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クラシック音楽への愛と悲しみの日々(一枚のLP、CDから「書き尽くす」がコンセプト)
by franz310
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名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その324

名曲・名盤との邂逅:1.シューベルトの五重奏曲「ます」その324_b0083728_16514389.jpg個人的経験:
ヴィヴァルディの他にも、
オルランドの物語に、
音楽をつけて、
オペラにした人は多い。
特に、ほぼ同時代に書かれた、
大家ヘンデルの作品は、
それなりに有名なものらしい。
今回のDVDも、
大家クリスティが
指揮をしている。

が、表紙写真を見る限り、
ヤバい感じぷんぷんで、
見たいような、見たくないような、
二律背反の感情に襲われる。

黒板の前で白衣を着た男?が、
荷物の上に乗っている。
虚空を睨む表情が危険な感じでしょ。

が、序曲からして、クリスティの格調高い、
鋭敏かつ潤いにも欠けない音楽が始まる。

暗い舞台を向こうに、上品な白髪頭が、
マッチ棒のように浮かび上がる演奏風景も、
流麗で、心ときめくものを感じさせる。

演奏はチューリッヒ・オペラの、
「La Scintilla」オーケストラとある。
へんてこな演出をしたのは、
ドイツの有名な映画監督とは別人の、
イェンス=ダニエル・ヘルツォークという人だ。

さて、何よりも雄弁なのはヘンデルの音楽かもしれない。
荘重な部分の深み、軽快な部分の浮き立つ感じも、
この作曲家の器楽曲を
愛好してきた人々を満足させるものだ。

とはいえ、現代の表現で、昔、
サーストン・ダートなどの演奏の、
分厚い弦楽の海に浸った人は、
時代を感じるであろう。

しかし、ほとんど同じ時代の産物でありながら、
ヘンデルからは「水上の音楽」の響きが感じられ、
ヴィヴァルディからは、「四季」の余韻が感じられ、
同じバロック・オペラと言えども、
聴かれた環境や作曲家の個性は明瞭である。

このDVDは、ARTHAUSのもので、
2007年にチューリッヒのオペラ・ハウスで
上演されたもののライブ記録のようである。
二枚組で、一枚目には第2幕までの108分、
二枚目には第3幕の47分が収められている。

ただし、解説を見ると、
TVレコーディングチーム、
とか書かれているので、
この舞台は、テレビで放送することを、
かなり想定したものだったのだろう。

DVDパッケージには、
イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、
スペイン語のサブタイトルしか、
ないような書かれ方がされている。
が、何故か、メニューを開けてみると、
ちゃんと「日本語」があって、
選択すれば日本語字幕が出る。

それにしても、この「オルランド」、
主人公こそ、ヴィヴァルディの
「オルランド・フリオーソ」同様、
騎士オルランドであるが、
他の登場人物がかなり圧縮されている。

アンジェリカとメドーロのカップルは、
かろうじて登場するが、後の二人が、
ゾロアストロとドリンダって何?
という感じである。
5人しか登場しないという。
これは、解説にも書いてあるが、
理解するのが容易になって助かる。

しかし、魔女アルチーナはどうした。
オルランドの失恋狂気で、この不死の怪物を、
なぎ倒すのが、オルランドの醍醐味かと思っていた。

これだけ見ると、このオペラは、
単に、オルランドが、すでに恋人同士である、
アンジェリカとメドーロのお邪魔虫である、
というだけの話になっているように見える。

ただし、さすがオルランド、
理不尽とも言える狂気の物語であることは、
このDVDの表紙に見られるとおりである。

ということで、気になるプロットを、
先に読んでしまおう。
以下、括弧でくくったところは、
書かれている内容。

第1幕:
いきなり、白衣のおっさんが、
黒板に図や字を書きながら、
人の心の不可解さを歌う。

「ゾロアストロは、偉大な兵士、
オルランドが恋わずらいになり、
かつての輝かしい英雄的な行いを取り戻すことに、
上の空になっていることを心配している。」

いきなり、何だこりゃ、という感じ。
そもそも、オルランドは、
シャルルマーニュの騎士だったのでは?
何故、拝火教の親分が出て来るのだ。

このようにあるので、
先のおっさんが、問題のゾロアストロであることが分かる。
バスのコンスタンティン・ヴォルフである。

何と、明かりが点くと、看護婦たちが多数いて、
将校姿の男(男装した女性)を迎え入れる。

「オルランドが入って来ると、
名声への愛と、アンジェリカへの愛に、
引き裂かれた男であるとわかる。」

軍服を着た将校が、オルランドであろう。
アルトのマリヤーナ・ミヤノヴィッチである。
迷う心を歌い上げている。

表紙写真を信じてはいけない。
もっと、カッコ良いイケメン将校になっている。

その間、医者はX線写真などを見ながら、
看護婦とやりとりしている。
おそらく、オルランドは病気なのである。

「ゾロアストロは、アンジェリカを
忘れるように説得するが、
オルランドは納得せず、
業績の栄光と私的な愛の調和の道を模索する。」

白衣のおっさんは、診察をしながら、
大きな功績に心をかき立てろ、と忠告している。
恋い焦がれて死ぬとオルランド。

このレチタティーボのやりとりの中、
リコーダーなどの優しい音色が響き、
愛は消えるが名声は永遠だと、
ゾロアストロの力強いアドバイスのアリアが舞い上がる。

介護人みたいなのが、オルランドを椅子に押しつけ、
かなり乱暴な扱いをする医者である。
謎の注射まで打たれてしまう。

オルランドは呆然となって、
みんなは出て行った後も、
なおも、めそめそとしているが、
所々で、勇気を出せ、と自らを戒めている。
水上の音楽のようなホルンが勇壮で、
ヘラクレスの例えの歌が始まる。
彼は勇敢で、愛もしたと歌い上げる。
ミヤノヴィッチは、背も高く、
すらりと均衡が取れて、
青年将校の役柄にぴったりである。
音楽は、同じモチーフを繰り返して、
平明かつ豊かである。

「ドリンダは沈んでいて、
彼女の心はメドーロとの出会いによって、
かき乱されている。
彼女はこれは真の愛かと自問する。」

ヤギやシカが休んでいて、鳥の声、そよ風と、
黒人の看護婦さんが、明るい声を上げるが、
後半、急に影が差し、全てが曇ってしまったと嘆く。

そもそも羊飼いか何かの役柄だが、
ここでは、洗濯物を干しているようである。

クリスティーナ・クラーク(ソプラノ)である。
彼女は気づいていないが、背後では、
彼女にちょっかいを出そうと、
パナマ帽の男がうろついている。

すると、オルランドが実際にちょっかいを出し、
妙な挨拶をして去ると、ドリンダは、
あれが名高いオルランド?などと言う。
それから、アリア。
切迫感があって、やや暗い色調のもの。
洗濯物を片付けながら悶々としている。

「アンジェリカの登場。
オルランドと前に約束していたのに、
彼女は怪我を介抱して治したメドーロを、
今は愛している。」

暗がりのベッドで、このような状況説明を行い、
ややこしい恋の煩いを、
ソプラノのマルティナ・ヤンコーヴァが、
黒電話をかけながら、なまめかしく歌っている。
伴奏のヴァイオリン独奏が美しい。
すると、メドーロ登場。例のパナマ帽である。
カタリーナ・ピーツは、メゾ・ソプラノで、
このカップルは、実際は女性同士が演じている。

いきなり、無邪気にいちゃつき合って、
舞台上で絡まり合って歌っている。

「メドーロはアンジェリカの愛を取り戻したのに、
彼は、ドリンダを愛していると言うことを、
止められずにいる。」

とあるように、アンジェリカが出て行くと、
ドリンダが来て、なかなか会えないと、
メドーロに愚痴を言う。
信頼したいけど、心が嘘という、
などと叫ぶ。

「ドリンダはメドーロを信じたいが、
彼女は直感的に彼の嘘をかんじる。」

メドーロは色男なので、ワインを注ぎながら、
それは嘘だ、と言い返せ、などとうまいことを言いながら、
看護婦の帽子もエプロンも取ってしまう。
そして、取り出した口紅を、ドリンダの唇に塗りつけ、
ダンスを踊りながら、荘重な歌を歌い、
彼女をベッドに押し倒してしまう。

ここでも、なまめかしいヴァイオリン独奏が美しい。

何故か、メドーロはそのまま行ってしまい、
ドリンダは、嘘でも心が躍ると言って、
嘘と分かっても信じたいという、
明るいアリアを歌い出す。

これで5人の登場人物が、みな、登場したが、
この状況、非常にややこしい。
が、図示すると単純である。

ゾロアストロ
  ↓(忠告)
オルランド →アンジェリカ←→メドーロ ←ドリンダ
     

場面が変わって、ゾロアストロが、
アンジェリカに忠告するシーンとなる。

「ゾロアストロはアンジェリカに、
オルランドの復讐を警告する。
彼女は彼に対して不実であった。」

彼女は、英雄には感謝する、と言っている。
そこに、アンジェリカの消息は、
などと言いながらオルランド登場。
いきなり酒をあおり出す。

「アンジェリカがオルランドと出会うと、
彼女は、用心深く自分を、
オルランドが愛と栄光の渦巻きの中、
救ったと思われる王女と比較する。」

どうやら、英雄はイザベラという王女を助けたらしく、
アンジェリカは、飛び込んで来るや、
そのことを取り上げて、
ドリンダには、恋人に見えたそうよ、
などと非難。何だか、企んでいる様子。
あなたが助けた王女をすぐに追いやって、
などと無理な注文をつける作戦に出たようだ。

信頼を得たいなら、忠誠心を見せて、
という憎たらしいアリア。
典雅で、しみじみとした情緒、
テオルボやガンバの響きの簡素さも美しいもの。

抱きついたり、指を絡めたりで歌っているが、
こんな作戦で、オルランドから逃げられるのだろうか。
無理を言えば、嫌われると考えたのかもしれない。

この間、メドーロが入って来ようとするが、
ゾロアストロに止められている。
アンジェリカは最後にキスをして去る。

オルランドは言うとおりにしよう、という。
そして、何とでも戦う、というアリアを歌う。
勇ましいもので、装飾音が強烈に散りばめてある。

「オルランドは、アンジェリカに、
戦争に行くと言って、
自分の愛を証明しようとする。」

とあるから、アンジェリカは、
オルランドをたきつけて、
どっかにやろうとしたようだ。

このアリア、強烈な拍手が起こる。
オルランドが去ると、
先ほどのやりとりを見ていたメドーロを、
アンジェリカに言い訳しなければならない。

そこで、ベッドが現れ、彼等はそこに飛び乗る。
大胆な演出である。

「その間、メドーロとアンジェリカは、
アンジェリカの母国に逃避して、
邪魔されないで、
愛に生きることの実現を希望する。」

が、その瞬間、ドリンダが入って来て目撃。

「ドリンダはカップルに知らずに出くわすが、
彼等は、いつか、彼女も真の愛を見つけるだろうと言う。」

つまり、彼等は開き直り、泣き崩れるドリンダに対し、
美しい羊飼い元気を出して、などと、
美しく調和する女声二重唱で慰める。
だめよ、などと、ドリンダも唱和するので三重唱となる。

「絶望するドリンダに別れを告げる時、
アンジェリカは、彼女に宝石をプレゼントする。」
と解説にある。

その間、メドーロは、慰めるふりをして、
ドリンダを愛撫し続け、最後はカップルだけが、
ベッドにしけ込むというトンデモ演出。

このメドーロ役のカタリーナ・ピーツ、
女性でありながら、ちょびひげをはやし、
見事に色男をいやらしく演じている。

ネットで調べると、いけいけ感のある、
なかなかいけてる女性である。

このあたり、一幕を終わらせるのにふさわしい、
たいへん、充実した味わい深い音楽を味わうことが出来る。

第2幕:
「ドリンダは、メランコリックなムードの中、
ナイチンゲールの歌を聴いている。」

先ほども、ドリンダは嘆いていたので、
前のシーンが続いているような感じであるが、
ここでは、暗い闇の中で、一人内省的に歌われる。
ナイチンゲールの声を、ちょんちょんちょんと、
ヴァイオリンの高音が暗示する、澄んだ感じの音楽。
彼女もまた、このナイチンゲールの声を聴いて、
悲しみを共有している。

クリスティーナ・クラークという、黒人の歌手。
声も美しく安定していて、主役並みの大活躍である。
ネットで見ると、ウェブサイト準備中と出た。

そんな彼女に、テーブルに座っていたオルランドが問いかける。
何故、イザベッラのことを言いふらすのか、
などと聴いている。
「オルランドは、彼女に、
アンジェリカに不実である、と言われた、
と訴える。」と解説にあるシーン。

ドリンダは、そんな事は言っていない、と言い、
私も、愛するメドーロがブレスレットをくれて、
去って行った、などと言う。

「ドリンダは、理解できないものが、
あるに違いないと言う。」


「しかし、オルランドは、
ドリンダがアンジェリカから貰った宝石を見つけると、
それは、かつて、自分が、
アンジェリカに上げたものであるようだと気づく。
その瞬間、彼は、自分が愛した女に裏切られたと気づく。」

オルランドが、テーブルに座って、
頭を抱えると、ドリンダは、またまた、
美しく憂いに満ちたアリアを歌う。
全く持って、ドリンダが主役である。

「ドリンダが、失恋の歌を歌い、彼女には、
回りにあるものが、すべてメドーロの顔に見える。」
とあるが、木のそよぎなどが、
メドロはここだ、と言ってるように聞こえる、
という、切ない切ない歌である。

このとき、オルランドは、真剣な表情で虚空を睨み、
時折、酒をあおっていて、かなり危険。
「オルランドは深い絶望に沈み、復讐を誓う。」

きりりとして精悍な、ミヤノヴィッチは、
この神経質な役柄にぴったりだ。

切迫感のある音楽がわき起こり、
一人になったオルランドは斧を取り出して、
道中を狙う、と物騒な歌を歌い上げる。
制止にに来た警官も追い払い、
剣のひと突きが私を癒すなど、と言い、
顔に墨を塗りたくったりする。大拍手。

ゾロアストロは、そんな様子を見ていて、
アンジェリカとメドーロを追いだそうとする。
「ゾロアストロは、アンジェリカとメドーロに、
すぐに出立するよう説得し、
道理と感情の自己修練の美徳を讃える。」
後半はアリアで、黒板の前、怪しげな講義をしながら、
数式がどんどん、「ORLANDO」とか
「AMOR」とかになっていく。

「恋人たちは、彼等の差し迫った出立を悲しみ、
メドーロは、二人の名前の入った刻印を刻み、
それを見た人が、彼等の愛を思い出せるようにした。」
と解説にあるが、見慣れた森と別れるのは辛い、
などとアンジェリカは歌っている。

舞台は病院の中みたいな設定だが、
ドリンダは羊飼いだし、
実際は、もっと牧歌的な情景なのであろう。
馬を用意して、などとアンジェリカは言うし、
草原よさようなら、井戸よさようならとメドーロも歌う。

上記、解説にある刻印は、月桂樹にするようだ。

メドーロが歌いながら、そう言っている。
彼は黒板の「ORLANDO」を消し、
「AMOR」のA(アンジェリカ)と、
M(メドーロ)だけにする。
この間、メドーロは、ずっと、しみじみとした、
住み慣れた土地への別れを歌っている。

「アンジェリカは、オルランドに対する忘恩を気にするが、
愛のより高い力のせいにする。」
恩知らずとは言わせない、というアリアを歌う。
病院関係者は、服を着せたり、鞄を持ってきたりして、
アンジェリカを去らせようとする。
ヤンコーヴァという歌手がアンジェリカ役であるが、
チェコの歌手だとある。いくぶん、線が細い感じか。

「オルランドはメドーロの刻印を見つけると、
苦悩から精神病の兆候を見せる。」
オルランドは、誰もいない黒板の前に来て、
これを刻んだ手はどこだ、とお怒りである。
「その間、悲しげに別れを告げているアンジェリカを、
彼は追うことを誓う。」
緑の森やせせらぎ、秘密の洞窟、さようなら、
と旅装束のアンジェリカが歌う。
この出で立ちは、20世紀初頭風という感じだろうか。
タイタニックな感じで、自然のかけらもない舞台であるが。

切々たる感情を歌う、
ヤンコーヴァの声を支えてリコーダの音が、
儚い響きを浮かび上がらせる。

18世紀の英国で演奏されたというこのオペラ、
そうした自然回帰への憧憬があったのだろうか。
はらはらと花吹雪が舞う中、
病院のみんなが別れを告げに来る。

歌が終わると、何と、白衣の中の一人は、
顔に墨を入れたオルランドになっている。
恐ろしい演出である。斧を持っている。
これは怖い。

「オルランドはアンジェリカを見つけ、
狂乱の最中、アンジェリカを掴まえる、
神秘の領域にいると信じている。」

斧を振り回して、邪悪な悪魔め、
惨めな私、私は幽霊だ、影だ、と
黄泉への船だとアンジェリカのトランクに乗る。
これが、表紙写真に使われたシーンだ。

これで、表紙シーンのオルランドが、
何故、白衣を着て、顔がへんてこかが分かった。
ここでは、顔に墨が塗ってあるので、
狂気が強調されているのである。

「狂気の中、彼は、その涙が彼の心を癒す、
プロセルピナの姿を見る。」
ゾロアストロを見て、メドーロだ、
プロセルピナだと大騒ぎして、脱力し、
これまた、悲嘆にかきむしられたようなアリアとなる。
その間、アンジェリカは逃げてしまう。

すると、私の心はダイヤのように硬く、
怒りは柔らがない、という、
技巧的なアリア後半となる。

「しかし、再度、凶暴な狂気に陥ると、
ゾロアストロと副官たちの仲裁によってしか、
最悪の事態は避けられなくなる。」

ゾロアストロと部下に向かって斧を振り回すが、
力尽きて幕となる。

以上が、このDVDの1枚目である。

ここまで見てきたように、
ヴィヴァルディの「オルランド・フリオーソ」より、
ずっと整理さえた筋書きとなっている。

すべてを超越した仲裁者、ゾロアストロなどが居る点からも、
合理主義的な気配濃厚。
21世紀の先の見えない時代には、ヴィヴァルディの方が面白い。

DVDの2枚目は、次回、聴くとして、
今回の内容だけでも、ヴィヴァルディのものとは、
かなり内容の異なる「オルランド」であることが分かった。

基本の性格は、愛ゆえに狂気に陥る英雄ということで変わりない。
また、メドーロを愛しているアンジェリカを愛し、
アンジェリカは、その思いから逃げるために、
様々な手段を講じるという点が共通である。

ヴィヴァルディのアンジェリカは、
オルランドに、不老の薬を取りに行かせ、
ヘンデルのアンジェリカも、
難題を上げて、戦地に送り出している感じであろうか。

違うところの方が多い。
ここでは、オルランドの仲間の騎士は誰もおらず、
前述のように魔法の島の魔女もない。
この作品は、「魔法オペラ」と呼ぶには、
あまりに合理的な感じがするが、いかがであろうか。

音楽も、そうした行き方に従って、
おおむね堅実で美しく、
ヴィヴァルディのようなカプリシャスな感じは少ない。

台本では、ゾロアストロという、謎の男が現れ、
力があるのかないのか、ほとんど主役級の活躍を見せる。

得られた事:「ヘンデルの『オルランド』は、ヴィヴァルディのものとは異なり、魔女の出て来ない現実路線。」
by franz310 | 2012-04-15 16:52 | 古典
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