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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その8

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」、その8_b0083728_2133952.jpg個人的経験、演奏、デザイン、解説比較:
22歳のシューベルトが、友人と旅に出た。
美しい自然、眩しい夏の日差しの中で、
緑の木陰に憩い、清冽な水の流れに霊感を得た。

こんな雰囲気が伝わってくるデザインといえば、
ギレリスがピアノを弾いたレコードを思い出す。

確か、中学3年の夏休み前のこと。
I君が貸してくれたミュージック・テープがこれだった。
夏の日差しの下、ドイツ・グラモフォンの威光を放つ
イエローレーベルが、燦然と輝いていた。

私は何かといえば、音楽の話をし、
音楽と言えばシューベルトだったので、
彼は、自分の父親のコレクションの中に、
シューベルトを見つけて、すぐにこれを貸してくれたのである。
(ただし、彼はこの曲の曲名までは知らなかった。)

実は、私は、休みの日に彼の家に遊びに行った時、
お父さんのコレクションを見せていただき、
直接、フランクの交響曲(カラヤン盤)をお借りしたこともあった。
それは、とても印象的な音楽で、自分でもほしくなって、
同じものをすぐ購入してしまった、ということも思い出される。

一方、このシューベルトのレコードは出たばかりであった。
私は、こんなに豊かな緑の川辺を見たことがなかった。
私の持っていたアムステルダム五重奏団のテープにあしらわれた風景写真も、
緑の中の光と影、そして水の流れが、無限の憧れを想起せしめたが、
全面緑一色のような、ギレリス盤のイメージは強烈だった。

しかも、一級の名ピアニストが、これまた第一級のアンサンブルたる、
アマデウス四重奏団と競演した最新録音とくれば、
これはもはや垂涎の一品としか言いようがなかった。
さらに言えば、グラモフォン・レーベルといえば、
わずかながらも競合他社品より高価であり、
小僧が手を出すには、それなりの覚悟を必要とするものだった。

だが、今、改めて眺めなおすと、
この水は穏やかすぎて、中でますが闊達に泳いでいるかどうかは、分からない。
この曲の持つ、自然の生命の躍動感を表わすには、
水しぶきや、さざなみなど、動的な要素が欲しいところである。
とはいえ、高校受験を前にした中学生には、
この一面緑のじゅうたんのような、満ち足りた世界が、
素晴らしい楽園の形象とも見えたことは確かなのだ。

しかも、実際、あの日の夏の陽光は輝かしく、
山の中腹にあった学校の回りには、豊かな緑が生い茂り、
その夢の世界は、妙に生々しい現実味すら帯びていたのである。

だが、借りてきたものの演奏の方は、私にそれほどの感銘を与えなかった。
生真面目なロシアの巨匠が、丁寧に愛情を込めて演奏しているのだろうが、
ピアノの残響が豊穣すぎるのか、大気の香りが軽やかに立ち上らない。
どうも吹っ切れない。現実のくびきから解放させてくれない演奏だった。
あの風景が、どこまでも静謐なのと似ているとも言えよう。

私は、もうこの曲に飽きてしまい、
この曲の持つ神通力が切れてしまったのかと思って、
しばらく、アムステルダム盤も聴かない方が良いのではないかと思った程であった。

とはいえ、やはり、このデザインの魅力は抗し難い。
CD化されてすぐ購入したのも、同じデザインだったからである。

私は、これを見ているだけで、いろいろな事を思い出す。
学校の帰り道、彼が坂道を下りながら、
ミュージック・テープを貸してくれたあの日。
あの太陽、あの緑、あのレーベル。
そして、いくつかの出会いをもたらしてくれた、
彼のお父さんが、若くして倒れられたことなども。

導かれた事:「レコード芸術は、聴き手の人生をレコードしてようやく完結する。」
by franz310 | 2006-04-28 22:09 | 音楽
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