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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その355

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その355_b0083728_1443313.jpg個人的経験:
ヴェネチア外に活路を模索していた
ヴィヴァルディが、3年間の忍従の後、
再度、故郷での起死回生を狙った
野心作が、このオペラ、
「試される真実」だという。


主人公の名前が、ずばっと、
タイトルになっている作品が多い、
ヴィヴァルディのオペラ中、
この作品は、和訳すると漢字が多い点でも、
へんてこな感じであるが、
相当な力作であることがすぐに分かる。

この力作を蘇演させたのは、
フランスの指揮者スピノジである。
このブックレット内に収められた、
情熱的な指揮ぶりを示す写真でも、
その熱意がびんびんに伝わってくる。

前回は第1幕を聴いたので、
今回は、その続きを聴いてみたい。

解説によると、
この作品を復活演奏させることは、
かなりの困難を伴ったらしい。

このオペラの場合、多くの後期のオペラの場合とは、
どうやら事情が異なったようで、
「ウティカのカトーネ」のように、
素材が欠落していた、という状況ではなかった。

スピノジとデラメアが書いた、
「スコアの再構成についてのノート」には、
「『試される真実』は、1720年の秋に、
一連の上演がなされただけなのに、
ここまで豊富で複雑な素材が残された、
ヴィヴァルディのオペラも少ない。」
と書かれている。

「主な材料は、最後の合唱のみが欠落した、
トゥリンの国立図書館に保管されていたスコアで、
ヴィヴァルディが演奏に使った写譜である。
しかし、このスコアは恐ろしく混乱していて、
数多くの削除や挿入を含み、
トゥリンとミュンヘンの州立図書館に保存されていた、
20曲のアリアからなる追加材料や、
印刷された異なる3バージョンのリブレットの助けなしには、
首尾一貫した再構成は不可能であった。」

ということで、この指揮者と研究家は、
涙ぐましい努力を行い、
四つもの版を仮定して、
この録音に至ったという。

バージョン1.
最初の版で、ヴィヴァルディがもともと書いたもので、
トゥリンにあったもの。
バージョン2.
リハーサル中に歌手の要望などで書き直されたもので、
最初の印刷リブレットによる。
ボローニャにあったもの。
バージョン3.
実際の公演中の何かの理由でアリアが変えられ、
二つのシーンが省かれたもの。
印刷リブレットの第2、第3による。
Rovigoのコンコルド・アカデミーに、
保存されていたもの。
バージョン4.
最後にいくつかのアリアを、
ヴィヴァルディが差し替えたもの。
これは、アリアをアレンジしたものが、
ミュンヘンにあって、
1720年秋に演奏されたに違いないもの。

最終的に彼らは、メリンドのアリア(第1幕の8)が、
より説得力があるものとして差し替えた他は、
オリジナルのものを採用したという。

「再発見を求めるものの出発点としてふさわしい」
という理由だそうである。

ということで、このオペラは、
なるほど、めったに演奏されないわけだ、
と納得できたと同時に、
これから、まだまだ、別バージョンが出てきそうだ、
などとも考えた次第である。

さて、第2幕から聞くが、
第1幕がCD1とCD2のTrack2.までと、
かなりの長さであったのに対し、
第2幕はCD2のTrack3.から、
最後のTrack18.までと、
それほど長くない。

そもそもこのオペラ、台本としては、
極めてシンプルで、
こんなもので、よくオペラになるものだ、
などと思ってしまうものである。

登場人物が6人しか
出てこないのがシンプルで、
第1幕では、2回アリアを歌った、
ダミーラ、ルスターナ、ゼリムもお休み気味で、
ダミーラはアリアなし、
ゼリム、ルスターナはアリア1回、
ヒロイン、ロザーネがアリアを2回、
君主マムードと息子の一人、メリンドがアリア1回である。

彼らの関係は、

         マムード(カンバヤ王)
             ↓結婚を要望
   ゼリムを後継者に推挙→←ロザーネ(ヨゲ王の娘)
    ↑   ↑        ↓本当はメリンドが好き   
    ↑  異母兄弟メリンドが反発
    ↑   ↑
    ↑  側室ダミーラが後押し
   マムードの正妻ルスターナの子

という感じだが、実は、マムードは、
これまで、この兄弟をわざと、交換して育てていた、
というややこしい状況なのである。

したがって、オペラの題名、「試される真実」は、
「真実」とは、今まで、嫡子とされたゼリムこそが、
王位継承者であった、ということであり、
スルタン、マムードの主張である。

一方、「試される」とは、
こうした状況に混乱する、
兄弟たちや、その母親たち、
そして、王子のどちらかと結婚する
ロザーネの大騒ぎを意味し、
まったくもって、このヘンテコなタイトルは、
このオペラの内容にぴったりなのである。

第1幕は、スルタンが、実はゼリムが後継者じゃ、
と言ったあたりであるが、
第2幕以下も、同様に混乱した人々(特にダミーラ)が、
いろいろ画策する内容。

シノプシスを見ていくと、こんな事が書いてある。

第2幕:
Track3.
「ロザーネに二人の息子たちを、
生まれた時に交換したことを話したマムードは、
ゼリムを助け、彼女にメリンドを忘れるように言う。」

このようにあるが、当然、ロザーネは、
寝耳に水なので、「信じられませんわ、
私にメリンドを忘れることなどできませんわ」
とか言っている。

Track4.
解説に「国家的な理由を訴える。」
とあるアリア「克服せよ」であるが、
きわめてエキゾチックなメロディの、
さすが君主の、高らかなアリアである。

Track5.
ここでは、驚いたことに、
ロザーネは何となく納得した模様。

「スルタンの言い分に従って、
心の命令に反し、
ロザーネはメリンドに、
ゼリムを愛する必要を語る。」

このような状況ゆえ、極めて深刻な二人の様子が、
レチタティーボで語られる。

Track6.
アリア「さようなら私の愛」は、
「極めてあいまいな言葉で、メリンドに別れを告げる」
とあるもの。

明るく、悲愴な感じはあまりない、
かわいらしいアリアである。

「まだ、愛しているわ。
でも、その甘さや良さは、
その希望がなくなると、
悪い毒になるの。」

Track7.
メリンドは、「不実な父親」と言い、
メリンドの母親だと思っていたルスターナも、
「あの頑固な心は変えられない」などと言っている。
メリンドは、実の母と分かった、
ダミーラに、「あなたが諸悪の根源だ」などと言う。

ゼリムは純情に、
「王位などより、あなたが母と分かったことが嬉しい」
などとルスターナに言う。
が、ルスターナは、「あなたは息子ではありません」
と言っている。

解説には、
「スルタン夫人の子であることを知ったゼリムは、
こうした出来事があっても、
子としての愛情に影響はないと言うが、
ルスターナは、そんな交換がなされた事は認めず、
母と呼ぶことを許さない。」

Track8.
メリンドも、「この世界の半分を統治する、
2つの王冠を手にできてよかったね」
などと、僻み根性たっぷりである。

Track9.
ゼリムのアリア、
「私の優しい感情が、あなたを愛せと言う」
は、
「ゼリムは子としての母親への愛情を、
感動的に宣言する」と解説にある部分。

これまた、いくぶん、異教的なメロディが、
からまるような、錯綜した様相で聞かせる。

Track10.
「ルスターナはメリンドに対し、
ダミーラと一緒にスルタンの計画を阻止する、と言い、
そして、ロザーネも戻ると慰める。」

Track11.
ルスターナのアリアで、
「その愛らしい眼も顔も、
あなたの心を愛らしく捉え、
あなたのため息を勝ち得るでしょう」という、
妙に焚き付ける内容である。

Track12.
メリンドのレチタティーボで、
「二人の母親が出て行くと、
メリンドは絶望にとらわれ、
恋人の心が揺れ動きやすいことを糾弾する。」

Track13.
メリンドのアリアで、焦燥感に駆られたもの。
スタッカートで、激しいアタックの弦楽伴奏。
「彼女は見ない、笑わない、涙も流さず、嘘もつかない。」

Track14.
チェンバロのじゃらじゃら伴奏に続き、
マムードの声が響く。
「公式謁見室、マムードとゼリムは並んで座り、
ゼリムが後継者であることと、
過去の過ちを公にした。
すると、ルスターナが突然現れ、
民衆に直接、騙されてはいけないと、語りかける。
ずるいダミーラは、今度は、
スルタンに悲愴なしぐさを見せつけ、
息子を王位につけようと、
王の愛と寛大を讃え、
その計画の放棄を懇願する。
寵姫の計画に気づいたマムードは、
信用できない女に罵りの奔流を浴びせ、
真実を隠そうとする狡猾なたくらみを非難する。」

これで、皆がいなくなるようだ。

Track15.
「ロザーネとゼリムは、
メリンドが来ると彼らの困惑を口にする」
とあるが、
いきなり、メリンドがけんか腰で現れる。
「マムード、ゼリム、そしてロザーネに、
順番に話しかけ、マムードには不正に対し復讐すると言い、
ゼリムを脅し、ロザーネには、非難を積み上げて見せる。

マムードも、ゼリムも何も言わず、
ロザーネは、「私を不実と呼ばないで、
あなたは私を傷つけている」と言い、
マムードにも、王女に対し、何たる仕打ち、
と怒っている。
「ロザーネは運命を決めるよう懇願し、
メリンドへの愛を改めて認める。」

Track16.
ロザーネのアリアで、
「あなたは、私の心の唯一の甘い喜び」
という、高らかな誇り固い王女の愛の宣言である。
激しいリズムが押し寄せ、
興奮した様子もよく表されている。
弦楽は声楽の線をなぞり、声は激しく上昇する。

Track17.
「起こったマムードは、真実にこだわり続けるが、
ゼリムは、矛盾した状況に圧倒され、
心情的な苦しみを吐露し、王位を放棄することを選ぶ。」

Track18.
ロザーネを除く、二組の母親と息子たち、
そして父であるスルタンを交えたアンサンブル。
「混乱の中で、スルタンが叫ぶが、
みながダミーラやルスターナを母親だと呼ぶ。」
これがすごいフィナーレの五重唱で、
かなり圧巻のもの。

極めて抒情的な弦楽合奏の序奏に続き、
育ての母が、交互に、息子たちに声をかける。
「私の愛」、「私の子供」と、母親たち。

ダミーラはシュトゥッツマンの強い声、
ルスターナは優しい声である。

メリンドとゼリムも、育ての母に、
「お母さん、私こそ息子です」と、
しっとりと泣かせる四重唱に、
リズミカルな舞曲調の音楽が重なる。

すると、混乱の様相となり、
マムードは、「お前らは間違っている」としかりつけ、
皆が、彼を責める。
抒情的な部分と混乱が舞曲調の音楽に押し流されて、
第2幕はお開きとなる。
粋な効果である。

第3幕:
Track1.
「スルタンの部屋。
ゼリムはその不信を表明し、
メリンドは恨みを述べる。
二人とも、マムードに命令に従うよう命じられ、
マムードは間もなく、民衆にゼリムの正当性に、
反駁不能な証拠を見せるという。
しかし、ゼリムは疑いと絶望に引き裂かれたままである。」

Track2.
ゼリムのアリア「光輝が私をそそのかすが」
という、希望と不安が混ざり合った感情を歌い上げる。
軽妙なリズムの中、ジャルスキーの純朴さを讃えた声が、
軽やかな震えを持って舞い上がる。

Track3.
「ゼリムが立ち去ると、メリンドは、
父親を残酷さや不正で非難し、
暴君であると罵る。」

いきなり、二人の言い合いである。
「この自意識過剰が」、
「この残酷さよ。しかし、神様が天にいます。」

Track14.
メリンドのアリア、
「残酷さよ、私が栄光をあきらめると願っている。」
管楽器の激しいコンチェルタンテな活躍を伴う、
ものすごいアリアである。

王子の誇りが、輝かしいトランペットから、
その悩みが、悲しげな木管の音色からもうかがえる。
サラ・ミンガルドの声は、それなりに男らしい。

Track5.
「マムードは、ダミーラに言うとおりにするよう、
二人の子供たちを交換した公式承認にサインを求める。
サインをするなら死んだ方がましと、
この寵姫は、これを断る。
すると、マムードは、『大逆罪』で、
メリンドに死刑を宣告するといい、
ダミーラが固執すると、それにサインすると脅す。
しかし、機敏な策略家は、時間稼ぎをすると決め、
供述としてサインをする。」

Track6.
「マムードは満足し、この行為の正当性を宣言する。」
マムードのアリア、
「強い心の厳格さには理由があり、残酷ではなく、義務なのだ」
は、なんだか自己陶酔した、
夢想の世界に遊ぶような風情。
素晴らしい繊細なオーケストレーションである。

あほみたいに、自画自賛して舞い上がり、
かなり、権力に対する風刺になっている。

Track7.
「スルタンが去るや、ルスターナは、
ダミーラに合流する。
側室は正室に反撃に備えるように言い、
愛するふりをせよと教える。」

「恐ろしいニュースがあります」とダミーラは、
いかにも悪そうである。
「メリンドは私の子である、という書類に、
サインをさせるのです。暴力の下、
彼の命か、彼をあなたを引き離すしかなかったのです。」

Track8.
ダミーラのアリア「ちょっと涙を浮かべれば」は、
いかにもアラビア風のメロディが、
絡まり合うような、挑発的なもので、
ダミーラは魔女のようだ。

Track9.
「舞台に一人、ルスターナは、
息子や夫や王冠を失えば、
もう、何も残らないことを悟り、
再度、不運を嘆く。」

「私はもはや母ではなく、妻でもなく、
女王でもない」と言っている。

Track10.
ルスターナのアリア、
「誠実な夫が隣にいる、無垢な自然にいる人は幸せです」
というもので、リコーダの素晴らしい助奏がついている。
このひなびた笛の響きが、幸福な自然を表している。
「彼女は苦しみから遠く離れている。」

つまり、まだ、ルスターナは、
メリンドが実の子であると信じているので、
妾の子、ゼリムが王位後継者になることは、
自身の地位も危ないと考えたのである。

Track11.
ト書きに、「寺院の入り口で、
ゼリムは、メリンドの攻撃をかわしながら、
中に入る」とある。

荒れ狂った弦楽の序奏、緊迫感が漲る。
「すぐにロザーネとゼリムが結婚すると知り、
メリンドは嫉妬に狂乱する。
彼は凶暴に義兄弟を脅し、
一時、正気を失ってしまう。」

オーケストラの強奏も緊張感を保持して、
これは、メリンドの攻撃だろうか。

「ロザーネのとりなしも甲斐がない。」

Track12.
「不幸な人は去り、ゼリムとロザーネが残り、
ロザーネは、正当な後継者に、結婚をあきらめ、
分かれた恋人に幸福を戻してあげて、と言う。
ゼリムは、そうすると言い、
王女は、制止していた喜びの表現を解放する。」

Track13.
ロザーネのアリアであるが、
せわしなく技巧的であって急速で、
弦楽の落ち着きのない伴奏からも、
あまり幸せそうではないが、
「チャーミングな恋人に百回のキスを」と歌う。

Track14.
「ゼリムは一人残され、この放棄による嘆きにも、
高貴にも立ち向かう。」

Track15.
ゼリムの優しいアリア、
「君の傷が癒えたら」で、
さわやかな曲想が、
苦しみからの解放を感じさせる。

「寺院の中で、マムードは、ルスターナに、
ゼリムを息子として抱擁し、
夫の言葉を受け入れるように頼む。
ダミーラは、サインを強制された書類について語って、
彼らを仲裁する」とあるが、

Track16.
は12秒しかなくて、
ダミーラが、「何が真実?
王様によってではなく、おそらく暴君によって、
私から奪い取られた息子にとって」というと、
マムードが、「神に嘘をつけと言うのか」と答えるだけである。

とはいえ、この会話こそが、
このオペラ「試される真実」の主題が、
凝集された部分なのかもしれない。

あくまで、杓子定規なスルタンの「真実」は、
いきなり王位継承者ではなくなった、
メリンドや、その取り巻きの環境によって、
厳しくゆすぶられ、「試され」、
さらに、メリンドを推すダミーラにも、
やはり、「真実」は「真実」であり、
何が何だか分からなくなって来たということであろう。

そして、いったんは王位継承者となった、
ゼリムによって、遂に大団円が導かれる。

Track17.
「ゼリムは最終的に寛大にも、メリンドには、
ヨゲの王冠を与え、
自身はカンバヤの王冠だけを受けることを決める。
自分の野望と真実とを調和させるものだったので、
ダミーラも、この提案を認める。」

メリンドは、ヨゲの王女との結婚によって、
二つのスルタン領は、別々に管理されることとなる。
実際的には、内紛の種を抱えた先延ばし策に見えるが。
このオペラを通じては、ダミーラとメリンドの性格は、
私には、かなりやばいものと見受けられるが。

Track18.
最後のコーラスは、極めて朗らかなもので、
ヘンデルもかくやと思わせるものである。

「登場人物は全員、こうした苦しみの末の、
幸福の再来を歓迎する。」
とにかく、音楽的な大団円感は素晴らしい。

このように、ヴィヴァルディが再起をかけた、
野心作「試される真実」は、多彩なアンサンブルと、
オーケストレーションによって、
非常に立体的な作品となった。

このような様式は、次第に、ナポリ派の、
技巧歌唱一本勝負歌合戦のようなオペラによって、
次第に駆逐されていった、ということであろうか。

ということで、本編の鑑賞は、ここまでで終わったが、
ヴィヴァルディを聴きこむと、
それで、初演の歌手はどうだったのだろう、
などと、よけいな事が気になってならなくなる。

個人的には、この作品あたりで、
マントヴァで知り合ったアンナ・ジローなどが、
出てきてほしい所だが、それはないようだ。

以下、解説にあることをかいつまんでみた。

スルタン、マムードを歌ったテノールは、
ヴィヴァルディがマントヴァで発見した、
レッジョ・エミーリア出身のアントニオ・バルビエリ。
この作品でヴェネチア登場。
極度の名技性と劇的効果を持つアリアを担当。

正室ルステーナはチアラ・オルランディ。
「マントヴァニーナ」というニックネーム。
1717年に「ティエテベルガ」で登場して以来、
ヴィヴァルディによって紹介され、これは第五の共演となった。
特別な難易度は要求されないが、
明らかに演技力が求められる役割で、
このメゾ・ソプラノは、脇役ながら、
ヴィヴァルディには劇的な方面で信頼されていた。

側室ダミーラには、同様に、信任篤い、
当時の最も重要なコントラルトとされる、
アントーニア・メルゲリータ・メリジ。
ボローニャ出身で、そこでセネジーノに学んだらしく、
1714年にフィレンツェでデビュー、
ヴィヴァルディによってヴェネチアに紹介された。
傑出した名手で、ヴィットリア・テシのライヴァルとされた。
ヴィヴァルディもそれにふさわしい曲を与えている。

ロザーネには、駆け出しのアンナ・マリア・ストラーダを起用。
このベルガモ出身の若手は、ミラノ公の被後見人で、
前年、この地において、知られざる作曲家の
「シラクサのアクイリオ」でデビューしたばかりで、
「試される真実」が彼女のヴェネチア・デビューであった。

この人は後に大成するが、
この役は、この繊細で集中力の高い歌手としての、
初期の仕事であるが、ヴィヴァルディは、
ヴィヴァルディは、注意深く声を節約し、
ここぞと名技性を発揮させた。

この歌手はやがてロンドンを訪れ、
ヘンデルの信頼を勝ち得ることとなる。
これは、私が追記した。

ゼリムの目もくらむような役割は、
ジロラモ・アルバティーニという、
このオペラでは唯一のカストラートが受け持った。
同じ名前の歌手が二人いたので、
この人の経歴を追うのは難しい。

この役柄のためにヴィヴァルディが書いた、
美しく技巧的なアリアは、あまり知られていない、
謎の男性ソプラノについて、
私たちが知っていることとあまり一致しない。

衝動的なメリンド役を演じたのは、
有名なアントーニア・ロウレンティで、
ボローニャの音楽一家の出身で、
1714年からキャリアを開始して、
「コラルリ」と呼ばれていた。

バドゥア、ボローニャ、モデーナ、フィレンツェで、
名声を博し、1718年、ヴィヴァルディによって、
「アルミーダ」のアドラスト役に起用され、
故郷を離れマントヴァで紹介された。
「試される真実」は、ヴェネチア・デビューとなり、
豊かにオーケストレーションされた技巧的アリアは、
「コラルリ」嬢に対するヴィヴァルディの高い評価の証拠である。

なお、この解説には、アンナ・ジローのことにも触れており、
このオペラのアリアを再利用したパスティッチョ、
『La ninfa infelice e fortunate』によって、
1723年にトレヴィソで、彼女はデビューしたという。

得られた事:「ヴィヴァルディのようなやり手が書いたオペラでも、リハーサル中にも修正が入っていて、どの楽譜で演奏するかが困難な問題となる。」
by franz310 | 2012-11-24 14:44 | 古典
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