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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その327

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その327_b0083728_19522080.jpg個人的経験:
ヴィヴァルディのオペラ
「オルランド・フリオーソ」を
基準とするならば、
ヘンデルが書いた、
魔女が出て来ないオペラ、
「オルランド」などは、
変わり種に思えてしまう。

さらに、ヘンデルの場合、
オルランド物語の
重要な脇役であるべき、
魔女アルチーナは、
オルランドの物語とは別に、
単独でオペラ「アルチーナ」
として作曲されている。


前回、ヘンデルのオペラ「オルランド」(1733)は、
ダカーポ・アリアといった伝統的な手法から離れて、
実験的な試みを盛り込みすぎて、
失敗したというような話を読んだばかり。

が、ヘンデルのオペラ「アルチーナ」(1735)の方は、
ダカーポ・アリアてんこ盛りみたいな解説を読んで、
のけ反りそうになってしまった。

「オルランド」より後の作品なのに、
退化しているようなイメージを持ってしまうではないか。

Robert Carsenといった人の書いた、
このオペラの解説を読むと、
こんな風に書かれていて、
いっそう混乱するのである。

「ディレクター的見地からすれば、
その生き生きとした心理的発展性ゆえに、
ヘンデルのオペラは、常にやりがいのあるものだ。
アリアの連続、アンサンブルの欠如といった、
構成から登場人物がどうなって行くかに焦点を当て、
効果を出すことが出来る。
A部に続き、短いB部が来て、再度A部が来る、
ダカーポ・アリアが、登場人物の心理を探索するのに、
高度に効果的で劇的な音楽形式かもしれないのは、
驚くべきことである。」

こんな風に、一本調子と思われたダカーポ・アリアが、
実は、全然、無味乾燥なものではない、
むしろ、「高度にドラマティック」などと書かれている。
そんな論調で始まっている。

「ヘンデルの『アルチーナ』には、25曲以上の、
ダカーポ・アリアがあるが、
ほとんどがダカーポ・アリアのオペラを聴くと、
登場人物を描くのにそれだけ時間をかけるという、
簡単な理由から、しばしば、理解がはかどる。
事実、『アルチーナ』の多くのアリアは、
5分以上を要し、それらの中でも、
『ああ、わが心』では、12分以上の時間を要する。
プッチーニの『ラ・ボエーム』2幕の最後ですら、
たかだか16分であることを思い出しても良いだろう。」

「オルランド」の解説者が、
ヘンデルは、そういった慣習的なものに反抗して偉かった、
みたいな語調だったのとは大違いである。

「いかなるヘンデル作品においても、
指揮者も歌手も音楽の中や、
その回りを飾る装飾の見せかけに騙されず、
感情のランドスケープを探索しなければならない。
行動を進めるレチタティーボに、
その行動に対する感情の反応を展開するアリアが続く
という連続パターンは、コンスタントに、
持ちつ持たれつで進化していく。
『アルチーナ』においては、
ほとんどのヘンデルのオペラ同様、
愛が基本要素であって、
それが登場人物と絡み合っている。
(オロンテは、アルチーナが好きな
リッカルド(ブラダマンテ)を愛する
モルガーナを慕っている。)
アクションがほとんどなく、
最初は戸惑うのだが、
登場人物の感情の要求を理解するに連れ、
どんどん、豊かに、満ち足りたものとなる。」

こんな感じで、ダカーポ・アリアの連続としての、
ヘンデルのオペラ「アルチーナ」を見ていこう。

ARTHAUSのDVDで、
表紙の色遣いがおどろおどろしく、
いかにも怪しい雰囲気たっぷりの写真が採用されているが、
この写真で顔を背けていては、中はとても
見ちゃおれんという代物。

ヨッシ・ヴィーラーと、セルジョ・モラビートという人が、
ステージ・ディレクターとして名を連ねている。
指揮はアラン・ハッカーで、
シュトゥットガルト州立管弦楽団の演奏。
1999年の公演記録である。

このDVD、解説部に署名がないが、
表紙裏に、先に、ステージ・ディレクターとして紹介した、
Sergio Morabitoという人が、あらすじを書いたとある。
舞台を受け持った人が書いているのだから、
ぴったりこの上演に沿った記述なのであろう。

かなり、野心的な演出ゆえ、原作と一致しているか気になるが、
これに沿ってDVDも見て、聴いていくことにする。

そもそも、3幕のオペラのはずが、解説では、
Part1、Part2の二部構成として書かれている。

Part1.
序曲と第1幕:
Track1~3.
序曲からして、この豊饒な音楽は魅力的だ。
三部からなるもので、小さな交響曲。
録音もすっきりとして素晴らしい。

アラン・ハッカーという指揮者は、
もじゃもじゃ頭に眼鏡のシューベルト風。
指揮姿も、ちょこちょことして、
神経を通わせている感じが、
これまたシューベルトを想起させる。

序曲の途中から、黒ずくめの、
スーツ姿の怪しげな二人組が、
不気味に荒れ果てた部屋の中に入って来る。

電灯や蛍光灯などが大写しにされるように、
現代のボロい家の中に入って来た感じ。

Track4、5.
「見知らぬ二人は道に迷い、
二人のうち若い方に興味を持ったモルガーナが、
彼女の姉、アルチーナの宮廷近くに上陸したのだと説明する。」

道に迷ったのではなく、難破した模様。
日本語字幕付きなので助かる。

これは戦士さん、とか呼びかけているが、
先に書いたように、ビジネスマン風である。
一方は明らかに女性であるが、
二人して黒縁眼鏡もかけている。

モルガーナも、薄っぺらなワンピースを着て、
場末のパブにでも、いそうな出で立ちである。
いや、買い物中に主婦だろうか。

いきなり、じゃれ合いが始まって、
笑顔も話し方も惹き付けるわ、
と、モルガーナが歌い出す。

Track6.
「何人かが集まって来て、
二人の来訪者が、この『地上の楽園』を訪れた事を歓迎し、
二人は、メリッソとリッカルドだと自己紹介する。
アルチーナは丁重にもてなし、
恋人のルッジェーロに、
お互いの愛の深さを告げるように求める。」

何人かが増えて、
「ここは快楽の国」という合唱が歌われる中、
アルチーナとルッジェーロが抱き合いながら現れる。

Track7.
このあたり、完全にラブシーンで、
舞台が気になって、音楽が良く分からない。
この恋人たちは、ねっとりと接吻しながら、
歌を歌っているのである。
ものすごい演出である。

アルチーナ役のキャサリン・ネーグルスタッドは、
1965年、アメリカ西海岸生まれのソプラノで、
DVDの表紙写真では、狂乱の風体だが、
ここでは、すらりとした美人である。

ルッジェーロは、
アリス・コーテという女性歌手が演じているが、
おもちゃにされるイケメン風を演じきって素晴らしい。

Track8.
「どんなに私が愛したか教えてあげなさい」
という、陶酔的なアリアを、
脱げたハイヒールを持ってアルチーナが歌う。

ルッジェーロは浮気者の本領発揮で、
誰にでもすりよりながら、その歌を聴いている。

やがて、見ちゃおれん、と言いたくなる、
寝転びながらの愛欲愛撫歌唱に移行するが、
この無理な体勢でも、ネーゲルスタッドは、
澄んだ声で、愛の喜びに満ちたアリアを歌い続けている。

Track9.
アルチーナが行ってしまうと、
レチタティーボが始まる。
「まだ年端もいかぬオベルトが
メリッソとリッカルドに、
彼の父親の行方を知らないか
という希望を持って近づくが、
甲斐はない。」

Track10.
オベルトのアリアである。
さっきどやどやと入って来た人たちの一人。

これまた、少年役だが、
クラウディア・マーンケという女性が演じている。
この人の歌唱も、破綻なくしっかりしたもので、
ヘンデルのオペラの豊饒感にマッチしている。

背景では、様々な愛欲模様が繰り広げられている。

Track11.
「二人がルッジェーロとだけになるや、
彼等は元戦友だと気づく。
リッカルドはすぐに、双子の妹のブラダマンテの
名誉を守ろうとするが、ルッジェーロは、
今や、アルチーナの虜である。
彼はかつて、リッカルドの妹と婚約していたのだが。
ルッジェーロにとって、過去との決別は、変更できないものだった。」

ルッジェーロは、ブラダマンテが変装しているのに、
リッカルドに似ているな、などと言っている。

Track12.
「モルガーナといちゃついたことによって、
リッカルドは、彼女のフィアンセである
オロンテの嫉妬をかき立てる。」

ということで、さっきのどやどやの一人は、
このオロンテだったわけである。

「彼は、競争者と決闘しようとするが、
モルガーナは、彼等の間に入り、
オロンテとは別れたいという自身の意志をはっきりさせる。」

「あなたを守ります」とモルガーナが立ちふさがるが、
何とも、暴力的な恋人で、
オロンテは、いきなり彼女を殴る。

Track13.
またまたゴージャスな音楽が始まり、
ブラダマンテが、「それは嫉妬というもの」という、
アリアを歌い始める。
いかにも、ダカーポ・アリアで、
前半、冷静だったブラダマンテは、
後半はいきなり服を脱ぎ出す狂乱ぶり。
それを、メリッソが止めている。

その間、この暴力で解決したがる、
先の二人は乱闘している。

Track14.
どうやら、彼等は身分が違うようで、
モルガーナは、「身分をわきまえよ」とか、
「貞淑をわきまえるかは、欲望が決める」とか、
すごいフレーズで、オロンテを棄てようとしている。

Track15.
オロンテは、同じように嫉妬している
ルッジェーロを掴まえ、
いろいろと入れ知恵をしている。

「リッカルドの脅しを受け、これを最後にと対決しようと、
オロンテはルッジェーロに向かって、
アルチーナはすでにリッカルドと関係を持っていると告げ、
さらに、アルチーナの過去にも触れる。
彼は、棄てられた恋人のコレクションは、
彼女によって、野生の動物に変えられてしまうと言い、
同時にルッジェーロこそ、次の犠牲者であると暗示する。」

Track16.
音楽が活気付き、オロンテのアリア。
ロルフ・ロメイという歌手は、部屋中のものに、
八つ当たりしながら、情けない嫉妬のアリアを歌う。

ここでも、この恋の犠牲者は服を脱ぎだして、
長髪をかきむしり、パンツ姿で寝そべって赤面もの。

Track17.
何と、ブラダマンテ(リッカルド)は、男装のまま、
アルチーナと宮殿を散歩しながら、仲良くしている。
「リッカルドのあいまいな言動は、
オロンテのほのめかしを裏付けるように見える。
アルチーナはしかし、ルッジェーロの嫉妬の爆発に、
当惑させられる。」
アルチーナの服装は、ちら見せ系である。

Track18.
アルチーナのアリア。ガンバの簡素な伴奏。
「私は変わらないのに、あなたの目に変わって見えるなら、
愛さなくなっても、私を憎まないでおくれ」とへんてこなもの。

ががーっと音楽が盛り上がり、
このへんてこな恋人たちの感情を高ぶらせる。
ものすごい効果だ。

ブラダマンテは、自分の婚約者と、
アルチーナがよりを戻そうとしている様子を、
一部始終見ている。

Track19.
ルッジェーロは、ブラダマンテをライヴァル扱いし、
怒ったブラダマンテは、下記のような行動を取る。

「この時点で、リッカルドは、ルッジェーロに、
実は、彼は、双子の妹のブラダマンテであって、
離ればなれになったルッジェーロを探し、
連れ戻すために男に変装していると言って、
自分の正体を明かそうと考える。
メリッソは、そんなに早まった
正体明かしをしないよう忠告する。」

Track20.
ルッジェーロのアリア。鮮やかな序奏。
ブラダマンテが男装しているのに、分からずに、
アルチーナが、裏切ったと騒ぎ立てる。
がらくたの中から銃を取りだし、
ブラダマンテに突きつける始末。
しかも、ネクタイとベルトを外して、
ぐるぐる巻きにしてしまう。

「ルッジェーロは、もはやアルチーナは、
信用できないと知って絶望し、
彼がライヴァルだと考えたリッカルドに向かって、
攻撃を加える。」

Track21.
メリッソが、ブラダマンテの軽々しい言動を叱る。
すると、モルガーナが、恋人よ、と助けてくれる様子。
まことにややこしい。

ここで、彼等の関係をまとめると、下記のような感じ。
     (ラブラブ)
アルチーナ ←→ ルッジェーロ
↑(姉妹)      ↑(婚約者)
↓          ↓
モルガーナ → ブラダマンテ扮するリッカルド
   (何となくラブラブ)

Track22.
モルガーナがブラダマンテ扮するリッカルドを思って、
初々しい思いを告げるアリアで、まことに華やかな音楽。

以上で第1幕は終わりである。

第2幕:
Track23.
アルチーナが、振り向いてくれないので、
悶々と悩むルッジェーロのアリア。

「彼は、アルチーナの元に飛び込み、
リッカルドを野獣に変えて欲しいと頼む。
モルガーナしか、今や、ブラダマンテを救うことは出来ない。
ブラダマンテは仕方なく、表向き、
男の愛情表現で、男性の人格を演ずる。」
というシーンはどこにあったのか。

Track24.
メリッソとルッジェーロの言い争いの部分。
「ブラダマンテの仲間のメリッソは、
自分の目的を遂行するのに忙しい。
彼抜きでは、差し迫った戦争で、民を守れないゆえに、
ルッジェーロに対し、戦士に戻って欲しいと望んでいる。
それゆえ、彼は、弟子として叱責できるように、
ルッジェーロの師匠であるアトランテを装う。」

Track25.
ルッジェーロのアリアの中で、
下記のような出来事が起こる。
「ルッジェーロは愛を棄てることが出来ず、
メリッソは、彼の指に、
内部の強さを断ち切る特別な力のある指輪をはめる。」

Track26.
ここで、ルッジェーロは、ブラダマンテのところに戻る、
とか言い出している。
「それによって、メリッソは、
ブラダマンテが気にしている、
ルッジェーロの不安定な良心に、
揺さぶりをかけることが出来るようになる。
彼は、こうしたモラル上のプレッシャーが、
再度、彼を戦士に戻すであろうと期待している。」

Track27.
このような状況下で、メリッソがバスで歌うアリア。
ミカエル・エベッケという歌手が、
マフィアのボスのような出で立ちで歌い。
ルッジェーロはがらくたの中から武器を探し出す。
ヘンデルの音楽は厳かに居丈高なもの。

Track28.
ブラダマンテが来て、正体を明かすと、
ルッジェーロは、アルチーナの罠だと感じ、
ピストルを撃つ。

「メリッソは、ブラダマンテが、
アルチーナの王国に来ていることも、
どんな危険にさらされているかも言わなかったので、
ブラダマンテがルッジェーロの目の前に現れても、
もはや、どう考えるべきかも分からない。
彼は、彼女を、彼の愛を試すために
変装したアルチーナだと信じる。」

Track29.
ブラダマンテのアリア。
混乱の極致の中で、彼の心は何とかならんものか、
みたいな内容である。
ルッジェーロがピストルを向ける中、
「いくらでも奪って行くがいい」と、
ブラダマンテはシャツをはだけて見せる。
これも、そうした中間部を持って、
冒頭のいらだたしい感じの音楽が戻って来る。

ヘレーネ・シュナイダーマンという歌手だが、
渾身の熱演である。アメリカ出身の歌手らしいが、
ずっとドイツで活躍している人だという。

Track30、31.
ルッジェーロは混乱し、
すぐに、悩ましい心を歌い上げるアリアが続く。
「ルッジェーロは一人、自分が、
自身のアイデンティティも目的も失っていることに気づく。」
情感豊かなヘンデルらしい音楽。

ブラダマンテの幻影が、背景を流れて行く様子が切ない。
これは名場面かもしれない。

以上が、あらすじではPart1となっている。

Part2.
Track32.
アルチーナの恰好は、ますます、
色情狂的になっている。
裸足で、食べ物の皿を、倒れているブラダマンテに押しやる。

「ルッジェーロとの関係を修復するため、
アルチーナは最後に、
リッカルドを野獣に変えることに同意する。
しかし、今になって、ルッジェーロは、
こうした事を進んですることが、
十分、彼女の不貞の恐れを払いのけたと説明する。」
モルガーナが、リッカルドへの思いを白状し、
姉に、この人を助けて欲しいと言う。
アルチーナはリッカルド(実はブラダマンテ)に、
これ以上、何もしないと決める。」

Track33.
美しいヴァイオリンの助奏付きの、
モルガーナのアリア。
技巧性や情感の豊かさから、
これは、ほとんどヴィヴァルディ風ですらある。
アルチーナはブラダマンテにちょっかいを出している。

Track34.
ルッジェーロが浮かない顔をしているので、
アルチーナは、悲しげに話しかける。
「メリッソの指示に続いて、ルッジェーロは、
アルチーナに狩りに行く許可を求める。」

Track35.
今度はリコーダ助奏付きのアリア。
ルッジェーロが、「崇拝する女性には貞節を誓う」と言いつつ、
「(しかし、それはあなたにではない)」と付け加える、
恐ろしい内容を歌うが、それにふさわしく、
不気味に黒々とした音楽である。
恐るべしヘンデル。愛の不条理を、ここまでえぐり出して。

素晴らしいリュートの弾奏を経て、
寝そべっているアルチーナにルッジェーロは跪いて抱き起こす。
ブラダマンテは、床に転がっていたホルンを持って、
一緒に狩りに行くということか。

「彼の情熱的な愛の宣言は、彼女の不安を十分に鎮めるが、
実際は、彼の本当の目的はブラダマンテであった。」

Track36、37.
オベルトが反抗的な少年として登場。
「アルチーナは、オベルトから父親について尋ねられて戸惑う。
彼女は、彼がすぐに父親に再会できると約束して、
その場しのぎをする。」
そして、アリア。アルチーナは、
彼をなだめようといろいろやっている。

Track38.
「オロンテがやって来て、
ルッジェーロが出て行く準備をしていると言うと、
アルチーナはたちまち、
恋人の行動の背後にある嘘を見抜き、
裏切りに直面して崩れ落ちるに至る。」

オベルト少年を投げ倒し、狂乱して行く。
音楽は恐ろしい事が始まる前触れのように、
緊張感を高めて行く。

Track39.
ネックレスを引きちぎり、
はだけた姿も痛々しいタイトル・ロールが、
体を張ったクライマックスである。

「お前は見捨てて行くのか」と、
感情を押し殺したようなアリアが、
情念の高ぶりを否応なく感じさせる。
これは10分にも及ぶ、長丁場で見せ場である。
これが、最初に書いた、大アリアの代名詞、
「ああ、わが心」である。
「私は女王ではないか」という激昂の中間部を経て、
ダカーポ・アリアの回帰部として、
前半の感情、壮絶な嘆きがより深まって行く。

Track40、41.
もちろん、ブラダマンテも行ってしまったので、
オロンテは、それもモルガーナに伝える。

「一方で、リッカルドを信頼する
モルガーナは揺るがない」と解説にあるが、
何と、ブラダマンテは正体を明かすようなアリアを歌う。

Track42.
「彼がルッジェーロと愛し合う場面を見て、
遂に、彼女も理解する。」
このようにあるように、下着姿で二人はいちゃつく。
「勇気ある乙女よ」などと、
ルッジェーロは調子が良い。

「裏切り者」と、モルガーナが絶叫するが、
おかまいなしに、音楽は優雅に流れて行く。

Track43.
ルッジェーロの哀歌調のアリア。
「緑の牧場よ」と、ヘンデルの「オルランド」同様、
別れのアリアは、美しい自然描写がなされる。
「ルッジェーロとブラダマンテは、
騙された犠牲者たちに別れを告げる。」

ブラダマンテもピンクの衣装で、
すっかり女性の姿となって、二人して消えて行く。
モルガーナの打ちしおれた様子が耐え難い。

Track44.
「残酷なルッジェーロ」と絶叫するアルチーナ。
激しいリズムに乗っての中間部。
ほとんどシュプレヒシュティンメだ。

Track45.
序奏からして、すごく繊細な感じ。
傷つきやすくなったアルチーナの
精神状態を見事に表現している。
「欺かれたアルチーナ、残されたものは何だ」と言って、
動き出す音楽の焦燥感。腰も砕けて立てない様子。
妹のモルガーナに抱きついて歌うアリア。
「アルチーナは、絶望のあまり、
愛の力や魔法を作り出すことに失敗する。」
とあるように、「杖に魔法が宿らぬ」と言っている。

ものすごく切実な物語になって来た。
主人公なのに、魔女なのに、
絶望のあまり、魔法が使えないなんて、
いったい、どういう事なのであろうか。
それだけ、彼女の愛の深さを感じてしまう仕掛けになっている。
素晴らしい絶唱が聴ける。

まだまだ、音楽は続くが、
字数の限界が来てしまった。
続きは次回にする。

得られた事:「ダカーポ・アリアを否定した、実験的オペラ『オルランド』の2年後、ヘンデルは、さらにダカーポ・アリアを深化させ、この形式を駆使しつくしたオペラ『アルチーナ』を書いた。これらは、同じ題材から着想されたものである。」
by franz310 | 2012-05-05 19:54 | 古典
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