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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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クロメダカちゃん、ベアトリーチェとの別れ

クロメダカちゃん、ベアトリーチェとの別れ_b0083728_233630.jpg
遂に水槽のもとに明らかになった、
「モバイルめだCA計画」。

僕たちの体が、
なんと、電子マネーに使われる計画だったなんて、
今まで、誰も教えてくれなかったぞ。

ということは、この体の中には、
あの忌まわしい垂直磁気記録型のHDDだけでなく、
電子マネーが出たり入ったりするための、
通信手段が入っていることになる。

いったい、どこにそんなものが?

僕は、さっき、なんと金魚の口に、
イヤホンジャックだか、USBのソケットだかを、
取り付けようとした話を聞いたばかりだったので、
慌ててムナビレを口の中、エラの中に突っ込んだり、
セビレ、ハラビレ、シリビレ、オビレ、腰のクビレ、フカヒレなど、
考えられる限りのヒレを悪びれることもなく、くたびれることなく動かしてみたびれ。

どこもかしこも怪しかった。
赤外線通信か、はたまた無線LANの電波なのか。
水中で、そんなものが通用するのだろうか。

それにしても、ちょっとした振動試験で、
みんなの体が持たなかったことは、
これでもう、明々白々ではないか。

あらゆるものを詰め込みながら、
小型軽量を優先させるあまり、
強度偽装を装わなければ、
商品にならなかったということだ。

これは一介の一級建築士の責任だけを問うて済む問題ではない。
旧制ロシアの富豪の未亡人の援助を受けながら、
JR麩菓子日本とか、JR倒壊とかが、社内的に検討しているだけだったなら、
まだ弁明の余地もあったかもしれない。
しかし、政府の機関であるデパ屋総務庁がからんでいたとすれば、
これはスキャンダラスな大問題だ。
そんな危険な試作品を、善良なる民間人に500円で売りつけたのである。

その時、ぴっと青いランプが視界に飛び込んで来た。
僕は驚いて、ムナビレで瞳を覆った。
それでも、光線が、僕の頭の中にじわじわと染み込んでくる。
ああ、これはいったい、どうしたことか。

「ふぉっふぉっふぉっ、好奇心旺盛なクロメダカちゃんに忠告しておこう。
この問題には、これ以上立ち入らないことだ。」

僕の頭の中にがんがんとこだまするのは、
誰あろう、あのデパ屋のペットショップのおっさんの声であった。

その声を聞いて、
一瞬、僕は今までのすべてが夢で、
目が覚めると、あのデパート屋上の水槽の中で、
ヘクトールやアキレウスたちと、元気にぴちぴち泳いでいるような、
そんな錯覚さえ覚えたものだった。

しかし、ろ過フィルターの音がぶくぶくと響いているのは先ほどと変わらない。

深いところでは、ピラニア軍団が、ゆうゆうと回遊しているのも、決して夢ではなかった。
僕は、回りを見回した。その怪光線がどこから来たのかを確かめるために。
そして、いとおしいベアトリーチェの姿を求めて、大きな目をぐるりと動かした。

「ああっ。」
僕は息を呑むしかなかった。
先ほどまで、あんなに優美に泳ぎ回っていたベアトリーチェ。
大切な僕の導き手が、うつろに目を見開いたまま、水面に浮かんでいるのを、
僕は目を見開いて凝視するしかなかった。

僕は彼女のもとに走り寄り、思わずその体をひしと抱き寄せた。
「ク、クロメダカちゃん。
私はもう動けなくなりました。」
「な、何ですって?」

「その高周波・・・。」
「ああ、何があったのです?麗しのベアトリーチェよ。」
「あ、あのオスヒメダカちゃんと同じです。
わ、私たちの体は、あなた方の新型回路が出す、
き、強力な高周波に耐えられるようには設計されていないのです。」
「私の体からの高周波?」
「そ、そうです。つ、通信手段が内蔵されてから、
け、桁外れの処理能力が要求され、あ、あなた方の体からは、
わ、私たち旧型のメダカには耐えられないような、
で、電磁波が、は、発生しているのです。」

僕がさらに近づいたせいでもあろうか、ぴくぴくと痙攣し、
ベアトリーチェは、完全に意識を失い、まさに息を引き取るところであった。

たとえ、銀河鉄道に乗ったとしても、決して、機械の体は欲しがるまいと、
僕はその時、ろ過フィルターのぶくぶくに誓った。
by franz310 | 2006-07-13 00:03 | どじょうちゃん
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