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クラシック音楽への愛と悲しみの日々
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その443

b0083728_19591967.jpg個人的経験:
前回、ジャヌカンの合唱曲を聴き、
その歌詞に出て来る
フランソワ1世とか、
彼と奇妙な外交関係を繰り広げた、
ハプスブルクの傑物、
カール五世とかの関係から、
はるばる遠い西欧史に
思いを馳せてしまった。

そもそも、その戦いの根は深く、
彼らより400年も前に、
その火種があったともいえる。


フランス、ドイツとの関係の祖というか、
それが、実は、イギリス建国のどさくさも、
そこに関与していたなどとは、
まったく予想だにしていなかった。

12世紀、仏北西のアンジュー伯が、
イギリスに植民地を持つ、
ノルマンディー家と婚姻関係となり、
彼らの子息アンリがさらに、
南西フランスに領地を持っていた、
アリエノールと結婚したことで、
イギリス王ヘンリー2世となった。

さらりと書いたが、
イギリスから南仏まで縦断する大帝国である。
当然、フランスは面白くないし、
英国サイドも、自分もまた、
大陸出身の国王だというプライドもあるから、
こいつらはいつまでも戦争をした。
そんな中で出て来たのが、
新興勢力のブルゴーニュ家であって、
これがハプスブルクにもつながる、
といった三つ巴状態となった。

この四百年というのが、
これまた、芸術的には実り豊かで、
どこから手を付けてよいかわからない。
しかし、すべての発端とも見える、
ヘンリー二世の奥方のエピソードなどから、
当時に思いを馳せるのが、
当面、適当なような気もしている。

というのも、
このアリエノールという女性の行動は、
どう見てもありえなーい、
というとんでもないもので、
そんな事をやってのけたのも、
その出身地のみやび故、
などとされているのである。

佐藤賢一著「カペー朝」(講談社現代新書)には、
「アリエノールは南フランスの女である。
陽気な話好きだったというのも、
吟遊詩人が闊歩する華やかな芸術が栄えた、
文化的には先進地帯の生まれだったからである。」
と書かれている。

この女性は、そもそも、
フランス王家に嫁いでいた王妃である。
国王ルイ七世が辛気臭いという事で不仲となり、
さっそうと現れた地方貴族の小僧と引っ付いてしまった。

このような経緯から、
大陸での力比べが始まって、
英仏百年戦争になったというのだから、
吟遊詩人の文化というのも、
罪作りな文化ではないか。

音楽之友社から出ている
「地中海音楽絵巻」(牟田口義郎著)にも、
「トルバドゥール」の項に続いて、
「女公と女王・アリエノール」という、
お話が続いている。

ここでは、彼女は、
「最初のトルバドゥール」ギョーム九世の孫、
英仏三百年の紛争の火種となった女とされ、
「文芸擁護者としての彼女の存在によって、
トルバドゥール芸術は絶頂期を迎える」
などと描写されている。

このトルバドゥールというのは、
「吟遊詩人」などと訳されるが、
こうした言葉から連想される旅芸人ではなく、
作詩・作曲する教養人だったということだ。
彼らはジョングルールという歌い手を抱え、
自作の歌を歌わせたという。

十字軍の時代でもあって、
領土に領主が不在になりがちな中、
夫人が領土権を行使して女性の地位が向上、
かくて、宮廷の宴席で、女性賛美の歌が歌われた、
などともある。

こうして、リュートなどを伴奏に歌われる歌曲が生まれ、
「節なき詩は水なき水車」などという言葉が
出てきたというのである。

ちなみに、十字軍の話が出てきたが、
アリエノールが、最初の夫、
ルイ七世と決裂したのも、
1147年、第2回十字軍における、
作戦の考え方の不一致からだった。

アリエノールは1122年生まれ、
当時25歳だったわけだが、
ふと、一世代あと、1157年生まれの
「尼将軍」、北条政子の政治力を思わせる。
もっとも、政子に、みやびな気配はあまりないが。

なお、アリエノールは、英国国王妃であるが、
南仏ポワチエで別居生活を送り、
領地アキテーヌの宮廷文化を楽しんでいたため、
そこにベルナールのような天才詩人が集い、
彼女を崇拝した歌を作ったという。

つまり、アリエノールは「尼将軍」ではなかった。
また、息子がみなドラ息子だったために、
せっかくの大陸の領地は風前の灯となる。
が、彼女は、もっと女性らしいやり方で、
自分の血筋を後世に伝えた。

何と、娘たちが各地の実力者に嫁いだために、
神聖ローマ皇帝、カスティーリャ王、
フランス王などが誕生しているのである。
ちなみに、英国王としての後継者のリチャードは、
「獅子心王」、「中世騎士道の鑑」とされたが、
やはり十字軍で散々な目に会っている。

そんな事までを知識の下地として、
今回のCDを聴いてみたい。
「愛の言葉~トルバドゥールとトルヴェールの歌」
というもので、
フェイ・ニュートンが歌い、
ヘイゼル・ブルックスがヴィエールを担当する、
「デュオ・トロバイリッツ」
という女性コンビの演奏である。
イギリスのハイペリオンレーベルによるもので、
録音は2005年。
彼女らもイギリス人だと思われる。

トルバドゥールの女性形がトロバイリッツなので、
そのままの名称となっている。
さすが、教養人ということか、
解説もこの二人が書いている。

ヴィエールというのは、
このCDの解説の写真で見る限り、
原始的なヴァイオリンのような形をしているが、
ハーディーガーディーという名でも知られるもの。

シューベルトの歌曲集の最後で、
「辻音楽師」が手にしている楽器である。
シューベルトの曲では、
ライアーマンとされていて、
歌曲の最後は、
「僕の歌に合わせて、
あなたのライアーを回してくれるか」である。

つまり、この楽器、
弦をこする回転盤があって、
抱えるように持って、
取っ手をくるくると手で回して、
弦を鳴らすような作りである。

したがって、このCDも、
全編、この素朴な弦の擦れ音で満たされている。
このCDは、Track2、Track4、
Track6、Track11の4曲が、
歌なしなので、このかすれたような、
鄙びた残響音をとことん味わえる。

なお、トルヴェールは、トルバドゥールが、
北フランスに移ったバージョンである。
さらにこの伝統は、ドイツのミンネゼンガーにも、
受け継がれるというのだから面白い。

この楽器は廃れてしまっており、
大部分のシューベルト愛好家も、
ハーディーガーディーの音色など知らないで、
「冬の旅」を聴いているはずだ。

しかし、19世紀になってもなお、
こうして楽器も演奏家も描かれているのだから、
恐ろしく普及した楽器だったと言える。

さて、このCDには、
「トルバドゥールの中で最も型破りの詩人」
とされた、
ベルナール(ベルナルト)の曲も入っている。
この人は、
「心の底から生まれてこない歌は価値がない」
と、言っていたらしい。

まさしく、シューベルトの原型のような人である。

もう、このCDの表紙画像からして、
これまでの知識を全面的に受け止める感じではないか。

「女中たちと翼の生えたハートたち」
というタイトルからも、
群がる男たちを、
手のひらの上で転がす女たちの表象であることがわかる。
(ただし、時代考証的には、この絵画は、
もう少し後の時代のもの。)

では、解説には、何が書かれているか。

「報われない愛の痛み、
春の喜び、領主の妻に仕える騎士道、
この録音に収められた歌と共に、
私たちは、
トルバドゥールとトルヴェールの
詩と音楽で描かれた
愛を様々な切り口で探究した。
この時期の膨大な作品は、
一般に、『宮廷の愛の歌』と呼ばれるが、
実際には、多くの独特のジャンルが混在している。
13世紀の文献には、
恐らく、Jofre de Foixaの作とされる
『作詞の理論』と題されたものがあり、
トルバドゥールの様々な詩の、
最初期の記述が見て取れる。
著者は、canso、alba、dansa、planhと
名付けて簡単に区別し、
さらに詩のメロディについても言及し、
スタイルと、テーマ、役割、演奏上の流行
を関連付けて論じた。」

これらの詳細については、
ここでは書かれていないが、
語感からして、
歌とか踊りのようなものであろうか、
と推察できよう。

ちなみに、ネットで検索すると、
アルバ 、 夜明けが来て別れなければならない恋人たちの歌。
カンソ 、恋愛の歌。
ダンサ、踊りの歌。
Planh、嘆きの歌、とあった。

実は、この解説の後半は、
これらの種別について、
詳しく説明されている。

「宮廷の愛のコンセプトは、
12世紀に南フランスで開発された。
理想化された愛や性的な情熱を祝し、
洗練や貴族的なふるまいに発展した。
女性は、恋人に対して優位な立場にある
崇拝の対象として現れる。
淑女が主人となり、
主君が卑しい奉仕者となるように、
伝統的な役割が反転した。
トルバドゥールの詩では、
『我が主君』とはしばしば、
恋人の淑女を表し、
その望みは恋人への命令となった。
『トルバドゥール』とは、
言葉の上では『発見者』とか『発明家』である。
初期のトルバドゥールは、
12世紀への変わり目から、
アキテーヌ、ポワトゥーやオーヴェルニュなどの
宮廷を本拠地としていた。
旅芸人や吟遊詩人ではなく、
彼らはしばしば貴族の出で、
教養ある熟練した詩人、音楽家、歌手であった。」

このあたりはすでに読んだとおりである。
シューベルトの歌曲を広めた、
ミヒャエル・フォーグルなどは、
非常な教養人であったとされることが思い出される、
残念ながら貴族ではなかった。
なお、文庫クセジュの「中世フランス文学入門」によると、
トルバドゥールは、
形式面で多様性を追求した事が書かれており、
こうした背景から、「発明家」とされたのかもしれない。

「彼らは、南フランスのオック語、
またはプロヴァンス語で作詩した。
最初のトルバドゥールは、
ギョーム・ド・ポワトゥー(1071-1126)で、
アキテーヌの第9代の公爵で、
フランス王妃で、のちに英国王妃となる、
アリエノールの祖父であった。」

ということで、アリエノールは、
たまたまトルバドゥールがいた街に住んでいたのではなく、
はたまた、トルバドゥールを単に抱えていただけでなく、
その伝統の中心的存在であった、
ということであろう。

「もっとも一般的な音楽ジャンルはカンソで、
例の専門書によれば、
『愛の喜びを語るべきもの』であった。
それはしばしば、満たされぬ、
あるいは離れ離れの状況を扱い、
このCDでのカンソは、
Track3の『ナイチンゲールを聴いた』と、
8の『新鮮な野や木立』の2曲である。
これらは共に典型的に、
自然の喜びと詩人の嘆きが対比され、
夢と、嘆願と思い人への苦い思いに揺れている。
当時もっとも有名な作曲家であった、
ベルナルト・デ・ヴェンタドルン(c1130-c1190)
は、非常に多産であった。」

ということで、かなり早い段階で、
ベルナール(ベルナルト)の話になった。

よく見ると、トラック3と8の曲名の前に、
「canso」とちゃんと書かれている。

Track8がベルナルト作、
まず、弦楽器で、序奏があるが、
この段階では、何だか、物憂げで、
いろんな感情が交錯する。
さすが、「型破り」なだけあって、
巧緻な筆の冴えが感じられる。

「新鮮な野や木立、
枝には花が咲き誇り、
ナイチンゲールが声を上げ、
高く冴え冴えと歌い始める。
『あの人ゆえに楽しくて、
花々ゆえに楽しくて、
私自身ゆえに、それ以上に彼女ゆえに。
私はどこからも幸福に囲まれている。
これこそはすべてを征服する喜び。」

ソプラノが、入ってくると、
澄んだ声で、ナイチンゲール同様、
さえざえと天に向かうような声で訴える。
なるほど、このあたり、自然と一体となった祈りのようだ。

「私はあの人をこんなにも愛している。
そして、彼女をいとおしく思っている。
あの人を恐れ、あの人に仕えているが、
かといって、あの人が私のことを
どう思っているかを聴きたくはない。
そして、彼女の事を聴きたいわけでも、
何かを送りたいわけでもない。
でも、あの人は私が苦しみ、
嘆いているのを知っている。
そして、それをあの人は喜び、
それで私によくしてくれ、褒めてくれる。
あの人が喜ぶだけで、私は満足するから、
あの人は、何も咎める言葉を必要としない。」

こんな感じで、ナイチンゲールの歌は消え、
恋人の悩みと妄想がさく裂する。
ただし、特に楽想が激烈になるというわけではなく、
ただ、切々と訴えている。

「自らの望みを明らかにすることなく、
どうして私は耐えられるのだろうか。
あの女性を見かけ、見つめるとき、
あの人の美しい瞳は、愛らしく、
彼女のもとに駆け出しそうになってしまう。
恐れさえなければ、私はそうするだろう。
その見目麗しい、均整のとれた体つきゆえ。
その恐れは、愛の望みを躊躇わせ、
歩みを遅らせる。」

これを見ると、外見だけでも、
ものすごい高嶺の花であることが分かる。
ソプラノも澄んだ響きで、
高嶺の花への妄想もいや増すばかり。

「ああ、私は悲しみゆえにどう死のう。
あまりにも深く愛したので、
何もわからないままに、
私は簡単に盗み去られた。
神によって、愛よ。
それは防ぎようがない。
友もなく、他の主人もなく。
何故、あなたは、
私が完全に消耗してしまう前に、
一度でも、彼女に効力を発揮しないのか。」

ついに死ぬことまで言い出している。
ものすごく辛い状況に、
読んでいる私も心臓がばくばくする。

「彼女が一人でいるところを見たい。
眠っている時、いや、眠ったふりだけでもいい。
そうすれば、口づけを盗んでやるものを。
私は、それを要求するだけの存在ではないのだが。
神によって。ああ、あなた。
私たちは愛に関して、好都合なことは何もない。
時だけが流れ、良い機会は消えるばかり。
秘密の暗号を会話に混ぜたが、
ああ、大胆さが足りないとして、
機敏さだけが頼りなのに。」

これに続く、以下の最後の詩節は唐突だが、
後で解説があるように、
以上で詩は終わっていて、
以下は、これを伝令に渡すときの言葉らしい。

「伝令よ、行け。
私が直接行けないとしても、
私の事を忘れるなかれ。」

そうじて、作者の名声を疑うことが出来ぬ、
充実した曲と演奏で、途中の器楽の間奏も、
しみじみと聴かせる。

「伝えられるところによると、
ベルナルトは生まれは貧しかったが、
トルバドゥールとしての名声と人気は、
広く知られ、彼は最も高貴なサークルに入った。
それは、アキテーヌのアリエノールの宮廷も含まれた。」

ベルナルトの作品はこの一曲のみ収録、
以下、ガウセルム・ファイデットの話に移る。

「ベルナルトの作品はガウセルム・ファイデットなど、
次世代の詩人、作曲家に強い影響力を有した。
この人は、少なくとも13曲を、
ヴェンタドルンの子爵夫人、マリアに捧げている。」

ここで、曲名が出て来るが、
これは、Track3の
「愛の喜びのナイチンゲール」である。

「この曲では、彼女の名前を、
最後の短い詩節tornadaに入れ込んでいる。
ベルナルトのtornadaでは、
詩人は、あの方に渡されるべき、
書き上げた作品を伝令に手渡している。
ガウセウムのメロディは美しいが、
彼自身の歌はまずい事で知られていた。
それにも関わらず、明らかに彼は、
おいしい食事(それゆえに彼は太っていた)、
女性(彼は各方面で浮名を流し、売春婦と結婚した)、
さいころ遊びなど(彼は中流の出自ながら、
ギャンブルで全財産を失い、金のために音楽家となった)、
人生における良い点を楽しんでいた。」

太って歌が下手なギャンブル狂の歌は、
出だしこそ、非常につつましやかなものであるが、
絶唱ともいえる盛り上がりがある。
10分にもなる、このCDで一番の大曲で、
こんなあつ苦しい想いを切々と聴かされた、
領主夫人がどんな顔をしていたのかが気になる。

以上がcansoに関する話で、
以下、albaの話になる。

「alba(夜明けの歌)は、
トルバドゥールの一つのジャンルで、
夜明けによって、
恋人たちの逢瀬に邪魔が入るというもの。
ジョフレの論文によると、
もし、あなたがあの人に与えた喜びに、
夜明けが勝ったならば、
夜明けを祝福し、
もしも、夜明けに負けたのなら、
女性と夜明けを呪うalbaを作るが良い、
というもの。」

ちょっと鬱病気味のcansoより、
こんなalbaの方が、ずっと自然な感じがして良い。

「Track12の
ギラウト・デ・ボルネイユ作『光輝ある王』は、
おそらく、このタイプのもので、
もっともよく知られたもの。
最後の詩節は、ある人たちは、
間違っているというが、
詩をまったく新しい見地から見直すものとして、
私たちは、あえて、その部分も歌っている。」

この曲の歌詞は、
夕暮れ時から友がいなくなった、
探してください、という、
いささか遠まわしの歌。
最後から二番目の詩節では、
見張りを頼まれたのだが、
友達が戻ってこない、
という内容。

それに比べると、
確かに最後の詩節では、
「そんなにお楽しみなら、
僕なら夜明けも昼も要らないだろう」
と歌われているので、
しらばっくれていた友達が、
急に嫉妬を始めたような展開となっている。
しかし、解説では、もっと違う背景が、
以下のように説明されていて、私は驚いた。

「これはヴィーン版の手稿にのみあるもので、
これは、トリスタンとイゾルデのナレーションの
フランス語訳を含み、
ここにある複数の歌には、
この物語のキーポイントが散りばめられている。
この文脈から、隠れて逢瀬を楽しむ恋人たちは、
明らかにトリスタンとイゾルデで、
この歌は、もう立ち去る時間だと、
トリスタンに警告するために、
見張りをしている共謀者の歌である。
この最後の詩節は、トリスタンの反応で、
おそらく、物語に合わせるために、
追加されたものと思われる。」

確かに、中世フランスの文学を語る時、
このようなケルト伝説と切り離して語ることはできない。
しかし、こうして、CDで音楽として聴くと、
あるいは、歴史を紐解くと、
妙に、これらの文学書に書いてあった内容が、
生き生きとして実感されてくるではないか。

ハーディーガーディーが、
いかにも夜明けのような情感を表し、
見張りの警告の歌に相応しく、
朝日を睨みつけながら、
切迫した気分の歌が歌われる。

「宮廷の愛の規範は、
すぐにヨーロッパ各地の宮廷社会に広まった。
フランス内では、北フランスのトルヴェール派が、
初期のトルバドゥールの伝統から発展してきた。
アキテーヌのアリエノールが、
これに寄与していると考えられる。
彼女がフランスのルイ7世に嫁ぎ、
北上してパリの王室に入った時、
生きの良い南方の廷臣たちを引き連れ、
そこに音楽家たちも含まれており、
こうした形でこの様式が広まった。
独自の文字『オイル語』(中世フランス語)を使い、
既存のトルバドゥールの分野に適応させ、
独自の様式を開発した。
リフレイン付きの歌がより好まれ、
トルバドゥールの作品以上のものが、
トルヴェールの時代に残された。」

なんとなく、これまで聞いたトルバドゥールの歌は、
息苦しい感情の吐露が多かったような気がするが、
以下のトルヴェールものは、すこし、気楽に聞ける。

が、これ以上、書き進むと所定のページ数をオーバーしてしまう。
次回に回すことにしよう。

得られた事:「トルバドゥールとは、『発明家』という意味で、教養ある貴族が洗練された詩と音楽をものした。これは北フランス、ドイツへと伝搬して、宮廷の愛の歌が広がった。」
「仏王妃で後の英王妃という傑物、アリエノール・ダキテーヌ。その祖父こそが、トルバドゥールの始祖である。」
「当時、利用されていた楽器、ハーディーガーディーの音色がこのCDでは、とことん楽しめるが、この楽器は、シューベルトが『冬の旅』の最後で登場させたものである。」
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by franz310 | 2017-05-04 20:00 | 古典
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