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クラシック音楽への愛と悲しみの日々
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その439

b0083728_13475113.jpg個人的経験:
いくつかの泉から、
水の流れが集まり、
一つの川となって
海に注ぐように、
作曲家の仕事も、
様々な源流が想定される。
モーツァルトなどは、
まさに全欧の音楽を、
体現したような
立ち位置の人として
紹介されることも多い。
が、帝国が誇る
正規の音楽機関で、
早くから英才教育を受けた、
フランツ・シューベルト
の場合はどうか。


あまり考えたこともなかったが、彼こそ、
ハプスブルクの威信を担う人材候補として、
想像に余るほどの
過去の音楽の洗礼を受けていた人に相違ない。

ハプスブルク家は、
スペインも王国として統治した事があり、
このあたりの影響も
想定してよさそうなものだが、
シューベルトの音楽から、
スペインの影響を
直接的に聞き取ることは難しい。

しかし、何か手がかりでもないか、
などと考え、
かつて、スペインから輿入れした、
マルガリータ王女のお話あたりから、
この方面を聴き進めてきている。

そんな中、うまい具合に、
体系的にスペイン音楽紹介する
サヴァールのライフワークに
ついつい乗せられて
しまった感じもする。

この前、彼のレーベル、
ALIAVOXから出ている、
「ローペ・デ・ベーガの時代」
というCDを聴き進み、
オルガン音楽にもスペインの
特殊性があると教えられた。


文字数の関係で省略したが、
前回のCD解説の最後は、
こんな感じで、
スペイン・オルガン音楽まとめ、
という形になっていた。

以下、サヴァールのCDの解説の続き。
今回、取り上げるナクソス盤は、
後で紹介したい。

「最後にこの録音では、
この時期の鍵盤楽器の作曲家で
3人の主要なスペインの作曲家を取り上げた。
フェリペ二世の宮廷礼拝所の
偉大なオルガンの名手、
アントニオ・カベソン(1566年没)、
ザラゴザ・カテドラルとして傑出した、
セバスティアン・アギレラ・デ・エレディア(1627年没)、
それに、17世紀全般を通じてイベリア半島で流布し、
最も影響力あるオルガンの曲、
『Facultad Organica(1626年)』
で知られるアンダルシア人、
フランチェスコ・コレア・デ・アラウホ(1654年没)である。」

彼らの音楽は、まずカベソンから聴いた。
フェリペ二世が大事に取り立てた、
盲目の作曲家カベソンは、
かつて、ヒスパボックスの
「アントニオ・カベソン作品集」などで、
日本でも広く紹介されていた。

このCD、解説が非常に充実していて、
「スペインのバッハ」と紹介しつつ、
19世紀にはすでに、再発見が始まっていたとあった。
フランツ・リストの書簡にも登場するとある。

聴きものは、しみじみとしたメロディによる、
「騎士の歌によるディフェレンシアス」であった。

騎士の歌は、勇ましい騎士を表すものではなく、
騎士に想いを寄せる貴婦人の恋文のような内容。

解説を読んで驚いたが、
この「騎士」が、ながらく、
ローペ・デ・ベーガの戯曲、
「オルメードの騎士」の騎士だと、
考えられていた事があったようだ。

オルガンが、様々な音色で、
この歌謡を変奏していくが、
恋文が変容して、
壮麗な賛歌のように立ち上がる。

サヴァールのCDでは、この有名な曲は含まれず、
サヴァール盤:
Track5.にティエント第3番。
Track9.に、ほかのディフェレンシアスが収められている。

これも、「ご婦人の望みによるディフェレンシアス」
とあるから妙に内省的な音楽であっても、
驚いてはならない。
元の主題は、騎士の歌と同様のものであったのだろう。

解説にも、こんな事が書いてあるだけ。
「カベソンの作曲した作品は、
ティエント(イタリアのリチェルカーレに似た、
典型的なイベリア半島の対位法的な器楽曲ジャンル)と、
当時流行していた
(ここでは、『ご婦人の望み』であるが)
フランドルの対位法的なシャンソンによる
16世紀中ごろの鍵盤楽器の変奏曲の流れを汲んでいる。」

シューベルトも、歌曲を主題に変奏曲を書いたが、
この時代の伝統を受け継いでいる、
などと書く事は出来るのかできないのか。

エレディアからは、サヴァールのCDでは、
Track15.に「戦いのティエント」がある。

あちこちから軍勢が集まり、
どんどこ太鼓が鳴って、こりゃすごい。
だんだん盛り上がって、剣がびしびしと、
ちゃんちゃんばらばら。

「コレアやアギレラの作品の中にあって、
イベリア半島のオルガン曲の典型として、
いわゆる『バタラ(戦い)』、
これはおそらくミサの聖体奉挙の時に演奏された、
神と悪の神秘的な苦闘を音楽的に表した
一種の戦いの音楽を強調しておきたい。
その声楽曲版である、
『戦いのミサ』と同様、
戦場での音響効果を模した、
ジャヌカンの有名なシャンソン、
『戦争』の劇的効果の動機を使っている。
イベリア半島のオルガンの、
増加して様々な音色を持つリードストップが、
この音楽的描写の音色の選択を助け、
地方の聖堂に集まった人たちに、
異常にドラマティックな衝撃を与えたことであろう。」

オルガン曲ではなく、合奏で演奏されているが、
オルガンでも聞いてみたいものだ。

サヴァール盤、
Track21.「エンサラーダ」。
これもエレディアのもの。
エンサラーダは、何でもありのてんこ盛りサラダだが、
ここでも、太鼓鳴りまくり、ラッパ鳴りまくり。

本当に、教会で演奏されたのか。
むしろふさわしいのは、
かなり開放的な野外劇用であろうか。
劇の始まりの高揚感のようなものがある。

アラウホからは、サヴァールのCDでは、
Track19.に「モラーレスの戦い」がある。
これまた、戦いの音楽。
オルガンと戦いがこうも関係深いとは思わなかった。

「上述のジャヌカンのシャンソンをモデルにした
クリストバル・デ・モラーレスのミサを
直接の基にしたコレア・デ・アラウホのものは、
このジャンルの最初の発展形であり、
彼の同時代人、
アギレラ・デ・エレディアの作品のみならず、
ペドロ・デ・アロウホ、ディエゴ・ダ・コンセカオ、
ホセ・シメネッツ、ホアン・カバニレスなど、
のちのスペイン、ポルトガルの巨匠たちによる、
異常な流行の元となった。」

これまた、「戦い」ということで、
やはり、どんどこ登場の音楽で、
カベソンと並ぶ、オルガン曲の巨匠とは思えない。
ラッパも晴れやかに、輝かしい響きが交錯する。
こうした劇的情景が、大聖堂の中で響き渡ったとすれば、
私のオルガン音楽観も、大幅な修正を要する。

オルガンが戦いの楽器であることは、
ヒスパボックスのカベソンのCDの、
表紙写真を見れば実感できる。
鉛の塊のようなリード群が、
いかにも大砲や鉄砲を思わせる。

そもそもカベソンが鉄砲伝来の時代の人であるが。

今回は、NAXOSで偶然発見した、
「イベリア半島の初期オルガン音楽」というCDで、
このあたりの勉強をさらに進めてみよう。
うまい具合に、ナクソスというレーベルは、
もうちょっと、という場合に、
ポイントを突いたCDを出している。

ただし、これは、諸経費を押さえて、
良質な演奏を安く提供しようという、
このレーベルらしい割り切りによって、
演奏しているのは、アメリカのオルガン奏者、
大学教授ロバート・パーキンスで、
スペイン本場の人ではなく、
驚くべき割り切りと言うべきか、
楽器も彼の職場、つまり、アメリカの、
ということは、当然、歴史的にも新しい、
デューク大学の「Frentropオルガン」、
なるものを使っている。

このFrentropオルガンとは何かと調べると、
オランダの権威ある、
といっても、新しい事は事実の、
有名工房で作られたオルガンの名前のようだ。

このフレントロップ・オルガンは、
CDの表紙写真を見る限り、
イベリア半島風ではない。

そもそも、デューク大学という教育機関は、
ノースカロライナ州にある、
南部の名門らしいが、
ネット検索して写真を見る限り、
荘厳なゴシック風の塔が威圧的な、
ある意味、第一印象は、かなり時代錯誤的。

このヨーロッパとも見まがう教会の中には、
北ヨーロッパ様式によるフレントロップ・オルガン、
後期ロマン派様式によるエオリアン・オルガンと、
イタリア後期ルネサンス様式オルガンと、
なんと、3つものオルガンがあるらしい。

ネット上には、パーキンス教授が、
これらのオルガンで、
様々な勉強会的コンサートをしている旨が
読み取れたりもする。

ここは、イタリア後期ルネサンス式を、
なぜ、使わなかったか、
という気もするが、
おそらく、教授の判断は正しいはずだ。

とにかく、このいかにも、
アメリカ南部で、
いかにも肩肘を張って欧州文化を守っているぞ、
という感じの大学の時代倒錯チャペル、
そのフレントロップ・オルガンで、
当大学の名物教授が、
カベソンからエレディア、アラウホといった、
スペインのオルガン音楽の大家たちの曲を披露している。

こういう人であるから、
解説も自分で書くに決まっている。

アメリカ南部平原の
ノースカロライナの大地に、
空中楼閣のごとくそびえ立つ、
ゴシック様式の大聖堂に彷徨い入る感じで、
解説を読んでみよう。

「スペインとポルトガルのオルガンの
最も目立つ外観上の特徴は、
疑うことなく、メイン・ケースのファサードから、
腕木で水平に伸ばされたリードパイプ群である。
しかし、この特別な工夫は、
17世紀の最後の1/3の時期に現れ、
1550年から1700年の
イベリア半島のオルガン音楽の黄金時代の
最後に当たる時期であった。」

ということで、
垂直に突き出したパイプ群が、
このCD表紙のオルガンにないことは、
解説の冒頭から断られている。

「初期イベリア半島の音楽用の
オルガンについて、
膨大な文献が書かれているが、
確かに、それは独特ではあったが、
多くは、たった一つか二つのキーボードと、
初歩的なペダルがあるかないかで、
それほど派手なものではなかった。」
アントニオ・マルティン・イ・コールが編纂した
手稿から編曲した、
作者不詳の『イントラーダ』が、
特に、華やかな水平トランペット
(クラリーネ)を要求したのは、
18世紀を過ぎてからのことである。」

ということで、最初の曲目の解説と思われるが、
次に、カンシオンの話が出てくるのはなぜだろう。

「カンシオン(イタリア風マドリガーレのことか?)は、
水平リードの導入からすぐの時期の
スペインのオルガン機能を開発し、
同様の響きを持っている。」

Track1.イントラーダ
実に豪壮なファンファーレが鳴り渡るもので、
壮麗な儀式か、ありがたい事が始まる予感ばっちり。
そのあとは、比較的、明朗なメロディの掛け合いが始まる。
このあたりの木霊の効果は、
メロディが展開されても付きまとい、
これがカンシオンなのだろうか。

とにかく、このあたりが主部で、
冒頭のファンファーレは、
オルガンの発展に合わせての、
後世の継ぎ足しのもの、ということだろうか。

次に、大家、カベソンの曲が4曲並ぶが、
ティエントとディフェレンシアスが2曲ずつである。
そのためか、ティエントの解説がある。

「イベリア半島の鍵盤楽器音楽は、
16世紀中葉には十分発達していた
ティエント(ポルトガル語ではテント)の歴史の
延長と言える。
多くの初期のティエントは、
当時のポリフォニーのモテットの鍵盤楽器用編曲であって、
オルガンで演奏しやすいように、
複数の主題にそれらしく対位法的な構成を織り込んだものだった。」

ヒスパボックスから出ていたスペイン古楽集成の
「アントニオ・デ・カベソン作品集」では、
ティエントの3番、5番、7番~10番が収められていて、
カベソンの作品の中核が、
ディフェレンシアスとティエントだと書かれていた。
このCDでは、ティエント1番と、
「誰が語れよう?に基づくティエント」
が収められている。

アントニオ・デ・カベソン
Track2.ティエント1、
Track5.「Qui la dira」によるティエント、
についての解説。

「アントニオ・デ・カベソンのティエント1は、
これらのものより、ずっと特徴的で洗練されているが、
シャンソンに基づく『誰が語れよう?に基づくティエント』は、
もっと単純な声楽の様式を残している。」

ティエント1は、瞑想的な音楽で、
この偉大な作曲家が、自己の内面を、
紡ぎだしているような感じ。

「誰が語れよう」も、基本的には、
ばーんとすごい音だって出せるオルガンを使いながら、
ぶつぶつぼそぼそと、逡巡しているようなもの。

Track3.イタリア風パヴァーヌによるディフェレンシャス
Track4.ミラノ風ガリャールダによるディファレンシャス

「疑うべくもなく、18世紀以前のイベリアのオルガン音楽のうち、
最も霊感に満ちた天才は、盲目のカベソンが、
変奏曲の形式で第一人者に他ならなかった。
流行曲に基づく鍵盤楽器のための変奏曲(ディフェレンシアス)
については、欧州各国に比べ16世紀スペインでは、
作曲も演奏も、すでに驚くべき高度な域に達していた。
カベソンのイタリア風パヴァーナと、
ミラノ風ガリアルダに基づくディフェレンシアスは、
それぞれ、当時、よく知られた舞曲に基づく、
変奏曲セットである。」

これらの変奏曲は、
先ほどのティエントよりも主題が朗らかで、
様々な声部が、寄り添って、
人気のあった音楽に声を合わせる風情であろうか。

これは息抜きの音楽だから当然、
というべきなのか、
よりシリアスでありがたい、
二つのティエントより曲の長さも短い。

アントニオ・カレイラ
Track6.第1音上のファンタジア
「カベソンと同時代のポルトガル人、カレイラは、
ここで、『第1音上のファンタジア』と記した曲に、
なんのタイトルも与えていないが、
複雑ではないのに模倣様式で効果的な作品で、
おそらく、簡単に『テント』だとわかる。」

さすが、「イベリア半島の」
と銘打っただけのことはある。
ポルトガルの音楽も取り上げている。
大航海時代、我が国まで来た、
というか、最近までマカオをおさめていて、
妙に身近に感じられる、
ポルトガルの当時の響きに浸れるのは嬉しい。
まるで、教会のステンドグラスから差し込む光のように、
神秘的なスペクトルを放つ音楽。
たった2分であるが、
まさしく浸されるような時間。

ベルナルド・クラビホ・デル・カスティーリョ
Track7.第2旋法によるティエント

「『第2旋法によるティエント』は、
ベルナルド・クラビホ・デル・カスティーリョの、
たった一つ、残された作品である。
その清澄な様式は、ティエントの類似ジャンルで、
17世紀スペインで一般的になった、
ティエント・デ・ファルサスの先駆であろうと考えられる。」

これまた、押し殺したような響きが印象的な、
内省的な音楽。
敬虔な祈りの中で、
よほど心を澄ませて聴かなければ、
音楽に近づく事が出来ないような佇まいである。

まるで、少年合唱のような無垢な響き。
1545年生まれ、没年1626年というから、
シューベルトの200年以上も前ながら、
苦難の後半生だった天正の少年使節が、
次々と世を去る時期まで生きたのだな、
といった事を、ふと考えた。

パーキンス教授に乗せられて、
ついつい、余計な妄想までしてしまった。

が、こうしたポリフォニーの合唱曲が、
スペインのオルガン音楽の
発展に寄与した事は
明らかなことのようで、
合唱音楽と来たら、
少年合唱団で歌っていた、
シューベルトとも、
何らかの関係が
あってもおかしくはない、
などという妄想すらできるのである。

フランシスコ・デ・ペラサ
Track8.メディオ・レジストロ・アルト

「16世紀の最後の1/3世紀の間、
注目すべき工夫が起こり、
イベリア半島のオルガンを永久的に変えてしまった。
オルガン製作者たちは、バスとトレブルの中間に、
一つかそれ以上のストップを作り始め、
同じキーボードで二つの異なる音栓利用を可能とした。
ペラサのMedioレジスターアルトは、
トップラインの独奏と低い声部の伴奏音型の二つに、
レジストレーションを分けるもので、
これは、恐らく、
この技術を使った最初期のティエントであろう。」

こうした、楽器の技術的な発展と、
演奏技法の発展を語らせるには、
おそらく、この教授は適任なのであろう。
妙に、解説にも膨らみが出てきたような気がするし、
この音楽も、素晴らしい和声の色彩感が、
すごい力強さと深みを感じさせるものだ。
生年は1564年で、
1598年に亡くなっているので、
34年の生涯だったのだろうか。

セバスティアン・アギレラ・デ・エレディア
Track9.第4旋法による偽ティエント

「セバスティアン・アギレラは、
サラゴーサを中心とした、
アラゴン派の重要な人物で、
彼の18曲からの作品は、
17世紀スペインに花開いた
数多くのジャンルの典型となっている。
彼の第2ティエントである、
第4旋法によるデ・ファルサスは、
ファルサスという題名を使った最初の例に含まれる。
ゆっくりとした半音階の係留音
(和音の変化する部分で前の和音の音が
非和声音として引き継がれるときの音)が、
この瞑想的な声楽様式を特色づけている。」

神秘的なトリルで始まる音楽で、
ゆっくりと進行する中、
係留音の効果か、
深いため息や悔悟を感じさせる音楽。
この人も、天正年間に生きた人のようだ。
半音階の駆使で知られるという。

マヌエル・ロドリゲス・コエリョ
Track10.第4旋法によるティエント
「17世紀全般を通じて、
鍵盤楽器の曲集は、たった二つだけが、
イベリア半島で出版された。
それらの一つが、ポルトガルの巨匠、
マヌエル・ロドリゲス・コエリョによる
1620年の『音楽の花束』で、
各モードの3つのティエントを含めた。
その最初の第4旋法によるティエントが、
もっとも、魅力的で、4つの主題は、
微妙に関連している。」

「音楽の花束」というのは、
フレスコバルディ(1583-1643)
の作品が有名だが、
これは1635年のもののようだ。
フレスコバルディの曲も、
ミサに使うオルガン曲の集成であった。

コエリョもアギレラなどと、
同時期に活躍した人のようで、
この曲は、非常に晴朗で明快な、
歯切れの良さで際立っている。

フランシスコ・コレア・デ・アラウホ
Track11.バスの音域による第1旋法のティエント

「フランシスコ・コレア・デ・アラウホの、
『オルガンの学科』は、
すぐ後の1626年に出版された。
コレアは、この巻で、
分割された音域のために、
多くのティエントを含めた。
『Tiento de medio registro de baxón』
はバスのソロのもの。
この特別な小品の最も魅力的な点は、
終わり近くにあらわれる7/8拍子である。」

始まってしばらくしてから、
バスの太い音色に、
しっかりとした独白が聞かれるが、
むしろ、天上の光が飛び交うような、
明るい伴奏部に耳を澄ませてしまう。

パブロ・ブルーナ
Track12.聖母のための連祷によるティエント

「パブロ・ブルーナは、
尊敬すべきカベソン同様、
目が不自由で、アラゴン派に属した。
『聖母のための連祷によるティエント』は、
タイトルにはないものの、
異なる音域で演奏されることを想定した
自由な変奏曲である。」

ブルーナは、1611年に生まれ、
1679年に亡くなっているから、
マルガリータ王女が生きた時代の人である。

つまり、先にあげた黄金時代の作曲家たちとは、
2世代くらいあとの人かもしれない。

マルガリータ王女は、1673年に、
22歳になる前に亡くなっているから、
異郷の地で散った、
この王女の事に想いを馳せ、
この作曲家も、何か、考える事があっただろうか、
などと考えてしまった。
1674年に、彼はダロカの教会の楽長となったが、
スペインは、もう、どうしようもない時代に、
突入していたはずである。

この曲だけを聴いて、
「聖母」を連想することはできないが、
演奏に7分を要し、このCDの中では、
最も長い、変化に富んだ曲である。
変奏の都度、現れるメロディも明快で、
ポリフォニー的ではない領域に入っている。

フアン・カバニリェス
Track13.パサカーユ Ⅰ
Track14.シャカラ

「イベリア半島のオルガン音楽の『黄金時代』の、
最後の偉大な作曲家は、フアン・カバニリェスである。
彼の多産な作品は、
カベソン以降の時代以降衰えた作曲技法、
変奏曲など、
この文献のほとんどすべてのジャンルを含む。
『パサカーユⅠ』は、5曲あるうちの5番目のもので、
和声的な4拍子のテーマによる簡単な18の変奏曲集である。
名技的な『Xacara』は、
粗野なストリート・ダンスの
繰り返しパターンをもとに展開した、
より複雑で解放的な曲である。」

多作家という事であろう、
カバニリェスの作品は、
サヴァールも取り上げてアルバムを作っている。

1644年に生まれているから、
この人などが、
最もマルガリータ王女(1651~1673)
に近い世代、ということになろう。

亡くなった時には、
18世紀になっている。

『パサカーユ』は、
パッサカリアという事であろう。

これまた、内省的な作品で、
ほとんどモノローグで、
途中で、音色を変えて近代的な展開を見せ、
19世紀のフランクのオルガン曲、
と言われても、わからなかったかもしれない。
サヴァールも、この曲を、合奏曲として、
別のCDで取り上げている。

「Xacara」は、CDの日本語曲目一覧には、
「ハカラ」とある。
解説にあるような「粗野な」という感じは、
あまりしないが、だんだん、テンポが高まり、
まさしく、前に聴いた、「Jacaras」みたいな、
熱狂的なものがベースにあることがわかる。
しかし、神妙なイメージのオルガンで演奏されているから、
解説を読まない限り、
そのルーツに想いを馳せることはなかっただろう。

作者不詳
Track15.ガイタによる変奏曲
「作者不詳の『ガイタによる変奏曲』は、
このCDのオープニングの『イントラーダ』同様、
アントニオ・マルティン・イ・コールの曲集に由来する。
『ガイタ』という言葉は、
スペインのガリチア地方で
特にポピュラーだった楽器、
バグパイプを意味する。
この魅力的な小品は、
この時期のイベリアのオルガン曲が、
必ずしも、厳格であったり、
厳粛ですらあるというわけではない、
ということを思い出せるように
取り上げておいた。」

この曲は楽しい。まさしく、これこそ、
ストリートミュージックを模したオルガンという感じ。
様々な音色が次々に繰り出され、
最後は鳥の声が騒ぎ立てるような効果まで現れ、
楽しい以上に、楽器の王様たるオルガンの、
驚くべき威力に舌を巻いてしまう。

以上、全15トラックを聴いた。
何せ、廉価盤のナクソスであるから、
簡素をもって美徳としているはず。
簡単に読めて、しかも、勉強になることが望まれた。

実際、その通りの、
読み応えがあるもので、楽器の置き場所こそ、
米国中西部の蜃気楼の中だったかもしれないが、
さらりとイベリア半島めぐりを楽しませてもらった。

得られた事:
「何と、戦いの描写も神と悪とのせめぎあいを描く時に重要で、教会から現れた様式であった。」
「総じて、劇場や教会は、何でもありの音楽創作の影の立役者であり、オルガンもまた、必ずしも『祈り』の楽器というわけではなく、何でもありの描写を繰り広げた。」
「イベリア半島のオルガンは、ポリフォニー合唱曲の影響を受けて語法を増し、時代を経て継ぎ足しのように強烈な水平パイプ群を備えるに至った。」
「黄金時代のスペインでは、俗謡による変奏曲が多く作曲されたが、歌曲を主題に変奏曲を書いたシューベルトとの関係はいかに。」
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by franz310 | 2016-07-31 13:51 | 古典 | Comments(0)
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