「なかでも第四楽章は親しみやすく、
全曲を通して最大の魅力がある」などと書かれている。
実際は、どの楽章、どのフレーズといえども、
活力と新鮮さに満ちていて、時折、影を落とす、
ナイーブな心理描写も筆舌に尽くしがたいのだが。

テープを裏返して聴き始め、それもだいぶ経過してから、
ようやく、あの懐かしいメロディが聴こえて来た時の感動は、
30年以上が経った今でも、鮮烈に脳裏によみがえってくる。

ここまで書いてしまえば、クラシックが好きな人であれば、
「えっ、誰の演奏?」となるのが、
この種の秘密結社の暗号のようなものであろう。
しかし、私の場合は、小さな声で、
「アムステルダム五重奏団」と答え、
「あまり知られてないけどね」と続けるのが関の山なのだ。

QUINTETTE D'AMSTERDAM

George van Renesse, piano
Nap de Klijn, violon
Paul Godwin, alto
Carel van Leeuwen Boomkamp, violincelle
Lion Groen, conterbasse

どの人の名前も、まともに読めないではないか。

しかし、この演奏が非凡なものであることは、
私が中学を卒業するまでには、幾度にもわたって証明されることとなった。
アンサンブルの妙味といおうか、五つの楽器が、
それぞれの持ち味を出し切って、とてもバランスのよい、
感興の乗った演奏なのである。

私が有力なプロモーターとなって、
学校のあちこちで、この曲の魅力を吹聴して回ったので、
N君もK君も、レコードをちゃっかり購入していたのである。
実はI君も持っていることが判明した。
おそらく、教育的見地からであろう、ほかの品物よりも、
彼らの保護者の財布を緩めるのは容易だったに相違ない。

私は、どれどれ、と彼らの自慢の一品を賞味して歩いた。
そのころまでに、私はアムステルダム五重奏団を、
おそらく100回以上は聞いていたので、
それらの違いはすぐに分かった。
そして、友人たちに、「いい演奏だね」と微笑みながら、
「俺のが一番いいじゃないか。」と心の中でほくそえみ、
「音楽の価値は演奏家の有名度にあらず」と、
いよいよ確信していったのであった。
思想の醸成である。

導かれた事:「名盤は演奏者の知名度にあらず。」
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by franz310 | 2006-04-24 23:07 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その4

b0083728_22345198.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
買ってもらったばかりのラジカセで聴く、
シューベルトの五重奏曲。
いろいろな楽器が、現れては消え、
殺風景であった私の部屋に、
さわやかな緑の風を、運んできた。
果たして、
この35分を要するという大曲の中に、
私のすきなメロディのあの音楽は、
無事、入っているのであろうか。

(後に、ベートーヴェンの「第九」のテープを貰った時は大変だった。
「喜びの歌」のメロディが出てくるまで、
やたら巻き上げや巻き戻し繰り返し、
完全に青ざめてしまった。)

私が始めて買ってもらった本格的なクラシック作品であった、
この、「ます」の五重奏曲の時は、じたばたしないで最初から耳を澄ませて聴いていた。

第四楽章は裏面である。
片面でも20分くらい要するので、
買ってもらったテープを眺めながら、
あれこれ考える時間は、十分すぎるほどにあった。

Made in Franceと印刷があって、タイトルも“La tuite”である。
きっと、英語の辞書にある「trout」に相当するものであろうと、
勝手に自分に言い聞かせてみるしかなかった。
(「Forellen」というドイツ語だったら、絶望していたかもしれない。)

自慢するわけではないが、中の解説はもっとわからない。
しかし、この写真の清流は、明らかに「ます」の泳ぐ川を暗示している・・。
だが、見れば見るほど、この風景も不思議である。

洞窟のようなところに水が入っていくようで、
「ます」ではなくて、地底湖に住む幻の「めくらうなぎ」だったらどうしよう、
などと考えてしまった・・・。

というのは冗談で、こんな所があるんだなあ、どこにあるのかなあ、
行ってみたいなあ、と密かに空想の翼を広げていたのであった。

いずれにせよ、こうした想像に夢を膨らませるのは、
当時の私にとっても、
それを思い出す現在の私にとっても、
素晴らしく有意義な時間だったことだけは確かなのである。

導かれた事:「名盤は、空想を正しく飛躍させるジャケットデザインを有することを特徴とする。」
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by franz310 | 2006-04-23 22:40 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その3

b0083728_21551933.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
さて、この百科事典には、
そうした関係する図版以外にも、
曲や作曲家の解説や、
楽譜、音楽史年表などが載っていた。

ただし、付録のレコードに収められていたのは、
有名な「第四楽章」だけであったから、
「ます」と呼ばれるピアノ五重奏曲の楽曲解説の部分には、
この楽章のみが、下記のごとく、やたら入念に解説されていた。


主題 まず、バイオリンが有名な主題を美しく歌います。

第1変奏 ピアノが主題をきれいに歌い、
バイオリンとビオラがこれを美しくかざります。
すんだ川で「ます」がぴちぴちととびはねて、
楽しく遊んでいるようです。

第2変奏 ビオラに主題がうつり、ピアノがそれをたすけます。
バイオリンはたいへんはたいへん美しく効果的に主題をかざって演奏します。

第3変奏 チェロとダブルベースに主題がうつり、
元気な大きい「ます」がからだを光らせてとびはねているようです。
それにピアノがめざましく活やくし、
小さい「ます」の群れがいっしょになってたわむれているようです。
(このあたりになると、恐ろしい想像力になってくる。)

第4変奏 短調に転調します。
はげしい和声的なひびきは、「ます」の苦痛をうったえているようです。
(ここで死んだら、あとは「ます」の幽霊が泳ぎつづけるのだろうか?)

・ ・という具合である。


一方、私が入手したばかりのテープの方を見ると、

Face 1:
1. Allegro vivace
2. Andante

Face 2:
3. Scherzo(Presto)
4. Tema con variazioni(Andantino)
5. Finale(Allegro giusto)

などと、おまじないみたいな5つの数字と、アルファベットが並んでいるではないか。

ややこしいことに、有名な第四楽章は、
ちょうど5つの変奏曲からなっているとされ、
(たまに6つの変奏と解説されることもあるが、通常、5つの変奏+コーダと解釈される。)
本の方には、それがやたら強調されて詳述されていたので、
(変奏曲とはかくの如きものである、という啓蒙の役割を兼ねていたから。)
「楽章」と「変奏」の違いもおぼつかない私は心配で、
裏面の途中に、本当にあの大好きなメロディが出てくるか心配で仕方がなかった。

また、不思議なことに、百科辞典をいくら眺めても、
全部で5つの楽章を有するなどとは、どこにも書かれていなかった。
「第一楽章から全曲をとおして演奏すると35分くらいかかる大曲」
と説明されていたから、
「子供は、これ以上知らなくて良いから、この楽章のみをじっくり味わいなさい」、
という乗りだったのかもしれない。

ただ、私は、全曲を通じ、この解説の擬人法(擬魚法)を真似て、
ああ、今、ますが緑の木陰の下を通り過ぎたような気がした、
どうも、このあたりの水は、深く冷たそうだぞ、
などと、勝手なお話を作って楽しんでいた。

うまい具合に、この曲は、どの部分をとっても、
自然の中での、爽やかな大気の呼吸に息づいており、
うす暗い演奏会場で弾かれる音楽とは、
一線を画する輝きを誇っているのである。

しかし、考えてみれば、CDの時代だと、
好きなところだけ、つまみ食いするような鑑賞が、
ずっと容易になっているのではないか。
ひょっとすると、私がカセットテープなどで音楽を聴いていなかったなら、
この曲の隅々までを味わい尽くすことはできなかったかもしれない。

導かれた事:「小さな疑問を積み重ね、大きな想像力の起爆剤とせよ。」
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by franz310 | 2006-04-23 20:57 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その2

b0083728_21521816.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
シューベルト作曲 ピアノ五重奏曲「ます」。
何故、私がそのような曲名を知っていたかと言えば、
学研の「原色学習図解百科」というものが家にあって、
これの第9巻が「楽しい音楽と鑑賞」という音楽特集で、
そこにレコードまで付いていたからである。

この百科事典は、
私が小学校に入った時に母が買ってくれたもので、
その他にも、サン=サーンスの「白鳥」や、
ドビュッシーの「月の光」など20曲ほどが収められていた。

私は時折、これらを聴いて楽しんでいたが、
引越しの時にレコードプレーヤーは置いてきていたので、
この本の方だけを眺めては、あの音楽が聴きたいなあ、
と想うことがあった。

20曲ほどの曲目のうち、3曲がシューベルトである。
歌曲「菩提樹」や「野ばら」もまた、シューベルトの名作として紹介されていた。
だから、この作曲家の名前は染み付いていたし、
ウィーンで生まれ、少年合唱団で活躍し、
数多くの歌を作って、「歌曲王」となったことも頭の中のどこかに残っていた。

また、そこには、「『ます』をあらわした噴水の彫刻」などと注記され、
作者も、また、どこにあるかさえも分からぬ彫刻の写真が掲載されていた。
その乙女が、
「早く聴いてちょうだい」とばかりに物憂げな表情であったのが忘れられない。


導かれた事:「撒かれたタネが芽吹くのには、妄想の手助けを要する。」
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by franz310 | 2006-04-23 15:17 | 音楽

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「「ます」、その1

b0083728_22361462.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
30年以上も前のお話。

名曲・名盤との出会いを語るには、
そこから、始めなくてはならない。

ネオンの明かり眩しい夜の繁華街を歩くと、
道に面した電気屋のショーウィンドウには、
たくさんのメーカーの、
最新の電気製品がきらきらと輝いていた。

中学生になったばかりの私は、
中学生になったのだからと、
父にラジカセをねだった。
意外にも、父はすぐにそれをOKしてくれた。

ある夕方のこと、
父と私はそれを買いに出かけた。
どの製品も誇らしげに、
金属質のシャープな輝きで、
私たちを出迎えていた。

しばらくは、ラジオを聴いたり、
遊びでテープにそれを録音したりしていたが、
せっかくの機械。それで、ちゃんとした音楽が聴きたくなった。

今度は、私は、父にミュージックテープをねだった。
父は、希望の曲名を尋ねた。
私が知っていた数少ない名曲に、シューベルトの「ます」があった。
それを告げると、その週末には、父はそれを見つけて来た。

私の知っているのは、有名なメロディによる第四楽章だけだったが、
そのテープには、ピアノ五重奏曲の全曲が入っていた。

新しいラジカセにテープを入れた。
蓋を閉めると、メカニズムが噛み合うときの音が、かちゃりとした。
そして、ぐいっとプレイのボタンを押し込む。
緊張の一瞬である。

最初の音がわっと鳴り出した時、期待と不安が入り混じった。
本当にあのメロディは聞こえて来るであろうか?

導かれた事:「音楽体験は、音が鳴り出す前からすでに始まっている。」
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by franz310 | 2006-04-22 20:35 | 音楽